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俺の上司が凄すぎて自称天才エンジニアの俺がポンコツに見える件  作者: 慧梓
第1章 東都の日常

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第26話「ママの歌」

家族のことって、


意外と知らないことが多いです。


毎日一緒にいても、


昔の話は


あまり聞かない。


でも


ふとした瞬間に


「この人こんな一面あったんだ」


と気付くことがあります。


それも


家族の面白いところかもしれません。

俺は自称天才エンジニアである。


理論は完璧。

ロジックは美しい。

想定外は想定済み。


――の、はずだった。


夜。


家。


仕事が終わり、


俺はリビングで休んでいる。


キッチンから


声が聞こえる。


ママだ。


歌っている。


小さく。


優しい声。


俺は思う。


この人、


歌うまいな。


料理しながら


普通に歌っている。


しかも


結構難しそうな曲。


俺は聞く。


「その曲なに?」


ママは言う。


「昔の歌」


それだけ。


俺は聞く。


「好きなの?」


ママは少し考える。


そして言う。


「うん」


「好き」


俺はソファに座る。


歌が続く。


サビ。


俺は止まる。


どこかで


聞いたことがある。


スマホを取る。


検索。


動画。


出てくる。


タイトル。


ジュラ・インパクト


俺は画面を見る。


ライブ映像。


光。


歓声。


二人の歌。


その声。


俺はキッチンを見る。


ママ。


料理している。


歌っている。


同じメロディ。


俺は言う。


「ママ」


ママは振り向く。


「なに?」


俺はスマホを見せる。


「この曲」


ママは画面を見る。


止まる。


ほんの一瞬。


それだけ。


そして笑う。


「懐かしいね」


俺は聞く。


「知ってるの?」


ママは言う。


「昔、よく聞いたから」


それだけ。


それ以上は言わない。


歌がまた始まる。


小さく。


優しく。


俺は思う。


この曲、


いい曲だな。


でも


コメント欄には


こう書いてある。


「この曲はもう聞けない」


俺はスマホを閉じた。


ママの歌だけが


部屋に残った。

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