幕間:予定とは作るものである。
仕事でもない。
頼まれたわけでもない。
なのに、家にいるだけで「使える人員」扱いされる時がある。
俺は朝から、実家のソファでだらけていた。
スマホを見て、麦茶を飲み、何も生産しない。
最高である。
その時だった。
叔母が奥から顔を出した。
「今日ちょっと店手伝ってくれない?」
俺は、麦茶を置いた。
「……は?」
「パートさん帰しちゃったから人足りなくてー」
俺、三秒沈黙。
脳内で、何かがカチリと鳴った。
(いや待て)
(なんで俺が補填要員なんだ?)
俺は冷静に整理を始めた。
・今日は平日
・本来回る前提の日
・母も兄も何も言ってない
・俺は休暇で帰省中
・しかも“人足りない”じゃなく“楽したい”寄りの匂いがする
そして決定打。
「私も年だからさぁ〜」
俺くん、悟った。
(あ、これ俺、“便利なおっさん”としてカウントされてる)
その瞬間だった。
俺は静かに立ち上がった。
「ちょっと出かけてきます」
叔母「え?」
俺「予定あるんで」
予定は無かった。
だが、“今この場から消える”という最重要予定が発生したのである。
──数十分後。
俺はホームセンターにいた。
忍者図鑑を読み。
牛乳パックで作るミニチュア家電に心を揺さぶられ。
USBミニシェーバーを買い。
100円ゲームで本気になっていた。
90%まで登ったガムボールは、無情にも落下した。
「くっそぉぉぉぉ!!」
一個だけ出てきたガムを握りしめながら、俺は叫ぶ。
その時、友人から返信が来た。
『今暇だけど?』
俺は空を見上げた。
勝った。
完全勝利である。
その頃、実家。
叔母が言った。
「しー君どこ行ったの?」
母は静かに麦茶を飲みながら答えた。
「知らない」
その声は、妙に優しかった。
楽をしたい人間の言葉ってすぐにわかるよね。舐めんな。と思います
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