パープルGと、魔の人影
赤い髪に赤いスクール水着のような服を着た少女、紫の長髪から青い角を生やし、前者の少女の服を紫に染めたような服を着た女が、怪しい足取りで夜のテクニカルシティを歩いていた。
ある一つの小さな建物に辿り着き、赤い少女が紫の女に声をかける。
「いくわよ、キュバス」
キュバスと呼ばれた紫の女は親指をたててウインクした。
「準備できてるわ。デサイア」
デサイアと呼ばれた少女も親指をたてる。
ゆっくりと建物へと入っていく…。
建物内は照明もなく、真っ暗だ。
一つの狭い部屋が広がっているだけの建物。部屋にはドアが一つだけあった。
二人は知っている。ここがただの建物ではない事を。
ドアを開ける二人。
…ここは建物のはずなのに、ドアの先には美しい草原が広がっていた。
上を見ると夜空が広がり、星が輝いている。
花が生え揃い、草が風に揺れている。
…ここは秘密倉庫。
テクニカルシティがその科学力で生み出した一つの空間だ。
平和な草原だが、テクニカルシティの人々はここに多くの武器を隠しているのだ。
地面を適当に漁ると、隠されていた武器…銃に斧、剣に…棍棒と、色々出てくる。
だが、二人には最大の目的があった。
「いたわ!」
デサイアが声を高くして遠くを指差す。
そこには…大きな人影があった。
その辺の建物よりも遥かに大きい。とても大きな人影が横たわっていた。
更に近づくと…薄紫色のツインテール髪をしている事が明らかになる。
二人が着ているのとよく似た黒いスーツを着ており、スーツにはアルファベットのGが書かれたロゴマークが刻まれていた。
…それは、巨大な少女だった。
上品に横たわっており、よく眠ってる。
「今日こそあなたを頂くわよ、パープルG…」
ひっそり呟くキュバス。
この巨大少女はパープルG。テクニカルシティがその驚異の科学で完成させたアンドロイドだ。
デサイアとキュバスは彼女が生まれてから間もない頃から彼女を狙っている。
なぜなら、デサイアとキュバスはこう見えて悪魔。
邪魔物は皆、強力な武器で排除する主義なのだから…。
キュバスはどこに隠してたのか、アンテナがついた四角い機械を取り出す。
「このジャックキューブを被せれば、どんなアンドロイドも意のままに操れるわ。さあ、私達の物になりなさい…!」
今まさにジャックキューブを被せようとした時…!
突然、草原にアラーム音が鳴り響く。キュバスは驚きのあまり転んでしまった。
デサイアと共に目を丸めるキュバス。
草原に、女性の声が聞こえてくる。
「パープルG!町に巨大モンスターが接近している!お前の出番だ!」
それを聞くと、パープルGの目がうっすら開く。
どうやら町が襲撃されそうになっているようだ。
そんな中でも、パープルGは面倒臭そうに体を伸ばし、準備体操をしてモタモタしている。デサイアとキュバスには気づいていないようだ。
…そして、空間に空が空く。穴の向こうには、更に夜空が広がっていた。
秘密倉庫空間の出口だ。
パープルGはボンヤリしたやる気の無さそうな目で空間の穴を見て、勢いよく飛び出していった。
空間の穴は閉じてしまう…。
「…!キュバス!追うわよ!」
はっ、と我に返り、ここへ入ってきた入り口へと向かっていく。
確かドアを開けっぱなしにして入ってきたはずだが、いつの間にか閉まっている。
ドアノブを掴んで引こうとするが、何故か開かない。
同時に、機械音声が流れてきた。
「武器が持ち出されている可能性があります。関係者証明のパスワードを入れてください。パスワードをご存じない場合はここで三時間反省してろバーカ」
舐め腐った音声にじたばたする二人。ドアの横にある電子版にそれっぽい数字を適当に入力しまくるがどれも当たらない。
デサイアが涙を流しながら叫ぶ。
「ちょっと!!もしここで事故でも起きたらどうするのよこの仕様!助けてー!!」
その頃、テクニカルシティに大きな何かが近づいてきていた。
泥のような肌色の人型の怪物だ。テクニカルシティ近くの森から、泥を落とすような不気味な足音をたてながら近づいてくる。町の人々は当然ながらパニックに陥っている。
…その時、町の守護神が現れる!
空に穴が空き、そこから巨大な人影…パープルGが現れた!
「おお!!パープルG!我らの女神!!」
町の人々が盛り上がるなか、パープルGは構えをとってモンスターを待ち構える。
モンスターは町に突入し、自分と同じ大きさのパープルGを目の当たりにして足を止めた。
二人の巨人が一つの町に佇んでいるというのに、町には数秒、沈黙がよぎる…。
…そして、先に飛び出したのはモンスターだった。
泥だらけの体でパープルGに体当たりを仕掛ける!
パープルGは真正面から受け止め、町の建物が巻き添えになるのを防ぐ。
「うえ、ドロドロ気持ち悪…」
パープルGは思わず手を放す。モンスターは右手を振り下ろし、パープルGの頭を殴り付ける!
頭を抱えながら痛がるパープルG。調子にのったモンスターは更に蹴りをぶちこみ、彼女を転倒させた。
地響きと共に仰向けに倒れこむパープルG。
横では人間達が慌てながら怒号をあげる。
「おい!何してんだよ早く倒せよ!」
モンスターの襲撃で人間達は苛ついていた。パープルGはあからさまに嫌そうな顔をしながら立ち上がり、モンスターへ走っていく。
そして蹴りをお返しし、モンスターをひっくり返す。
ドロドロを我慢しながら足を持ち、そのまま勢いよく回転、建物のない地点目掛けて放り投げるジャイアントスイングをお見舞いした!
モンスターが落ちると同時にまた地響きが起き、そして人間達はまた怒号をあげる。
「ちょっとは考えて戦え!!」
うるさい観戦者どもだ。さっさと終わらせようと、パープルGはモンスターの胸元に拳を連続で叩き込み、そのまま持ち上げ、空に向けて投げ飛ばした!
モンスターの巨体が吹っ飛んでいき、遥か遠くの荒野へと落ちていった…。
「やっと倒したか」
人間達は手の平をひっくり返したような反応だ。モンスターの襲撃が終わると、またさっさと自分達の仕事へ戻っていく。
再び空に穴が空く。
パープルGのお迎えだ。
「…」
怒った顔で人間達の背中を睨んだ後、パープルGは空へと飛び去ろうとした…。
…だが。
「きゃ!!」
突然パープルGは顔を両腕で覆って苦しみだす。
…どこから現れたのか、突然パープルGの周囲に小型円盤が現れ、パープルGにレーザーを放って痛め付けている!
状況が掴めず、パープルGは勢いに押されて倒れ、尚もレーザーが撃たれる。
そして、そのまま気を失ってしまう。
ドローンはパープルGの活動不能を確認すると、どこかに飛んでいった…。
…そして、ここはとあるビル。
「パープルG、活動不能です。動力チップに集中射撃をお見舞いしたのでしばらく戦えないでしょう」
「よくやった」
暗い部屋で、一人の男がモニターを見上げながら、後ろの男に状況を伝えた。
後ろの男は手に持っていた本を開き、読みながら言った。
「地獄石の採集は過激な作戦もある。そうなると必ずパープルG辺りの戦力が止めに入るだろう」
ゆっくり部屋の奥へと歩いていく。不気味な足音が、暗闇にこだました。
「パープルGなどより、我々の兵器の方がずっと人類の平和を守れるのだからな…」




