表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
44/49

二所での散火

「闇姫軍だーー!!!」

人間達の悲鳴が響く。


研究施設を駆け抜ける紫の鎧の兵士達。それを迎え撃つ銃を持つ人間たち。

勿論人間など相手ではない。人間のバリケードは次々に突破されていく。

兵士達の最前列には闇姫とダイガル。この二人がいる時点で、人間にほぼ勝ち目はない。

それでも人間たちは彼らに向かっていく。

闇姫は人間を片手で投げ飛ばしながらダイガルに聞く。

「やたら広いな。地獄石はどこにある」

「それがですね、厄介な事に魔力探知ができません。魔力の周波を抑える装置があるようですね」

魔力探知ができないのは厄介だ。手っ取り早く地獄石奪還を済ませようとしていたのだが、思った以上にかかりそうだ。


「こうなったら仕方ない」

闇姫は近くに転がっていた若い男性研究員の髪を掴み、無理やり立たせる。

右手から黒い爪を射出し、研究員の顎の下…喉に向けて構える。


そして、静かに耳元に囁く。

「人間は命は大事にすると聞く。だが私は悪魔だ。命の尊厳など知らん」

研究員は冷や汗を流しながら両手をあげる。恐怖のあまり声も出ないようだ。

彼の顎を爪で軽く持ち上げ、また囁く。

「利口な犬じゃねえか。その調子で一つ聞かせろ。地獄石はどこだ」

研究員は何も言わない。

何も言わず、ただひたすら呼吸を整えようと必死だ。


そして闇姫は…彼の足…爪先目掛けて爪を振り下ろした。

「ギャアアア!!」

悲鳴をあげる研究員。爪は、見事に爪先を突き刺していた。

「どうだ。吐く気になったか?それ以上黙ってれば今度は足が小便まみれになるぞ」

「わ、分かった!!分かったからやめくれえええ!!」

あまりの恐怖に[て]が抜ける研究員。震える指で、少し先の通路の曲がり角を指差した。

闇姫は研究員を投げ飛ばし、さっさとその方向に走っていく。

「さっさと済ませるぞ」






…そして、悪鬼との戦いに挑むれなと鬼子は、思わぬ手にかかっていた。


二人の体を縛り上げる紫の魔力の輪。それを形成したのは、あの妖姫だったのだ。

表情一つ変えずに手の平を向ける妖姫は、まるで別人のよう。

鬼子が叫ぶ。

「どうして!?何の真似!?う…裏切る気!?」

「そいつは裏切ってなどいない」

亜華魔姫に目を向ける二人。

亜華魔姫は、二人をまんまと罠にはめたようだった。

「そいつの正体は悪霊と限りなく近い悪鬼。私からお前達に送り込んだスパイなのだ」

亜華魔姫に続いて妖姫が話す。

「本当はわらわははじめから憑依能力を使える。じゃがあえて弱者のフリをしていた。憑依する事でお前達の戦闘力を見定める為に」

今まで力になっていたあの憑依能力は…全て鬼子達の戦闘力を調べる為のものだったのだ。

「強い敵と戦えばお前たちはわらわの憑依能力を頼るじゃろう。その為に、わらわは悪鬼達をあちこちに襲撃させていたのじゃ。そして先程、全員に取り憑いた事で全員分の戦闘力を全て記憶した」

黙りこむれなと鬼子。

あまりの裏切りに、頭が追いつかないのだ。そんな二人にお構いなしに、亜華魔姫は更に続けた。

「妖姫は元々わらわのパワーソースでな。憑依能力も本来はわらわに憑かせる為にあるのだ。そして多くの人物に取り憑けば取り憑く程、わらわに憑依した時の性能が高まる」

亜華魔姫が指を軽く振る。

妖姫が宙に浮き、動けないれなと鬼子の上を通り過ぎ、亜華魔姫の手をとる。れなと鬼子に振り返り、冷たい声で言った。

「亜の旋風と共に、華を散らす。魔よ、我と共にあれ。…我は亜華魔の憑将、妖姫!」

言い終えると同時に、妖姫は紫の光となって勢いよく飛翔、部屋を飛び交った後、亜華魔姫のもとへ飛び込む!





…亜華魔姫は紫のオーラを纏いながら、刀を取り出した。

元から高かった魔力が、更に上昇する。部屋一面が紫色に照らされていた。

紫の光に、なびく白い髪、真っ赤な着物は明るく照らされて更に血のような不気味な輝きを見せる。様々な色が、生き生きと輝く。

そして…彼女の背後には、妖姫が浮いていた。

紛れもない、今までれなたちにも行ってきた憑依だ。

最初は亜華魔姫の仲間のフリをしているのかと思っていた。

いや、思いたかった。

実際は本当に亜華魔姫からの使いだったのだ。弱いふりをして憑依能力を使わせ、邪魔になるであろう自分達の能力を知る為の…。


「妖姫…!どうして!?全部、嘘だったの!?」


…鬼子の言葉に、妖姫は、何も答えなかった。

亜華魔姫は容赦なく刀を振り上げた。

「わらわの戦法を見切ったつもりだろうが、先程のは序の口だ。…先手をくれてやる。来い」

れなと鬼子は、顔を見合わせる。

…お互い、困惑しきった顔だ。まだ、受け入れられないのだろう。

だが…今の亜華魔姫の鈍く光る刀を見れば分かる。

やるしかないと。


「…っ!」

同時に飛び出し、れなは拳を、鬼子は鎌を振りかぶる!

そして、亜華魔姫一人に同時に振り下ろすが…。



亜華魔姫は、両方を同時に受け止めた。

単に手で受けたのではない。

れなの拳を防いだ手には炎を、鬼子の鎌を防いだ手には氷を纏っている。

二人が離れようとしたその瞬間に、それぞれの手から魔力を放つ!

炎は勢いよく火柱となってれなを焼き、氷は瞬時に巨大な氷の刃となって鬼子を突き飛ばす!

床に叩きつけられた二人を見て、亜華魔姫は刀を小刀に変形させて凄まじい速度で切り裂きまくる!

「ぐぬうううう!!!」

苦痛に歪んだ声と共に、鬼子が突如炎に包まれる!

そして、炎の中から黄色い角を生やした鬼人鬼子が飛び出す!

「うりゃあああああ!!!」

炎の刀を構えながら飛んでいき、亜華魔姫に振るうが、その渾身の一撃ですら、亜華魔姫は大太刀を構えて防ぐ。

れなも全身の気力をできる限り高め、拳を構えて向かっていくが…。

「無駄じゃ!」

亜華魔姫の背後の妖姫が叫ぶと同時に、れなの頭上が光り、黄金の雷が落ちてきた!

雷はれなを直撃、同時に城の床にも僅かに当たり、炎を吹き上がらせる。

真下から襲い来る熱にれなは苦しそうな声をあげた。

そんな彼女に気を取られてしまう鬼子。

炎の刀を構える手から力が抜けた。

亜華魔姫は大太刀を突き出して炎の刀を弾き返し、即座に刀に変形、素早さを上げて鬼子の体を貫き、引き抜く!

「ぐは!!」

燃える血を吐く鬼子。

亜華魔姫は刀を振り上げ、強風を放つ!

風の勢いでれなと鬼子が吹っ飛び、れなを燃やしていた炎も消える。

壁に叩きつけられる二人。


「妖姫…!酷いよ!」

れなが、涙を流す。

そんな彼女に、亜華魔姫は尚も気品溢れる歩き方で迫ってくる。

刀は、床につくかつかないかくらいの距離を保ち続けている。

鬼子は立ち上がろうとするが…消耗の大きい鬼人形態で大きなダメージを負った今、立つ事さえやっとだ。

彼女も、妖姫に声をかけるしかない。

「何で…!私達を裏切ったのよ!」


亜華魔姫の動きが止まる。


…背後の妖姫の表情を察した。


そして妖姫は、ある事を言い出した。


「…亜華魔姫様、そろそろ話しても良いのではないか」

亜華魔姫は黙りこむ。


れなと鬼子を交互に見た。

二人はもはや虫の息。壁に背中をつけ、息を切らしながらこちらを睨むだけで、反撃が来ない。



「…ここまで冥土の土産が似合う状況もあるまい」

亜華魔姫は、その場で立ち止まったまま話しだした。





「良いだろう。話してやる。我々の目的を」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ