表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の上司が凄すぎて自称天才エンジニアの俺がポンコツに見える件  作者: 慧梓
第5章 東都の日常③

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/67

第59話:甥っ子は今日もクソゲーハントに勤しむ。…どこが面白いんだ。これ。

子どもの「これ面白そう」は、時として大人にはまったく理解できない方向へ飛んでいきます。


 今回は、そんな甥っ子の謎すぎる趣味の話です。

 なお叔父としては、毎回だいぶ複雑な気持ちで見ています。

 甥っ子が静かだった。


 嫌な予感しかしない。


 大人しくしている時の子どもは、だいたい二択だ。

 寝ているか、ろくでもないことを考えているかである。


 今回は後者だった。


「叔父さん」


 呼ばれて振り向くと、甥っ子がこちらにスマホを差し出してきた。

 正確には、差し出してきたのはスマホではなく、スマホの画面だ。


 そこには、いかにも怪しいアプリ広告が表示されていた。


 よくあるやつである。

 やたら簡単そうなパズル。

 やたら爽快そうなアクション。

 やたら成功しなさそうなプレイ動画。

 そして、やたらダウンロードさせたがるやつだ。


「これ入れて」


 言うと思った。


 なお、なぜ“入れて”なのかというと、端末が俺の古いiPhone XRだからである。

 顔認証が俺じゃないと通らない。


 だから甥っ子は、自力では入れられない。

 毎回こうして、いちいち俺のところへ申請しに来る。


 面倒ではある。


 だが、認証を外す気はない。


 何を課金されるかわかったものではないからだ。


 別に、甥っ子に悪意があるとは思っていない。

 思っていないが、悪意がないことと安全は別問題である。


 この運用を始めた理由も、ちゃんとある。

 詳細は省く。

 省くが、前例で懲りた。


 俺は二度と、高校生以下の子どもにSNSも課金も触らせない。


 好奇心は猫を殺す。

 君子危うきに近寄らず。

 この先、泣こうがわめこうが、このルールだけは絶対だ。


 恨むなら前例を恨んでほしい。


 第二次家庭内戦争は、もうこりごりなのである。


 ちなみに娘も娘で、娘用端末の指紋認証を外して自分で使えるようにしてほしいと言ってきているが、却下した。


 高校生まで却下だ。

 例外はない。


 家庭内において、一度崩したルールは二度とルールではなくなる。

 この手の防衛線は、情で開けた瞬間に終わる。


「叔父さん、はやく」


「急かすな。今見てる」


 俺は広告画面を見た。


 やはりというか、どう見ても怪しい。

 ゲーム内容より広告の演出に力を入れている感じがすごい。

 たぶん本編より広告の方が面白いタイプのやつである。


「これのどこが面白そうなんだ」


「なんか面白そう」


 最も信用ならない動機が来た。


「“なんか”で容量を使うな」


「でも見て。なんか変」


「変なのはもう見ればわかる」


 言いながら、俺は内心で少しだけ納得していた。


 甥っ子がこういうものを持ってくるのは、別に珍しいことではない。

 むしろ定期イベントに近い。


 いわゆるiPhoneのCMやアプリ広告に出てきそうな、妙に安っぽくて、妙に胡散臭くて、でもなぜか少しだけ気になる、あの手のゲーム。

 甥っ子はああいうものを見つけると、高確率で俺のところへ持ってくる。


 そして、大体がガチでクソゲーである。


 時間の無駄。

 容量の無駄。

 ついでに言うなら、プレイ後に残るのは「何だったんだ今の」という虚無だけだ。


 俺は毎回思っていた。


 どこに需要があるんだ、このスマホのクソゲは、と。


「入れるの?」


 甥っ子が期待の目で見てくる。


 その顔で見られると少し迷うが、俺は大人である。

 大人なので、迷った上で現実的な条件を出す。


「変な権限要求したら消すぞ」


「うん」


「広告多すぎても消す」


「うん」


「勝手に課金導線出たら即終了な」


「うん」


「飽きたら消す」


「うん」


 全部うんで通した。

 本当に聞いているのか怪しいが、聞いていない子どもほど返事だけはいい。


 俺はため息をつき、顔認証を通した。


 ダウンロードが始まる。


 その横で、甥っ子は妙に嬉しそうだった。


 数十分後。


「叔父さん」


「なんだ」


「これ、広告の方が面白い」


「だろうな」


 知っていた。


 知っていたし、むしろ予想より早くそこへ到達したなと思った。


 だが甥っ子は、それでもどこか満足そうだった。

 少し触って、少し笑って、少し首を傾げて、そしてもう次の画面を見ている。


 たぶん本人にとって大事なのは、完成度ではないのだろう。


 変な挙動。

 雑な作り。

 思っていたのと違う感じ。

 意味のわからなさそのもの。


 ああいう“何これ”が、彼にとっては面白いのだ。


 しばらくその様子を見ていて、俺はようやく理解した。


 なるほど。


 需要はある。


 ただし――


 「小学生にな。」

第59話でした。


 今回は、甥っ子のクソゲーハンター属性の話でした。

 大人から見ると「時間の無駄」「容量の無駄」「広告の方が本編より面白い」みたいなゲームでも、子どもには刺さることがあるんですよね。あれ、本当に不思議です。


 あと作中でも触れましたが、子どもの端末まわりの制限は、うちではかなり固めです。

 一度でも前例があると、もう「大丈夫だろう」は通用しないんですよね……。

 ルールはルール。泣こうがわめこうがそこは別、というのは、たぶん家庭を守る側の理屈なんだと思います。


 それにしても、甥っ子は次から次へとよくあんな怪しいゲームを見つけてくるものです。

 才能の使いどころが絶妙におかしい。


 ではまた次回。

 少しでも面白かったら、ブックマークや評価などで応援していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ