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俺の上司が凄すぎて自称天才エンジニアの俺がポンコツに見える件  作者: 慧梓
第5章 東都の日常③

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第52話:仕様変更は、突然に。

 事件は、朝一で起きた。


 いつものようにPCを立ち上げ、コーヒーを一口。

 さて、昨日の続きをやるか――と思ったその瞬間。


 画面が、違った。


「……あれ?」


 見慣れたはずの画面が、どこにもない。

 代わりに、見覚えのないUIが表示されている。


 嫌な予感がした。


 とりあえずメールを開く。


『仕様変更しました』


 ――一行だった。


「いや、雑すぎるだろ」


 思わず口に出た。


 その瞬間、隣からガタッと音がする。


「せ、先輩ぃ……!」


 ポンコツ後輩が、顔面蒼白でこちらを見ていた。


「どうしました……?」


「UI……全部変わってます……!」


「見ればわかる」


「昨日までの……消えました……」


「見ればわかる」


 俺は静かにため息をついた。


挿絵(By みてみん)


 3ヶ月かけて作った画面が、跡形もなく消えている。

 ログも残っていない。バックアップも――まあ、あるにはあるが。


 それでも。


 この変更は、聞いていない。


「……誰が決めた?」


「わ、わかりません……! 朝来たらこうなってて……!」


「なるほど」


 つまり、いつものやつだ。


 確認なし、事前共有なし、影響範囲不明。

 そして、現場丸投げ。


 完璧だ。


 俺はコーヒーを一口飲んだ。


 苦い。


 非常に苦い。


「先輩……どうします……?」


 ポンコツ後輩が、今にも泣きそうな顔で聞いてくる。


 どうするも何も。


 選択肢は、ない。


「……対応するしかないだろ」


「ですよねぇぇぇぇ!!」


 机に突っ伏す後輩。


 その横で、俺は静かにキーボードに手を置いた。


 まずは影響範囲の洗い出し。

 API仕様の差分確認。

 UI変更点の整理。


 やることは、山ほどある。


 ――その時だった。


「おはよー」


 軽い声が、背後から聞こえた。


 振り向くまでもない。


 赤いジャケット。短髪。

 そして、この空気を一切読まない声音。


 上司だ。


「仕様変わったから、よろしくね」


「……」


 俺は一瞬、固まった。


 ポンコツ後輩も、固まった。


「……確認なんですけど」


「なに?」


「この仕様変更、いつ決まったんですか」


「昨日の夜かなー?」


「共有は」


「してない」


「理由は」


「言うのめんどくさかった」


「……なるほど」


 納得はしていないが、理解はした。


 つまりこれは。


 上司案件だ。


「じゃ、お願いねー」


 それだけ言って、上司は去っていった。


 嵐のように。


 いや、嵐よりタチが悪い。


 被害が限定されないからだ。


 しばらく、沈黙が続いた。


「……先輩」


「なんだ」


「これ……終わりますか……?」


「終わらせるしかない」


「今日中に……?」


「無理だろ」


「ですよねぇぇぇ!!」


 再び机に沈む後輩。


 俺は画面を見つめた。


 変わり果てたUI。

 書き換えを要求されるコード。

 積み上げてきた3ヶ月分の努力。


 全部、なかったことにされた。


 ――だが。


「……まあ」


 小さく息を吐く。


 こういうのには、慣れている。


 むしろ、これが日常だ。


「やるか」


 俺は静かにキーボードを叩き始めた。


 その横で、後輩も観念したようにPCに向き直る。


 どうせやるなら、最短で。


 どうせ壊すなら、綺麗に。


 削るが、壊さない。


 ――それが、この職場のやり方だ。


「先輩……」


「なんだ」


「私、ちょっと思ったんですけど」


「言ってみろ」


「異世界転生した方が、楽じゃないですか?」


「それはそうだな」


 即答した。


「でもな」


「はい……」


「この世界でやるから、意味があるんだろ」


「……かっこいいこと言いますね」


「気のせいだ」


 ただの諦めだ。


 俺は画面から目を離さずに言った。


「……はい、対応しますね」


 それが、俺の仕事だからだ。


(小声)

「……あー、これまた徹夜だわ」


仕様変更絶対許せないッス。

なので歌も作りました。怒りに任せて。ええ。怒りに任せて。


https://www.tiktok.com/@keisimusic/video/7625113098810117397?is_from_webapp=1&sender_device=pc

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