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俺の上司が凄すぎて自称天才エンジニアの俺がポンコツに見える件  作者: 慧梓
第5章 東都の日常③

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第57話:神様仏様叔父様らしい

子供というのはえてして調子のいい生き物なのです。

 普段、甥っ子と娘のRoblox時間は四時間までと決めている。


 理由は単純だ。

 放っておくと、あいつらは平気で世界の果てまで遊ぶ。

 時間の感覚など最初から存在しない。

 気づけば朝だった、みたいな勢いでゲームに溶ける生き物なので、制限は必要である。


 だから四時間。

 そこは日頃から割ときっちりやっていた。


 だが今日は少し事情が違った。


 部屋を掃除した。

 そのご褒美としてロバックスも買った。

 しかも購入制限をかけていた過去の俺まで突破して、給料日前の財布にダメージを受けながら、どうにか報酬を支給したのだ。


 そこまでしておいて、である。


 「はい、でもいつもの四時間なんで終わりです」


 は、さすがにちょっとかわいそうな気がした。


 せっかく課金したのに、全然遊べない。

 春休みでもある。

 今日くらいは、まあいいか。

 そういう気分になる程度には、俺も人の心を持っている。


 というわけで、俺は言った。


「今日は特別に、七時間までな」


 一瞬、空気が止まった。


「……え?」


 娘が固まる。


 甥っ子も、何を言われたのか理解が追いついていない顔をしている。


「今日だけ。特別」

「ほんとに!?」

「マジで!?」


 一気に部屋の温度が上がった。


「やったああああ!!」

「神!!」

「神様!!」

「仏様!!」

「叔父様!!」


 最後だけ急に雑になった。


 いや、雑というか、盛りすぎである。

 神と仏の並びに、叔父が同列で入ってくるのはだいぶ意味がわからない。

 宗教体系としてどうなっているのか聞きたいが、本人達は完全にテンションで叫んでいるだけなので、たぶん何も考えていない。


 というか、さっきまで「パパ最強!」とか言っていたくせに、もう称号が更新されている。

 評価基準が極めて現金である。


「神様仏様叔父様!」

「叔父様ありがとう!!」


 連呼されるたびに、じわじわ面白くなってきた。


 いや、気持ちはわかる。

 普段四時間のところを、今日だけ七時間。

 子供にとっての三時間追加は、たぶん大人の感覚よりずっと大きい。

 しかもロバックスもある。

 服も欲しい。

 アイテムも欲しい。

 やりたいことは山ほどある。

 そこへ時間まで追加されたら、そりゃ祭りにもなる。


 だが、である。


「お前ら、ほんと調子いいな……」


 思わず呟くと、二人は満面の笑みで即答した。


「うん!」

「だって今日は叔父様の日だから!」


 意味がわからない。

 いつ制定された。


 だがまあ、調子がいいのは事実だった。


 さっきまでロバックスの使い道でケンケンゴーゴーしていたのに、時間制限が緩和された瞬間、今度は二人揃ってこちらを崇め始める。

 利害が一致した時だけ団結する感じ、実に子供らしい。


 そして俺は、そんな二人を見ながら思った。


 親とか叔父とかいう立場は、たまに妙なバフがかかる。

 何かを買ってやる。

 制限を少し緩める。

 それだけで、急に英雄扱いされる。


 もちろん、その評価は永続しない。


 明日また時間制限を元に戻せば、たぶん普通に文句を言われる。

 何なら「昨日はよかったのに」とか言われる未来まで見える。

 神格化された叔父は、二十四時間も持たず失脚する可能性が高い。


 だが、今日だけは違う。


 今日は、部屋掃除のご褒美があり、ロバックスがあり、特別延長があった。

 その積み重ねの結果、俺はどうやら神様仏様叔父様になったらしい。


 ……まあ、悪い気はしない。


 多少調子がいいとしても、喜んでるのは本当だ。

 春休みの一日としては、たぶん十分に楽しい部類だろう。


 その後も二人は妙に丁寧な口調で、


「叔父様、これ見てください!」

「叔父様、この服かわいくないですか!」


 などと言ってきたが、三十分後には普通に


「ねえこれどうすればいいの!」

「ちょっとこっち来て!」


 に戻っていた。


 うん。

 知ってた。


 親とは、あるいは叔父とは、

 一瞬だけ神格化されたあと、すぐにいつもの便利な大人へ戻される生き物である。

でも、自分もそうだったので、何も言えませんね。

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