第25話「上司のリズム」
俺は自称天才エンジニアである。
理論は完璧。
ロジックは美しい。
想定外は想定済み。
――の、はずだった。
午後。
新人が言う。
「先輩」
「仕事のコツってあります?」
俺は答える。
「ある」
新人がメモを構える。
「段取り」
新人が書く。
「段取り」
俺は続ける。
「優先順位」
新人が書く。
「優先順位」
新人が聞く。
「あと何ですか?」
俺は言う。
「リズム」
新人が止まる。
「リズム?」
その瞬間。
後ろから声。
「そう」
上司だった。
上司は言う。
「仕事はリズムよ」
新人が聞く。
「リズムですか?」
上司は言う。
「タスクには拍があるの」
「強拍と弱拍」
新人が止まる。
俺も止まる。
上司は続ける。
「重い作業」
「軽い作業」
「重い」
「軽い」
「重い」
「軽い」
新人が言う。
「音楽みたいですね」
上司は言った。
「そうよ」
「同じ」
新人が聞く。
「じゃあ」
「この仕事は?」
上司は画面を見る。
そして言う。
「四分」
新人が止まる。
俺も止まる。
新人が言う。
「え?」
上司は続ける。
「こっちは八分」
新人が言う。
「は?」
上司はさらに言う。
「これは休符」
俺は言った。
「それサボりでは」
上司は言う。
「違うわ」
「戦略」
新人が混乱している。
上司は最後に言った。
「いい?」
「仕事は」
少し間。
「テンポよ」
それだけ言って
席に戻った。
新人が言う。
「先輩」
俺は言う。
「なんだ」
新人が言う。
「この会社」
「難しくないですか」
俺は答えた。
「俺もそう思う」
仕事には
確かにリズムがあります。
忙しい人ほど
作業のテンポが良い。
逆に
ずっと全力でやると
疲れます。
なので
適度な休符も大事です。
※ただし休みすぎると
上司に怒られます。




