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火竜の覚悟 爆散炎

「大変だー!!脱走したぞー!!」

闇姫の城にて、兵士達があちこちに走り回って騒がしくなっていた。




以前のソサリ渓谷での戦いにて捕らえた百戦鬼と剛強鬼が脱走したのだ。

悪鬼の力を封じる事ができる檻に閉じ込めていたのだが、見ると檻は真っ二つにされていた。

力を封印された状態で、頑丈な檻を破壊したのだ。

破壊された檻を見つめながら、闇姫はボソリと呟く。

「何がやつらをここまで動かすのか。何が目的なんだ、やつらは」

闇姫の横を飛んでいたダイガルも、頭の角を撫でながらサッパリ、と言った感じだった。



兵士達が追い掛けるなか、剛強鬼と百戦鬼は城の通路を駆け抜けていた。

特に力の強い剛強鬼は、足で床を突き刺しながら走っていくものだから、床が穴だらけになっていく。

兵士達は慌てて槍を投げ飛ばすが…百戦鬼は背を向けたまま自分の槍を回転させて槍を切り落とす。

進行先に更なる兵士達が向かってくるが、剛強鬼が拳を突き出すと同時に衝撃波を放ち、全員を吹き飛ばす!

互いの背中を預けあい、それぞれ技を放ちながら二人は聞きあう。

「力将!亜華魔姫様にお伝えするべく、祈るぞ!」

「やってやる!!」

体を動かしつつ、二人は精神を集中させ、遥か遠くへと念力を送る…。





…空間を越え、送られた念力は悪鬼の城へと届いた。



城の頂上…亜華魔姫の元へ。

「…」

亜華魔姫は以前の戦いでまだ痛む体だった。

肩を抑えながら、立ち上がる。


「待ってろ…助けてやる」


それでも右手を振り上げ、念力を送り返す。



…微弱な念力は空間を乗り越え、闇姫の城へと届く。



「…!」

剛強鬼、百戦鬼はそれを察知し、ふと近くの壁を見た。

「…あの壁に、亜華魔姫様の念力が空間の穴を空けてくれている!」

百戦鬼が言い終えると同時に、壁にはモヤモヤとしたワームホールが開く。

困惑する兵士達を横目に二人は頷きあい、ワームホールへと飛び込んだ!

兵士達は追い掛けようと飛びかかるが、ワームホールはすぐに閉じてしまい、兵士達は頭をぶつけてしまった。




「逃したか」

丁度そこへ闇姫が到着する。

兵士達は一斉に頭を下げるが、闇姫はそんなに気にしていないようだった。

「大物二人を逃したのは痛いが、やつらの目的は地獄石だ。あれを奪われてないぶん、まだ脅威は薄い」

互いの顔を見合わせる兵士達。

ダイガルも後から飛んできて、手を振り上げる動作で兵士達の頭をあげさせた。


…だが、安心するのは早かった。

一人の兵士が、大慌てでその場に駆けつける。

「闇姫様ー!!た、大変です!!地獄石が…!」

この時ばかりは、闇姫も勢いよく振り返った。




…倉庫にあったはずの地獄石が、無くなっていたのだ。

欠片もなく消え去った地獄石。

はじめはあの悪鬼二人が盗み出したのかと兵士達が騒ぐが、闇姫がそれを否定する。

「やつらからは地獄石の魔力は感じ取れなかった。だからあの二人は何も盗み出していない。…という事は」

闇姫とダイガルは今一度倉庫に残ってる魔力を探りだす。





…一つの魔力が感じられた。

とても微弱な魔力だ。


「…!!闇姫様!この魔力…人間のものです!」

ダイガルは驚きを隠せない。魔力が残されているという事は、この城に人間が忍び込んだという事だ。

まさか、この騒動に紛れ、かつ人間ならではの弱い魔力で周りから察知されずに地獄石を密かに盗み出したというのか…?




「…私達が地獄石を持ってる事を知ってるという事は、ソサリ渓谷での戦いを密かに見られていたようだな。少し派手に戦いすぎたか。しかしこの闇の世界どころか城にまで侵入するとは、人間の科学を見誤ったな。反省だ」

ポケットに手を突っ込み、闇姫は部下達に命じる。

「魔力を辿り、人間を探し出せ。あまり騒ぎにはしたくないが、人間があんな物を使えば間違いなく面倒になる。必要なら破壊活動も許す。とにかく地獄石を使わせないようにしろ」

敬礼し、大急ぎで軍の並列に取りかかる兵士達。

ダイガルは動き回る兵士達を横目に、闇姫に耳打ちする。

「嫌な予感しますね」

闇姫は、このまま簡単に済むとはどうしても思えなかった。





「よし!!魔力を辿り、地獄石を取り返すぞ!」

闇姫軍の兵士達は、闇姫軍のトレードマークを刻んだ旗を掲げて進軍を始めた。

闇、と刻まれた黒いトレードマーク。冷たい風で、静かに揺れていた。








「うお!!や、やっと帰ってきたぜ…!!」


悪鬼の城の頂上にて。

壁に空いたワームホールから、剛強鬼と百戦鬼が飛び出してきた。

飛び出るや否や、二人の視界に亜華魔姫が入り込み、即座に二人は頭を下げる。

そして、二人同時に声を荒げるように言った。

「亜華魔姫様!!この度はとんだ失態を…!どんな処罰も受ける覚悟であります!」

「…そんなものは良い。下に行き、叡光鬼を助けろ」

亜華魔姫は、まだ傷が癒えていないようだった。声に生気がなく、立ち振舞いもいつもよりも姿勢が悪い。

二人はそんな姿を見せられ、すぐ下へ行ける程薄情ではなかった。特に百戦鬼は強く出る。

「亜華魔姫様!まだ傷が癒えてないではないですか!それに城内に感じるこの魔力…。城内に侵入者がいるではありませんか。お言葉ですが、今の亜華魔姫様では対処するのは不可能です!」

「いや、心配はいらない…」

亜華魔姫は、美しい顔に不気味な笑みを浮かべた。




「やつが、ついてるからな」



…それを聞いた二人は、徐々に肩の力が抜ける。


頷く剛強鬼。

「…なるほど。それならいくらかは余裕が出ますな。良いでしょう」

剛強鬼は露台に立ち、下を見下ろす。

今まさに戦いを始めようとしている叡光鬼、そして火竜をはじめとした侵入者達。

百戦鬼も続き、露台から地上を見下ろした。


「…技将、参る!」

「力将、同じく!」

飛び出す二人。

亜華魔姫は二人を見届け、呟いた。


「…世界を救えるのは我々だけだ。頼んだぞ」




…叡光鬼の左右に降り立つ二人。

百戦鬼は静かに舞い降り、剛強鬼は豪快に地面に穴を空ける!

衝撃波と強風に顔を覆う一同。


「…この先には通さん!何としても!!」

剛強鬼は腕を振るった。

百戦鬼は槍を振り回し、風を巻き上げ、風の刃を発射して一同に放つ!

何とか回避する一同。火竜は拳を炎に包み、全力の突きをお見舞いしようと百戦鬼に向かうが、叡光鬼が飛び出してそれを刀で受け止める!

「私は悪鬼の将。頭だけでなく、腕にも自信があるのですよ…」

同時に百戦鬼は叡光鬼の頭上に飛び上がり、真下にいる火竜の頭部に槍を突き刺す!!

「ぐあっ!!」

流石にこれにはらしくない声をあげるしかない。

更にそこから百戦鬼は槍を振るい、他のメンバーにも巨大な風の刃を発射する!

ドクロとテリーが両手に魔力を集中させつつ受け止めようとするが、凄い勢いだ。

刃を受け止めるより前に強風で吹き飛ばされ、飛んできた風の刃が体に突き刺さる!!

テリーの頑丈なスーツも貫通し、骨の体にもヒビを入れる。ドクロも体から血を吹き出し、痛々しい声をあげる。

「ぐっ…!」

ドクロは左手から魔力を放ってテリーの骨のヒビを修復した。

エックスが三将の動きを止めようと地面を殴り付け、地響きを発生させるが、叡光鬼と百戦鬼は同時に飛行して回避、剛強鬼も地面を殴り付けて地響きを放ち、相殺してしまう。

れみは何とか自身に注意を引かせようと左手から白いレーザーを受け続けるが、百戦鬼が槍で軽く受け止めてしまう。

そうこうしてる間に剛強鬼が突っ込んできて、れみも吹き飛ばされてしまう。

見事なチームワークに一同は打ちのめされるばかりだ。

剛強鬼は前足を勢いよく振り下ろし、叫ぶ。

「俺達は悪鬼だ!!お前らごとき、屁でもない!」



…それからも戦いは続く。

ドクロとテリーが叡光鬼の刀を受け止めつつも、素早く刀を引き離され、斬撃を食らってしまう。

れみと火竜は剛強鬼の拳に終始押されている。

火竜は先程頭を刺されて、正直意識が朦朧としている。

このままでは城へ突入する前に全滅…などという最悪な展開になりかねない。



「…」

火竜は睨んだ。

目の前の悪鬼三人を。

何が目的なのかは分からないが、相手も必死だ。何としても城へは通さんと攻撃の手を休めない。

「…敵ながらあっぱれだよ」

火竜は立ち上がる。


…もうこうなれば仕方ない。




命をかけるしかなかった。


両手の拳を腰元に添え、全身の力を集中、少しずつ体の周りに魔力を固めていく。

魔力の粒子一つ一つが火竜の周りに留まり、結合していく。

やがて赤い炎が出現し、勢いがどんどん強まっていく。


将との戦いに夢中な仲間達も、その魔力に反応して視線を向けた。

火竜は赤い炎に包まれながら、足を一歩踏み出す。

足が地面につくと同時に、周囲に熱風が放たれる。


仲間達は、火竜から離れた。この熱風だけで、服に火がつきそうな程の勢いだ。

テリーは、骨の体に冷や汗をかいていた。

「お、おい火竜!その魔力は…!」

炎に呑まれながら、火竜は微笑む。



爆散炎(ばくさんえん)!」

火竜は炎の体で突っ込む!

離れていく仲間達を横目に、目の前の叡光鬼、剛強鬼、百戦鬼に衝突しようとひたすら駆け抜ける。

地面についた足跡から、火柱が立ち上がる。

この技を知っていた叡光鬼は、慌てた様子を見せた。

「まずい!二人とも離れ…」

火竜は地を蹴り、飛び出し、一気に三人へ近づいた。

そして、両手をあげ、勇ましい叫び声をあげた!

「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」

同時に火竜を包んでいた炎が一瞬金色に輝き、豪音と共に大爆発を引き起こした!

炎を形成していた魔力が猛烈な熱を放ちながら一気に分散したのだ。

熱風に吹き飛ばされそうになる仲間達。黄色い光が辺りを照らし出す。

火竜は当然爆発に巻き込まれ、光の中に身を投じ、一時的に姿が見えなくなる。

至近距離から巻き込まれた悪鬼三人も、当然無事では済まない。

爆発は城の頂上まで届き、城の表面を激しく燃やす。

まさに炎の戦士の捨て身の攻撃だった。










…しばらくして、その場は元の明るさに戻っていく。

戦場は黒く焼け焦げ、城も所々壁が剥がれ落ち、その威力を物語っていた。

焦げ臭い臭いが漂うなか、顔を腕で覆っていた一同は恐る恐る顔をあげた。




「っ!」

同時に息を呑む。




…全身が火傷だらけの火竜が、うつ伏せに倒れていた。


…その目の前には、赤い光の壁を張る百戦鬼の姿が。

光の壁はひび割れ、やがてガラスのように美しく散ってしまう。



…膝をつき、倒れる百戦鬼の背後には、背中を丸めながら苦悩の表情を浮かべる叡光鬼、左腕を抑える剛強鬼が…。

「嘘でしょ、何であれだけの攻撃を受けて立ってるの!?」

れみが、一同が考えている事を代弁した。

百戦鬼が二人を守ったようだが、それでもダメージはあるはずだ。





…しかし。


「…流石に、厳しいか」

…大きな音をたてて地に手をつく剛強鬼。叡光鬼も膝をついて息を切らす。

「…ここまでの反撃は予想外でしたよ。まさか自爆するなんてね。貴殿方の決意も、我々の決意と互角という事ですか」

剛強鬼が震えながら叡光鬼を助け起こした。

そして、城の中へと撤退していく。背中を向けながらも、叡光鬼は言った。

「良いでしょう。来てみなさい。しかし、城内はまさしく地獄ですよ」



…あれほどの攻撃を受けて数秒間立っていたのだ。

彼らをここまで動かすものとは一体…。




考えていても仕方ない。



一同は二人を追うように、城内へ突入した!


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