悪鬼世界の戦い
れなたちは、悪鬼達と戦いながらどこへ行けば良いのかも分からない城をひたすら突き進んでいた。
長い通路を走って悪鬼と戦い、曲がり角を曲がって悪鬼と戦い、階段を上って悪鬼と戦い、下って悪鬼と戦い…。
まさしく悪鬼の城。城内の防衛は凄まじいものだった。
通路の途中、天井から落ちてきた岩の壁を蹴り壊していくれなと粉砕男。後ろからは魚の頭を持つ悪鬼の軍団が襲いかかり、ラオンと鬼子が彼らを切り裂き、妖姫が悪鬼達の隙を探して指摘している。
「そこじゃ!あいつもワタワタしておる!」
彼女の指示に従うラオンと鬼子。悪鬼はどんどん床に倒れていく。
そして全ての悪鬼を倒すと同時に、れなが最後の壁を殴りあげ、破壊した。
…そして、壁の先から更に多くの悪鬼が突撃してくる。
今度は猿の頭や虎の頭、兎の頭に象の頭…様々な動物の悪鬼達だ。
ラオンはナイフに紫色のエネルギーを纏わせながらもこう言う。
「こいつら全員を相手してると消耗が激しい。上手い事無視するぞ!」
同時に勢いよく飛び出し、悪鬼の群れの中心に突撃、群れの途中で止まり、ナイフを振るって紫電を放出、悪鬼達を吹き飛ばして道を作る!その隙にれなたちも走っていき、残りの悪鬼を殴り飛ばしながら突き進んでいく。
リーダーと思われる猿の悪鬼が一同を指差す。
「我々悪鬼を舐めるなぁ!死ねぇ!!」
一同の頭上から、先程の壁が落ちようとしていた!
こんな罠、想定内だ。粉砕男が妖姫を抱き上げ、一同は同時に飛び出した!
れなが壁を蹴り壊し、猿の悪鬼目掛けて拳を突き出した!
ぶん殴られ、吹っ飛ばされるが、爪を射出して切りかかる猿悪鬼!
れなは腕を構えて受け止め、猿悪鬼の腹に膝蹴りを叩き込んだ!
息を吐き、うつ伏せに倒れる猿悪鬼。
倒れながらも、呟いた。
「…獄炎刀さえあれば…!」
それを聞き、れなはハッ、とした。
獄炎刀。かつてシンとの戦いで使った、伝説の刀。
今はれなとれみの研究所に保管しているが…。
獄炎刀に何か秘密があるのかと聞こうとした時には、猿悪鬼は既に気を失っていた。
振り替えると、粉砕男が腕を組んでいる。
「獄炎刀…。あの刀はシンとの戦いで力を失っている。こいつらに利用される事はないだろうが…何に使おうとしてるんだ?」
獄炎刀…。新たな要素に、一同は警戒するが…。
「考えても仕方ない!今は城の奥を目指そう!」
れなが走り出す。
やれやれ、猪突猛進とはこういう事だ。
だが確かに今は考えても何も始まらない。とにかく敵を倒し、悪鬼の首領である亜華魔姫に目的を聞き出すのだ。
…しばらく進むと、大きな広間に出た。
とても広い広間だ。広いのだが、これと言って目につく物はなく、綺麗に片付けられている。
「ここまで来るたぁ流石だな!」
突如響いた声に、一同が構えた。
目の前の天井が開き、三人の悪鬼が振ってくる。
うち二人は六本の腕を持つ赤鬼だ。
こいつは六腕鬼。鬼子はかつてこいつと戦った事がある。
そしてもう一人は、六腕鬼とよく似ているが、薄汚れたローブを身に羽織っており、何よりの特徴は腕が十本も生えているところだ。
れなが真っ先に驚愕した。
「闇姫軍四天王のバッディーより腕多い!?ジャンケン勝ち確じゃん!」
呑気な事を言うれなを無視して、十本腕の悪鬼が話す。
「俺は十腕鬼!亜華魔姫をお守りする為、ここを死守する!」
十本腕で拳を握り、左右の六腕鬼は手に刀を出現させる。
粉砕男が彼らに問う。
「待ってくれ!いい加減話してくれ!お前らは何が目的だ!」
十腕鬼は歯を食い縛り、いかにも不快そうな顔で答えた。
「俺達の目的を話しても無駄よ。お前らの反応は目に見えている。愚かな者に、我々を理解する事などできぬのだ!」
十本の腕を同時に叩きつける十腕鬼!
「…ええー!?」
直後、起きた出来事に鬼子が間抜けな声で思わず叫ぶ。
…大きな音と共に壁に穴が空き、とてつもない数の悪鬼が次々に押し寄せてきた!
先程戦った魚頭、動物頭の他、伝承に伝わる鬼の姿、翼を生やした鳥の頭、角を生やした竜人姿、太った巨漢…本当に多くの悪鬼が、広間を瞬時に埋め尽くした。
鬼子達は中央に追いやられるような形だ。互いの背中を預けあい、全方位の悪鬼に注意を向けた。
十腕鬼も十本の拳を向けてジワジワと近づく。
「今すぐここを去れば見逃してやる。さあどうする!」
勿論、この数を前にしても誰一人臆する事はない。
小さな妖姫だって一緒だ。
鬼子が鎌を構えて、勇ましく言ってみせた。
「…あんた達には昔から良い思い出はないのよ。背中は向けない、徹底的にボコボコにしてやるわ」
「言ったな!やれー!!」
十本腕が振り上げられると同時に、一気に押し寄せる悪鬼達!
ラオンが空中を飛行して頭上からナイフ攻撃を仕掛け、粉砕男は拳を突きだし、衝撃波で悪鬼を吹き飛ばす!
れなは凪ぎ払うように蹴りを放ち、鬼子は炎を纏いながら早速鬼人化、炎の刀を振り回す!
妖姫も小型の悪鬼を一生懸命殴り付けている。
「ぐっ!」
粉砕男が声をあげる。
魚悪鬼が彼目掛けて飛びかかり、押し潰そうとするのだ。ラオンが止めようとするも、鳥悪鬼が彼女の頭を容赦なく蹴飛ばし、悪鬼の群れへと墜落させる。
れなは巨漢悪鬼を蹴飛ばそうとするが、足元を小鬼に掴まれてバランスを崩し、巨漢悪鬼に掴まれてしまう。
鬼子はしばらく善戦していたが…。
「やれ!!」
十腕鬼の指示と同時に、六腕鬼が刀を投げ飛ばしてくる!
投げられた刀は爆発し、鬼子を容赦なく痛め付ける!
あっという間に押されてしまう一同。
妖姫が誰かに取り憑こうとするが、大きな悪鬼達に立ち塞がれ、どうにもならない。
そのうち粉砕男とラオンは転倒、れなも巨漢悪鬼に床に叩きつけられ、鬼子は仰向けに倒れても尚刀を投げられ、ひたすら吹き飛ばされる。
十腕鬼は嘲笑う。
「これまでの戦いで消耗していたようだな!この城を攻略できる者など、この世に一人もおらん!」
悪鬼の荒れ狂う声のなか、一同は苦悩に意識を失いそうになるが…。
「皆、いっけー!!」
聞き覚えのある声と共に、れなを痛め付けていた巨漢悪鬼の頭に何かがぶつかり、転倒させた!
驚いたれなが見てみると…。
そこには、うつ伏せに倒れたれみがいた。
れみが、砲弾の如く頭突きを決めたのだ!
それだけではない。ラオンと粉砕男を押し潰していた魚悪鬼は駆けつけたエックスに投げ飛ばされ、小鬼達は死神兄妹が両手から黒い光線を撃って吹き飛ばし、葵がハンドガンで鬼子に投げられる刀を撃ちぬいていく!
皆が助けに来たのだ。
突然の助けに、十腕鬼は困惑する。
「立て姉貴!」
れみが叫ぶ。
興奮すると口調が変わる彼女には慣れっこなれなは、れみの手をとって起き上がり、悪鬼の群れに拳を浴びせていく!
粉砕男はエックスと、葵はラオンと、妖姫は死神兄妹の後につき、鬼子は…。
「らしくねえぞ鬼子!」
倒れる鬼子に手を伸ばしたのは、顔に火傷を負った火竜だった。
彼を見て、エックスが叫ぶ。
「火竜!本当に大丈夫か!?」
「悪鬼狩人の俺にとってこの戦いは正念場みたいなものだ!爆散炎ぐらい、何度だって使えるさ!」
爆散炎が危険な技であると知っていた鬼子は、火竜の闘志に驚きを隠せない。
…そして、少し顔を赤らめながら、彼の手をとった。
気づけば悪鬼の群れはあっという間に鎮圧されつつあった。そこら中に悪鬼が倒れている。
不思議な事にこれだけの戦いのなかでも、壁や床は傷ひとつついていない。
いつの間にか十腕鬼を守るのは六腕鬼のみになった。
左右の六腕鬼は刀を投げ飛ばしてくるが、もう人数ではこちらが有利。
こちらだって仲間がいるのだ。負けない、勝てる!
「くらえええ!!」
鬼子は炎の刀を振り、投げられた六腕鬼の刀を空中で爆破、回転して刀を振るって六腕鬼を切り倒す!
続いてれなが飛び出し、十腕鬼へ蹴りを放つ!
「ぐうう…負けるか!!」
十腕鬼は三本の腕でれなの蹴りを受け止める!
更に容赦なくエックスが拳を突き出しにかかるが、更に四本の腕でそれを受け止める!
頭上からはれみが拳を振り下ろしにかかり、それを三本の腕で防ぐ。
これで十本腕全てを封じた。
「鬼子!今!!」
れなの叫びと同時に鬼子が刀を振り下ろし、十腕鬼の頭を叩きつけた!!
「ぐへ!!」
膝をつく十腕鬼…。
「ぐ…ま、まだだ…!まだ亜華魔姫様のもとへは行かせん!」
その一言を最後に気絶する十腕鬼。うつ伏せになった彼を取り囲みつつ、周囲を見渡す一同。
…もう戦えそうな悪鬼の魔力はない。ほとんどの悪鬼はもう倒れて動けないようだが…。
単なる負け惜しみだったのか?それとも…。
…直後。
突如城が揺れだした。
凄まじい揺れだ。しかし、城の物は全く落ちる事なく静かに位置を保ち続けている。
これは…ただ事ではない。
「皆、あっちに窓があった!一回抜け出すぞ!」
粉砕男の指示と共に急いで駆け抜けていく一同。
彼についていくと、彼の言う通り通路の途中に窓があった。
これから何かが起ころうとしている。それを悟った粉砕男は窓を開けている暇もないと、窓を殴って破壊した。
外へ飛び出し、赤い空が広がる悪鬼の島へと飛び出した。
急いで飛行し、近くにあった岩の上に降り立つ。
見ると、城だけが激しく揺れていた。
…周囲の岩を破壊しながら、城は不気味に変形していく。
城の表面が波打ちながら伸びていき、段々と表面が剥がれ落ち、真っ白になっていく。
そして…細長い腕になった。
一本だけでなく、二本、三本、四本…と、次々に腕が増えていき、更に各所から血管のような赤い管が出現、立派な城はあっという間に不気味な怪物と化してしまう。
「まさか…城そのものが悪鬼!?」
鬼子をはじめ、全員が異様な光景に思わず後ずさった。




