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悪鬼の蠢く城

「疲れたぁー抱っこしてぇー!」

悪鬼の城を登りだし…先に声をあげたのはれなだった。ラオンがれなの頭を叩きつつも、彼女も息を切らしている。

アンドロイドである二人がこんななのだ。人間である鬼子は段に両手をつけて疲れきっている。

唯一疲れていないのは粉砕男と妖姫のみ。

「おかしいのう。この階段、いつまでたっても終わらないし、先が全然見えんぞ」

上の方を見上げる妖姫。

階段の先は暗闇が続くばかりで何も見えない。

れなが苛立ちながら座り込む。

「こんなんじゃ買い物行く時大変じゃん、悪鬼はどうやって外に出てるの?」

もう十分以上は登っている。下で皆が戦い続けている事もあり、一刻も早く登ろうと急いでいたにも関わらず、行けども行けども先は見えない。


「おい、よく見ろ。おかしい」

粉砕男が指差す段には、一つの小さな傷がある。

何て事ない傷だ。だが問題は傷ではないようで、粉砕男は更に登りだした。

それに続く他の四人。


「見ろ!また出てきたぞ!」

ある程度進むと、粉砕男はまたある場所を指差す。


そこには、先程のものと全く同じ傷があった!

大きさも深さも色合いも全て同じ、間違いなくあの傷だった。

粉砕男は興奮気味に言葉を発した。

「この階段、無限に続いているんだ!進むと何かしらの仕組みで前に戻されるんだよ!」

れなは両手をあげてオーバーリアクション。

すぐに戻ろうと下に降りようとするが、妖姫がれなのピンクのスカートを引っ張って止める。

「待て!無限に続く空間で下手に動いたら危険じゃ!下手に逆方向に動くと空間の狭間に落ちるぞ!」

バカに詳しかった。

まあ彼女は悪霊だ。空間の知識があるのは当たり前だった。


…しかしながら、ここからどう抜け出すかは分からないようだった。

粉砕男とラオンは互いに目を合わせて腕を組み、妖姫と鬼子は下を見て汗をかいている。

そんななか…れなは何かを思い付いていた。


「…ねえ、ぶっ壊せば良いんじゃないの」

え、とれなに目を向ける四人。

れなは拳を握る。何をする気だとラオンが聞こうとしたその時。


れなは天井を殴り、崩壊させた!!

砂煙と共に派手に崩れ落ちる天井。四人は激しく咳き込んだ。



…目を開くと、天井から光が漏れていた。

穴を覗くと…そこには新たな部屋が広がっていた!

驚く四人にれなは得意気に言う。

「まっすぐ無限の空間が続いてるなら、上はどうかなと思ったの」

れなにしてはよく考えた。

なるほど、無限の空間はまっすぐに続いていた。

上から抜け出してしまえば良いだけだったのだ。


部屋に出ると、カビ臭い臭いが一同を襲う。

机や椅子が並べられた小部屋のようだ。壁には鬼神の絵が描かれている。

その絵には、「我らが祖先、シン」と書かれていた。

それを見た鬼子は、はっきりと発した。

「邪神、シン…」

その姿は、実際シンの姿を見た事があるれなたちには見覚えのない姿だ。

赤鬼が羽衣を纏ったような、鬼神だった。

本来シンは真っ白に輝き、白い着物を着たような体に体の各所から棘を生やした、無機物と生物を合わせたような姿をしていた。

れなが言葉を出す。

「…悪鬼達も自分達を生み出したやつがどんな姿なのか知らないのかな?」


…悪鬼。

彼らは人間の悪意から生まれた存在だ。

悪意なので悪のままに生き、善に抗う。

…そんな彼らにとって、彼らを止めようとする自分達はどう見えているのだろう。

悪にとっては、自分達が「悪」なのだろうか?


…敵地で複雑な心境を抱くことになるとは思っていなかった。






「お前達、あの空間から脱出したのか!?」

突然高い声が響き、一斉に構える一同。


部屋には、異様な悪鬼が立っていた。

時計のような見た目の大きな両目を持つ鬼の生首のような姿をした悪鬼だ。生首からそのまま手足が生えている。

頭の二本の角は繋がっており、八の字を描いた形となっている。

悪鬼は地団駄をして不満そうに叫ぶ。

「何だよー!この無限廊鬼(むげんろうき)の絶対の魔術を解くなんて!」

「お前の仕業だったのか!?こちとら走らされてイライラしてんだ!喧嘩するなら受けてたつ!」

ラオンがナイフを向ける。

無限廊鬼は両目から奇妙な波動を放ち始めた。

波動を浴びた一同は全身に悪寒を覚える。

…と同時に、体が勝手に後ろに下がっていき、穴へと向かっていく。

れなが慌てて足を動かそうとするが、全く動かない。

体を操られてしまっているようだ。

それに、単に操られてる訳ではない。時間を戻されていくかのような挙動だ。

このままでは無限空間に戻されてしまう。

「お前らを無限空間に戻したら天井を魔力で補強する!無限にあの階段を登ってもらうぞ!」

かなりまずい。どうやらこいつは相手の時間を操れるらしい。

あの空間に閉じ込められては、悪鬼騒動を沈める事など夢のまた夢だ。

いくら力を込めて、いくら心をたぎらせても全く上手く動かない…!

完全に追い詰められたと思ったその時…れなが悔しさのあまり叫び声をあげた!

「あああああああああああっ!!!!!!」



…その何気ない行動が、まさかの逆転となる。

「ぐえっ…!」

無限廊鬼は一瞬震え、一瞬波動が止んだ。


それを見た粉砕男が瞬時にある事を悟る。


「…!なるほど!空気中に放たれる波動を、声をあげる事で振動した空気で打ち返したのか!」

今日のれなは冴えてる、と皆褒め始めるが、ただの偶然だ。

一同は横に並び、思い切り叫び声をあげた!

その声は衝撃波と化し、無限廊鬼を打ち付け、吹っ飛ばし、壁に叩きつけた!

ゆっくり落ちる無限廊鬼。すぐに気を失った。

これで無限地獄の脅威は去ったはずだ。

粉砕男はため息混じりの声を出した。

「さて、次も大変だぞ」



…部屋にある開けっぱなしの扉の先には、無数の回転ノコギリが回っていた。






その頃、外では。



「ええいしつこいわね!!」

ドクロとテリーが怨鬼を殴り倒し、葵は弾にエネルギーを込めて発射し、爆発させ、多くの怨鬼を倒す。

エックスは怨鬼を掴んで他の怨鬼に投げ飛ばし、れみは身軽に体当たりをかわして素早く蹴りつける。

まだ尚沸き続ける怨鬼達だが、ようやく数が減ってきたようだ。

火竜が燃え上がる手で城を指差す。

「今なら突入できるかもしれない!行くぞ!」

その一声で全員の目が城の入り口に集中、一気に走り出す。



…しかし、守護者はまだいた。


突入しようとした火竜は、殺気を感じて急いで下がる。

案の定、目の前に閃光が走り、地面に何者かの刃が叩きつけられた!

怨鬼達は、一旦動きを止めた。



…降りてきたのは、スキンヘッドから角を生やした老人…叡光鬼だった。

刀を光らせながらこちらを睨み付けてくる。

「あなた方、ここは我々悪鬼の聖域です。聖域荒らしには死んでもらうしかありません」

エックスが拳を構えながら先頭に出て指を振る。

「爺さん。舐めてる訳じゃないが、この人数を前に一人で戦う気か?」

…それを聞いた叡光鬼は、舐められた気分だった。

悪鬼一の頭脳を舐めてもらっては困る。

「…ほうほう。私では相手に不足と?そんな舐めてもらっては、あなた方を愚か者と見下してしまいたくなるではありませんか」

腰を深く落とす叡光鬼。



…先に飛び出したのは、叡光鬼だ。

刀を振りかぶりながらエックスを狙う!

エックスは巨体にあわぬ身のこなしで回避するが、叡光鬼は突如急カーブし、彼の右腕を切りつけてみせる!

次にれみが向かい、角を殴り折ろうと拳を握るが、叡光鬼は猛速度で下がってかわし、刀を振り上げて切りつける!

吹っ飛ばされるれみとすれ違うように一つの弾丸が飛んでいく。

葵の放った弾丸だ。

これすらも叡光鬼は刀を回転させて切り裂き、次に飛んできた火竜の炎の拳もやはりかわし、ドクロとテリーが放った黒い光弾も刀を突くと同時に放った衝撃波で押し返し、逆に二人を爆破してみせた!

息を切らす一同に対し、叡光鬼は一瞬息を吐くだけでほとんど動じてない。

火竜は傷をつけられた両手から視線をそらすように叡光鬼を睨む。

「…お前、何でそんなに強くなってんだ?」

「私は強くなってなどいません。今までと同じで、あなた方一人一人の何気ない動きを見れば全ての行動を先読みできるのですよ!」

めげずに殴りかかってくるテリーの拳に刀を打ち付ける叡光鬼。

「あなたは骨なので読みやすい!」

よろめくテリーと入れ替わり、かかと落としを仕掛けてくるれみに刀を振り下ろし、押し返す!

「れみさん、あなたは動く瞬間、足首を数ミリ動かす癖がありますね!」

そして足に炎を纏わせながら突撃してくる火竜に対しては、飛翔する事で蹴りをかわし、空中に残った火竜の炎を刀に纏わせ、火竜を突く!!

刀は火竜を貫き、炎と血を飛び散らせる!

勢いよく引き抜かれる刀。火竜は尚も立っているが、今のはかなり甚大なダメージだ。

「…あなた、悪鬼狩人でしょう?悪鬼に狩られてどうするのです?」

悔しそうに表情を歪ませながら後ずさる火竜。

ドクロとテリーに受け止められながら下がる火竜に、叡光鬼は問う。

「…一つ聞きましょうか?あなた方、何で私達と戦うのですか」


…少しの沈黙の後、火竜が苦しそうにもがきつつも答える。

「…お前らって、人間の悪意から生まれたんだろ?」

黙りこむ叡光鬼。しかし、その顔は僅かに笑っていた。

「…まあ、単刀直入に言うと俺達は人間を守る為に戦っている。基本俺達は力の弱い方の味方をしてやりたいしな。…でもな」

一歩踏み出す火竜。右手の拳を構え、少しずつ炎を纏わせる。

「俺も人間だけどさ…。人間ってつくづく愚かだよな。散々悪さをして、それによって生じた悪意の化身のお前らに襲われるなんて。…でも」

一歩一歩踏み出していく火竜。


「だからこそさ。だからこそ俺達は、愚かなやつの味方でいたい。存続させつつも完全には救わない。救い用のないやつは懲らしめて、改心させる!ただそれだけだ…」

拳を完全に炎に包み、地面に小さな亀裂が走る程の勢いで足を踏み出す!

いつの間にか、他のメンバーも横に並び、陣形を組んでいた。

「勿論人間だけじゃない!お前らも懲らしめて、改心させる!悪意から誕生した存在だろうと、こうして俺に戦う理由を聞ける心のあるお前らなら、きっと変われるはずだ!」








砂嵐が起き始める。



…周囲の環境が、変わったかのようだ。





「…ほうほう。ほほーう…」

叡光鬼が刀をゆっくりと振り上げる。



…目を赤く染め、口は笑いつつも、不気味な威圧感を放っていた。

…まるで、鬼神のような風格だった。

…酷く、不愉快そうだった。


「おやおやおやおや…!?そうですか。慈悲をかけるのですか。我々に!!」

戦いは、より激しさを増すようだった。



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