第36話 予定表を見たと言い張る後輩の話
過去編も終わり、久しぶりの日常回です。ここから暫く日常回が続きます。
俺は自称天才エンジニアである。
理論は完璧。
ロジックは美しい。
想定外は想定済み。
――の、はずだった。
朝。
ポンコツ後輩が言った。
「今日の会議資料、作っておきます」
時刻は10時半。
会議は14時。
嫌な予感はしたが、
本人は妙に自信満々だった。
⸻
11時頃。
後輩はなぜか管制塔に移動した。
俺
「……なんで管制塔?」
皮肉屋SE
「会議資料を持ち込んだそうです」
俺
「持ち込んだ?」
皮肉屋SE
「はい。
ついでにアラート対応も始めました」
俺
「なんでだよ」
皮肉屋SE
「よく分からない理論だそうです」
俺
「クール女子は?」
皮肉屋SE
「困惑していました」
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12時〜13時、休憩。
そして13時。
俺
「資料できた?」
皮肉屋SE
「管制塔に置いてきたそうです」
俺
「……は?」
皮肉屋SE
「今から作り直すそうです」
時刻、13時10分。
会議開始まで、50分。
⸻
後輩はそこから
会議資料を再作成し始めた。
問題は一つ。
俺
「予定表確認した?」
皮肉屋SE
「確認したそうです」
俺
「なら大丈夫か」
皮肉屋SE
「ただ」
俺
「ただ?」
皮肉屋SE
「見方が分かってない感じがしますね」
⸻
14時。
会議開始。
資料を見た瞬間、
上司が静かに言った。
上司
「……これ、何?」
予定にないスケジュール。
終わった予定。
抜けている今後の予定。
つまり、
何も合っていない。
⸻
顧客が言った。
「これ……」
少し間があって、
「1年やってるんですよね?」
皮肉屋SEに向かって。
⸻
会議は、
ツッコミの宝庫だった。
小説の方がまだ優しい。
⸻
会議終了後。
皮肉屋SEが
静かに俺へ報告した。
皮肉屋SE
「予定表を確認したか確認したら
見ていると答えたようなので
見方が分かってない感じがしますね」
俺
「確認依頼は?」
皮肉屋SE
「ありません」
俺
「慣れてる人への声がけは」
皮肉屋SE
「ありません」
俺
「3時間かけて?」
皮肉屋SE
「3時間です」
⸻
俺
「ねぇ?」
皮肉屋SE
「はい」
俺
「なにその本当にあった怖い話」
皮肉屋SE
「終わったスケジュールをずっと載せて
今後の予定を追加せず
何も出来てないのに確認依頼も出さず
そのまま本番を迎えたので」
少し間を置いて言った。
皮肉屋SE
「恥をかかせてあげましたよ」
⸻
その日の夕方。
皮肉屋SEの端末に
顧客からメッセージが届いた。
顧客
「予定表の見方わからなければ
わかりませんって
素直に言えばいいのに…」
皮肉屋SEは返信した。
皮肉屋SE
「この子供おばさんから給料ピンハネして
全員に分けて欲しいですよー」
数秒後。
顧客から返事が来た。
顧客
「マジで何されてるんですかねぇ…」
⸻
そのログを聞いた俺は思った。
俺
「……顧客と愚痴で盛り上がってない?」
皮肉屋SE
「事実共有です」
俺
「言い方」
皮肉屋SE
「顧客も困惑していましたので」
⸻
俺は理解した。
“見た”と“理解した”の間には、深い谷がある。
そして、
“分からないと言えない人間は、
だいたいその谷に落ちる。”
本人は一生懸命にやっているつもりでも、周りの足を引っ張る人っていますよね。
悪気が無いだけに質の悪いやつ。




