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決戦の裏に陰謀あり

れな、鬼子、妖姫は城の階段を駆け上がり、部屋へ突入し、通路を通り抜け…と、城を迷いなく突き進んでいた。

もう悪鬼は現れない。やはり残るのは…。

「亜華魔姫…」

鬼子が、走りながら天井を見上げる。

最後に待ち受ける悪鬼、亜華魔姫。あの悪鬼で最後だ。

なるべく戦いはしたくない。だが…この流れではそうもいかないだろう。

せめて目的を聞きたい。

なぜ彼らは人間を襲うのか。彼らが悪意から生まれた存在である事は知っているが、ここまでして人間を苦しめたいのか。


悪鬼と真正面から話し合った事などない三人は、ただひたすら上手くいく事を願いながら突き進む。

後戻りはできない…。どんな目的があろうと、彼らには大人しくしてもらわなくてはならない。




先程、十腕鬼と戦った部屋に辿り着く。ここにも悪鬼は残っていなかった。

部屋には小さな扉がある。



扉を開くと…遥か上に続く階段があった。

階段の果てには光が見える。


…いよいよ、亜華魔姫との対面だろう。

鬼子の鎌を持つ手に、力がこもる。

「準備は良いわね…?」

頷くれなと妖姫。


…準備はとうにできていた。





階段を登っていき…光に近づく。









「…!」






光の先は、大きな部屋があった。

各所に勇ましい鬼神の銅像が置かれており、壁にある窓からはオレンジの光が漏れている。


…まるで夕暮れの空だった。

どうやらこの部屋だけ、少し空間が捻れるようだった。

長く続く木製の床の先には…。






「…」

玉座に腰掛ける、白い髪に赤い着物の女、亜華魔姫の姿があった。

…改めた見ると、言葉を失う程に美しい。赤い目は殺意を感じさせつつも、それ以上に気品に溢れている。

床につかんばかりの長い髪は、例えるならば透明のベール。

一本一本の髪の毛全てが、全く同じ長さだった。

赤い目が、一同を強く睨みつけている。


…れなたちは立ち止まったまま、沈黙する。

威圧感に、そして美貌に。




…このままではいけないと、れなが口を開く。

「…ど、どうも、めっちゃ戦ってきたけど、怪しい者ではなくてですね…」

「私は現在、悪鬼の頂点だ」

口を開いた亜華魔姫。

その声は、れなが想像している以上に冷たく、重かった。

鬼子は鎌を構えつつ、その手に冷や汗を流す。


「正直に言おう。私はお前達が思ってる程強くはない。先代首領の傲慢鬼、そしてかの勇者エメラルドを仕留めた悪鬼王、罰悪修羅(ばおしゅら)には到底及ばない」

ゆっくりと立ち上がる亜華魔姫。白い長髪が、蛇のように唸りそうだった。

懐から、小刀が取り出された。

「しかし、目的を成し遂げる心意気は、誰よりも持っているつもりだ」

れなが両手を振って必死にせっとくする。

「い、いや、話し合おうぜ!こっちはあんたらの目的をまだ聞いてないし!目的次第ではお前達を懲らしめるし…次第じゃないと…こ、懲らしめ…ないのかな」

こういった状況に弱いれなはよく分からない事を言いながら口ごもる。そんななか、鬼子が一言だけ大きな声で言った。

「何が目的なの」



「…我らの目的を話したところで、お前たちは到底理解できない。今はどちらかが死ぬまで、戦い続けるのみだ」

少しずつ歩み寄る亜華魔姫。

…ダメだ。話し合いでは聞いてくれない。結局、[このやり方]が一番なのだ。

「…鬼子!もう殴るしかないよ!」

「そのようね…!」

二人は同時に飛び出し、亜華魔姫へ向かう!

鬼子が鎌を振り下ろすが、亜華魔姫は小刀を振り上げ、小刀と鎌が接触した瞬間に、大太刀に変化させてみせる。

急激に衝撃を受けた鬼子は鎌を空中に放り投げてしまう。

そのまま大太刀が振り下ろされるが…そうはいかない。

鬼子は宙を舞う鎌に向かって飛翔し、空中で手に取り、振り下ろす。

鬼子と亜華魔姫の大太刀が同時に床へ振り下ろされる!

城が揺れ動いた。この時、振動の衝撃を食らったのは床に足をついてる亜華魔姫の方だった。

よろめいた亜華魔姫に、れなが拳を振り下ろす!!

「ぐっ!」

拳は顔面に直撃、しかし足に力を込めて体勢を保ち、れなに大太刀を振り上げる!

切り飛ばされるれな。吹っ飛ばされたれなに低空飛行しながら向かっていく亜華魔姫。

そうはさせないと、鬼子が同じく低空飛行、亜華魔姫に向かっていく!


しかし亜華魔姫の真の狙いは鬼子の追撃。

美しい顔に一瞬浮かべた笑みすらも、嫌らしさを感じさせない美しさだ。

後ろから迫ってきた鬼子に瞬時に振り返り、大太刀を刀に変形させ、素早く斬りつける!

額を切られる鬼子。バランスを崩して顎から床に叩き落とされる!

「鬼子!」

れなが鬼子に駆け寄ろうとするが、亜華魔姫は再び刀を大太刀に変化させ、隙だらけのれなに強烈な振り下ろしを叩き込む!

体に走った衝撃で、倒れるれな。


妖姫が苦戦する二人を見て何か役立つものはないかと周囲を探る。

周りには鬼神の像や柱が並ぶばかりだが…。



「…!」

妖姫は、ある事を思いついた。

そして、れなにむかってさけぶ。

「れな!あの像を殴るのじゃ!そして亜華魔姫に向かって倒せ!」

どんな策があるのか分からないが、れなは立ち上がり、鬼神像へ走っていく。

亜華魔姫が刀を振り回すが、れなは回避に専念し、かわし続ける。

そして、鬼神像の後ろに回り込み、飛び上がる!

「拳じゃないけど!これでもいいよね!」

鬼神像の背中に蹴りを叩き込む!亜華魔姫に向かって倒れていく鬼神像。

刀を大太刀に変え、鬼神像を切り裂こうとする亜華魔姫。

大太刀の頑強さなら、これくらいの像なら…。


「鬼子!素早く攻撃じゃ!!」

妖姫の指示と同時に、亜華魔姫の背後から鬼子が飛んでくる!

素早く攻撃という一言を聞いて亜華魔姫の大太刀が小刀に変化、振り返ると同時に鬼子に凄まじい速さの突きを仕掛ける!

間一髪、鬼子は鎌で受け止める。

そして、亜華魔姫の腹部に蹴りを打ち込んだ!

直撃は流石に応えたのか、後ずさる亜華魔姫。

そして、そんな彼女の背後には今まさに倒れようとしている鬼神像が!

「ぐ!小賢しい!」

鬼神像が自身を押し潰すその一瞬で大太刀に変化させようとするが…。


「おりゃ!」

亜華魔姫の視界の隅に、石つぶてを握ったれなが飛んできた!

そして、亜華魔姫目掛けて飛んでくる無数の石つぶて!

(!まずい!こんなに速いと小刀でなければ対応が…!しかし、鬼神像は大太刀でなければ!)

流石の亜華魔姫も、次々に襲いかかる投石に対処ができない!

そしてついに…。



鬼神像が亜華魔姫を押し潰す!

土砂が散り、鬼神像から先程れなが握っていた石つぶてが散る。鬼子の攻撃の間に鬼神像の一部を握力で引き千切り、投げていたのだ。







鬼神像の下敷きになる亜華魔姫。






…だが。


「中々頑張った方だな…」

やはり、簡単には倒せなかった。

鬼神像に突然閃光が走ったと思うと、鬼神像が真っ二つになってしまう。

そして…頭から血を流した亜華魔姫が。

れなと鬼子が横並びになり、妖姫を守る。


「私のあらゆる状況に対応できる刀の特性を逆手に取るとはな。鬼神像で私を潰す為に、小刀形態を保たせたという事か」


だが、もうこの戦法は通じないだろう。ダメージを与えたとはいえ相手は悪鬼の首領であり、刀の達人だ。楽に勝てる相手ではない。


…今頃外では仲間たちが亜華魔の将を抑え込んでいるはずだ。

背中を預けた皆の為、押し倒される訳にはいかない。

二人は構え、亜華魔姫の赤い目を睨む。

「来い!亜華魔姫!!」

勇ましい叫びと共に、攻撃を仕掛けようとした時!





亜華魔姫の口元が、ニヤリと歪んだ。




そして…。




「っ!?」




…二人の体に、紫の輪が出現し、縛りつけた。

亜華魔姫の術かと目の前を見たが…亜華魔姫は特に何もしていないようだ。

城の悪鬼は皆逃げたか、気絶しているはず。新手が来る事もない。




…という事は、ただ一人。











「…どうして!?」





振り返る。









…こちらに両手を向けた、妖姫が立っていた。




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