第83話:モテを構造分析してみた結果。そうだ。3人組のアイドルになろう!
「なぁ、逢沢」
「なんだい?その顔、またろくでもないこと考えてるでしょ?」
「またとはなんだ。そんな事無いぞ。なあ?東雲?」
「え、ろくでもない事考えてるのは紫苑だけっしょ?」
紫苑は机を軽く叩いた。
「お前ら失礼だな!?」
「普段の行い」
「積み重ねって大事だねぇ」
東雲がうんうん頷く。
こいつ、 基本的に味方しない。
「で、今日は何?」
逢沢が購買のカフェオレを飲みながら聞いてくる。
俺はゆっくり口を開いた。
「モテについて考えてた」
逢沢が嫌そうな顔をした。
「うわ始まった」
「お前そのテーマになると急にプレゼン始めるよね」
東雲まで引いている。
失礼な奴らだ。
だが俺は止まらない。
「まず前提として、俺達は顔が悪くない」
「まあそこは認める」
「東雲も黙ってればかなり強い」
「それ褒めてる?」
「褒めてない」
「辛辣」
俺は続けた。
「にも関わらずモテない」
「うん」
「これはつまり、個人単位ではなく構造の問題なんだよ」
逢沢が天を仰いだ。
「出たよ構造」
「紫苑の悪い癖きた」
「つまりだ」
俺は立ち上がった。
昼休みの教室。
何故か女子達がこっちを見ている。
まあいい。
「人類は“単体性能”ではなく、“演出”に弱い」
逢沢が嫌な予感しかしない顔になる。
東雲は既に笑っている。
「つまり俺達に足りないのは――」
俺は高らかに宣言した。
「ユニット力だ!!!」
沈黙。
数秒後。
逢沢が静かに言った。
「帰るか」
「待て待て待て待て」
「いや絶対ロクな話じゃない」
「聞けって!」
東雲がニヤニヤしながら身を乗り出す。
「で?具体的には?」
俺は言った。
「三人組アイドルになろう!」
教室の空気が止まった。
女子達がザワつく。
逢沢が真顔で聞く。
「男三人で?」
「そうだ」
「この進学校で?」
「そうだ」
「何を目指してるの?」
「モテ」
逢沢が顔を覆った。
東雲は腹抱えて笑っている。
「はっはっはっはっ!!! いや待って紫苑それ最高!!!」
「だろ!?」
「絶対怒られるじゃん!!!」
「文化祭でやれば合法だ!」
「合法ではあるけど合法なだけなんよ!!!」
紫苑
黙れ小僧!貴様に非モテが救えるか!
俺はモテたい!
(ドーン!)
東雲が机を叩いて爆笑した。
「はっはっはっはっ!!! 出た!!!急に劇場版始まった!!!」
逢沢は頭を抱えている。
「なんで毎回テンションが無駄に壮大なんだよ……」
だが俺は止まらない。
「考えてもみろ! 世のアイドルを!」
俺は教卓の前まで歩き、 何故か演説モードに入った。
「歌う!」
ビシッ。
「踊る!」
ビシッ。
「キャーって言われる!」
ビシィッ!
「つまりモテる!!!」
「理論が雑」
「結論だけ先に決めるタイプのプレゼンやめろ」
東雲はもう笑いすぎて机に突っ伏していた。
「いやでも待って? 実際、俺ら顔面偏差値だけなら結構高くね?」
「そこは否定しない」
逢沢が冷静に頷く。
「問題は中身」
「そこは演出で誤魔化す」
「誤魔化せる量超えてるんよ」
俺は腕を組んだ。
「いいか。人類は雰囲気に弱い」
「また始まった」
「照明! 音響! ステージ! 衣装!」
東雲が吹き出す。
「衣装まで考えてんの!?」
「当然だ」
「準備良すぎて怖い」
「既にノートに構成案書いてある」
逢沢が静かに聞いた。
「……いつから考えてた?」
「先週」
「長ぇよ」
俺は窓の外を見た。
春風が吹いている。
青春。
そう。
俺達にはまだ、 青春という最強カードが残されている。
「俺はな」
ゆっくり振り返る。
「モテずに高校生活終わるのは嫌なんだよ!!!」
ドン!!!
女子達がまたザワついた。
隣のクラスの奴まで見ている。
東雲が肩を震わせながら言う。
「はっはっはっ…… いやでもさぁ……」
ニヤッと笑う。
「文化祭で三人組アイドル、 普通に面白そうじゃね?」
逢沢が顔を覆った。
「終わった……」
「お前もやるんだよ」
「なんで?」
「顔が良いから」
「採用理由が軽い」
「あと声が良い」
「もっと軽かった」
「つべこべ言わずにやるんだよ!諦めたらそこで試合終了なんだよ!」
俺は机を叩いた。
ドン!!!
逢沢が盛大にため息を吐く。
「だから何の試合なんだよ……」
「モテだよ!!!」
「言い切ったよコイツ」
東雲はもう笑い始めている。
だが俺は止まらない。
「黙れ小僧!」
ビシィッ!!!
俺は逢沢を指差した。
「お前に非モテの不幸が癒せるのか!?」
教室が静まる。
女子がまたこっち見てる。
でももう止まれない。
「モテを侵した人間が!」
「何そのパワーワード」
「陽キャを逃れるために投げてよこした赤子が――」
俺は拳を握りしめた。
「太陽だ!!!」
東雲が吹き出した。
「出たよ紫苑の弟分!!!」
逢沢は頭を抱えている。
「いや待て待て待て。
なんでそこで太陽くん出てくんの」
だが俺は続ける。
「陽キャにもなれず!
非モテにもなりきれぬ!」
ドン!!!
「哀れで醜い!」
さらにドン!!!
「かわいい我が妹の彼氏だ!!!」
東雲、机に突っ伏して死亡。
「はっはっはっはっ!!!
最低!!!最低すぎる!!!」
逢沢も耐えきれず吹き出した。
「いやそこで弟分の太陽出してくんの最低なんよ!」
「うるさい!
太陽だって頑張ってるんだよ!」
「何を!?」
「人生を!!!」
「重いんだよ急に!!!」
教室後方から、
女子の笑い声が聞こえた。
誰かがボソッと呟く。
「……なんかあの三人、
ずっと漫才してない?」
違う。
これは。
青春だ。
男子高校生とは基本的にアホです。
でも当時の本人達は大真面目です。
ちなみに作者、実際に
「モテたい」
を原動力に、
・バンド活動
・衣装自作
・イベント主催
・BL営業(?)
までやってたので、
むしろ紫苑達の方がまだマイルドです。
若さって怖いですね。
なお当時は本当に、
「モテたい」が世界の中心でした。
でも振り返ると、
あの頃の無駄な熱量って、
今の創作にも繋がってる気がします。
たぶん青春って、
そういうものなんでしょう。




