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山奥の人間

とある野山に遊びに来たれなたち。

れな、鬼子、ドクロ、テリーのメンバーだ。ついでに妖姫もついてきた。

ここは狂暴なモンスターがほとんどいない平和な野山。ここでならいつもよりも穏やかに時を過ごせると思ったのだが…。


「ここはどこなのじゃ!」

妖姫は、早速迷子になっていた…。

同じような木が同じような生え方をしている山奥。方向など勿論分かるはずもなく、どこへ進めば良いのか分からないまま、適当に歩き回っていた。

それにより、更に深い山奥へと行ってしまうとは思わずに…。


段々暗くなってくる。

と言っても、日が暮れてきたのではない。木々が更に生い茂り、太陽の光を遮断し始めたのだ。


…かなりの山奥に到達してしまった。

妖姫は周囲を見渡すが、ますます暗くなっていた。

所々茸や背の高い草が生えており、今までよりも明らかに異なる場所だ。

…ここまで来ると、流石にもう奥へ足は向かなくなっていた。


よせば良いのに、耳を澄ます。大体小川の音などが聞こえて、その方向へ向かっていけば脱出できるのだが…。


…耳に聞こえてくるのは、虫の飛ぶ音と遥か先の獣の唸り声のみ。恐怖心が増えるばかりだった。


「うう…」

涙目で歩く妖姫。

更にそんな彼女に追い討ちをかけるような出来事が起きてしまう。


「いたぞ!有り金を盗めー!!」

突如、ドクロマークから白い羽を生やしたような姿の兵士達が空から現れた!

木々の葉が舞い散るなか、妖姫は悲鳴を上げて逃げ出す。

勿論どの道に逃げるかも分からない。ひたすら彼らと距離を離す事だけを考えた。

「な、何で闇姫の兵士達が…!」

妖姫の足では彼らからは逃げられない。飛行してみようと思ったが、慌てているせいで上手く宙に浮けない。

ここまでかと覚悟したのだが…。


突如、銃声と共に兵士の一人が吹っ飛ばされた!

兵士は痛みにのたうち回りながらも叫ぶ。

「だ…誰だぁぁぁ!!」


…兵士を撃ったのは、見知らぬ男だった。

赤いバンダナを巻いており、白いタンクトップを着ている。手にはショットガンが。

「嬢ちゃん、もう安心しな」

男はショットガンの引き金に指を置く。

それを見た兵士達は臆し、空へと逃げていった。



「…ありがとうなのじゃ。お前、わらわが見えておるのか?」

「ああ、やはり君幽霊だったのか。俺は山暮らししてるからそういうのよく見えるのさ」

男は全く恐れていないようだ。妖姫の身の回りにはやたら恐れ知らずなのが多い。

それから妖姫は説明した。

テクニカルシティのアンドロイドであるれなたちと暮らしてる事、そして今、迷子になってしまっている事も素直に答えた。

「この山、迷いやすいんだよな」

「下手に飛んでも今みたいなのに襲われるし…そもそも山のどこにれなたちがいるか分からないからどうしようもないのじゃ」

それを聞くと、男は妖姫に左手を伸ばした。

疑問を浮かべつつも妖姫は男の手をとる。


…すると、突然男は走りだし、妖姫を軽く引っ張り出す!

「え!?何!?何じゃ!?」

突然の奇行に困惑するが、男はそんな妖姫の意識が追い付けないままにどんどん進んでいき、木に登りだす。

妖姫も木のてっぺんまで連れていかれる。正にされるがままだ。

木の上に出ると、青空と木々の葉が美しく広がっている。妖姫が目を輝かせていると、男は周囲を見渡し、ある場所を指差した。

「あそこだ。あそこにいるぞ!」

「えっ?何で分かるのじゃ!」

男は得意気に胸を張る。木の上にいるとは思えない余裕ぶりだった。

「俺は山に暮らしてるのだ。山の事は全て分かる。本来山にいない者がいたら、どんなに離れてても、風の香りや木々の揺れかたで分かるのさ!」

山ガチ勢。妖姫の脳内に浮かび上がったのはその四文字だった。

世の中には凄い人がいるものだ…と考えた時、妖姫はふと気になった。

「あれ…?お前、色々凄いけど…人間なのか?」

男はこれまた木の上とは思えない程ド派手に大笑いし始めた。

「ガハハハ、俺も人間かどう疑われるようになったか!俺はれっきとした人間だよ」

木を握る男の右手は全く動かない。凄い持久力だった。

こんな姿を見せながら、人間である事を主張している。…まあ本当にただの人間なのだろうが。

「まあ、確実に言える事は一つ、山は怖いから、仲間とはあまり離れるなって事だ!じゃあな、陰陽師には気を付けろよ!」

それを聞き、妖姫は空を飛んで男が指差した方向を目指す。


…妖姫の顔は、喜びも悲しみも感じられない複雑なものだった。

真顔なのだが…僅かに歪んだような口角が、何も感じていない訳ではない事を物語っている。


「妖ぃぃぃぃ心配したんだどー!!!」

男が示した通り、れなたちはいた。

れなは妖姫を見つけるなり全力疾走、そして全力でハグしてきた。

同行していたドクロと葵も嬉しそうだ。

葵は妖姫の肩を掴んだ。

「もう離れちゃダメよ?ところでどうしてここにいるのが分かったの?」

「…親切なやつが教えてくれてな」

妖姫は、静かに笑った。







場面は変わり、闇の世界。


「闇姫様!ソサリ渓谷に悪鬼どもの姿が多数!」

「闇姫様!ソサリ渓谷へのルート確保!!どの部隊に軌道を辿らせるかは闇姫様にお任せします!」

闇姫の城の暗い研究室にて、多くの兵士達が鈍く光るモニターを前に慌ただしく叫び回り、動き回る。

闇姫は研究室の真ん中に立ち、全ての兵士の言葉を正確に聞き取っていた。

闇姫の頭の上には、四本腕を組んで一生懸命兵士達の言葉を聞き取ろうとしているバッディーがのっている。

兵士達は突然黙り込み、闇姫の指示を待つ。


「すぐにでもソサリ渓谷へ向かう。あそこに眠る地獄石を求めて悪鬼どももそろそろ飛び出してくるところだ」

頭にバッディーをのせたまま近くにあったモニターのキーボードをいじりだす闇姫。

ある程度入力すると、モニターにソサリ渓谷の地図が表示され、赤いマーカーが記された。

「このマーカーに沿って地獄石を順番に回収する。なるべく一列になって動く旋回ルートで動くが、悪鬼と遭遇したら部隊ごとにこのポイントに移動しろ」

闇姫がボタンを一つ押すと、モニターのマーカーが消え、渓谷の壁にあたる複数箇所が赤く光る。

「上級兵が前列にて敵を迎撃しつつその場に留まり、下級兵は壁を掘って地獄石を発掘しろ。このポイントは特に地獄石の反応が多い場所。このポイントだけは逃してはならん」

「はっ!!」

多くの兵士達が、一斉に敬礼する。いつの間にか、綺麗な列まで作っていた。闇姫は続ける。

「作戦終了条件は、できれば渓谷の地獄石を全て回収する事だ。ただ万が一敵の勢いが強ければ私が威力を弱めた技を放って敵が回収する地獄石を渓谷ごと消し飛ばす。この渓谷には巻き添えになるような動物等は生息していない。躊躇なくやるから、合図が出たら渓谷から離れろ」

兵士達はまた敬礼する。

最も理想的なのは地獄石を全て回収。無理ならば敵が回収する分を破壊。

悪鬼側には地獄石の欠片も渡さないのだ。

最後に闇姫は言う。

「これだけの地獄石だ。もし敵が来たら亜華魔姫も来る可能性が高い。やつを発見したら直ぐ様私に伝えろ。最も重視するのはお前らの命だ。くたばりそうになったら後退しろ。渓谷入り口に救護班を備えてる。以上」

「闇姫様の仰せのままに!!」

今までにない勢いの敬礼に加え、何故か土下座する兵士達。

バッディーも闇姫の視界に親指を入れて見せた。

「私も四天王の一人として頑張りますよ!」

「私もなるべく戦う。もし私がやばくなったら部下の指揮を頼む」

バッディーも、笑みを浮かべながら敬礼した。



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