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俺の上司が凄すぎて自称天才エンジニアの俺がポンコツに見える件  作者: 慧梓
第2章 Arjuna

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第29話「ライバル」

ライバルというのは


仲が悪い相手ではなく、


「自分を本気にさせる相手」


なのかもしれません。


自分一人でも頑張れるけど、


誰か強い相手がいると


人はもう一段上に行ける。


そういう関係って


ちょっと羨ましいですね。

これは


まだ


会社も


仕事も


関係ない頃の話。


ライブハウス。


照明。


熱気。


そして――


客席の空気が


少し違っていた。


今日は


最初からざわついている。


理由は単純。


出演者だ。


光と影の二重奏。


そして


鼓動のユニット。


同じ日に出る。


それだけで


客が沸く。


楽屋裏。


影の歌姫が言う。


「今日はすごいね」


光の歌姫は笑う。


「人、多い」


その時、


通路の向こうから


リズムの音がする。


スティック。


壁を軽く叩く音。


一定。


正確。


影の歌姫が小さく言う。


「もう始まってる」


光の歌姫が笑う。


「緊張してるのかな」


影の歌姫は首を振る。


「たぶん逆」


その頃。


別の楽屋。


長い黒髪。


白い衣装。


鼓動のリーダーが


静かに手首を回している。


後ろでメンバーが言う。


「今日、二重奏いるね」


リーダーは答える。


「知ってる」


別のメンバーが笑う。


「歌、強いよね」


リーダーは短く言う。


「うん」


一拍。


「だから負けたくない」


空気が少しだけ締まる。


ステージ。


先攻は


光と影の二重奏。


照明が落ちる。


静寂。


そして


歌が始まる。


光の声が


真っ直ぐに抜ける。


その後ろを


影の声が支える。


重なる。


広がる。


観客が息を飲む。


物語みたいな歌だった。


曲が終わる。


拍手。


歓声。


舞台袖。


鼓動のリーダーは


黙っていた。


メンバーが聞く。


「どう?」


リーダーは答える。


「強い」


でもその目は


少し笑っていた。


「面白い」


次。


鼓動のユニットが出る。


太鼓。


ドラム。


手拍子。


最初の一打で


空気が変わる。


重い。


速い。


音が前に来る。


さっきまで


歌で満たされていた空間が、


今度は


リズムで支配される。


観客の身体が


自然に動く。


光の歌姫が舞台袖で言う。


「すごい」


影の歌姫も小さく言う。


「うん」


ステージ中央。


長い黒髪のリーダーが


観客を見ている。


煽らない。


叫ばない。


でも


全部持っていく。


曲が終わる。


歓声。


拍手。


アンコールみたいな声まで出る。


舞台裏。


光の歌姫が笑う。


「負けたかも」


影の歌姫は言う。


「まだわからない」


その時。


向こうから


鼓動のリーダーが来る。


少し汗をかいている。


でも顔は静かだ。


光の歌姫が先に言った。


「すごかった」


リーダーは答える。


「そっちも」


影の歌姫が聞く。


「いつもあんな感じ?」


リーダーは少し考えて言う。


「今日はちょっと本気」


光の歌姫が笑う。


「いつもより?」


「うん」


「なんで?」


リーダーは三人の間に一拍置いて、


まっすぐ言った。


「だって」


少しだけ口元が上がる。


「ライバルがいたから」


影の歌姫が止まる。


光の歌姫も一瞬止まる。


それから


二人とも笑った。


影の歌姫が言う。


「そっちがそう思うなら」


光の歌姫が続ける。


「次は負けないよ」


リーダーはうなずく。


「うん」


短い返事。


でも


目だけは


全然負けていなかった。


その日から。


二つのユニットは


並べて語られるようになった。


歌の二重奏。


鼓動のリズム。


方向は違う。


でも


同じ時代を走る存在。


誰かが言った。


「あれはライバルだ」


たぶん


その通りだった。

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