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エックスと妖姫 ニドモーグ

「お、お前がエックスか!」

事務所にて。

妖姫はエックスを指差し、震えていた。

悪霊が何を恐れているのか…恐らくエックスの両肩から棘を生やした巨漢という迫力ある見た目に怯えているのだろう。

意外と妖姫は臆病なのだ。

「何だ妖姫?俺に何か用か?」

エックスに頭を撫でられ、固まる妖姫。


そんな光景を見ていた鬼子…。明らかにエックスを恐れてる妖姫の言動に、何とかエックスは心強い仲間であると伝えたかった。

そこで、ある事を思い付いた。

エックスに歩み寄る鬼子。


「エックス、妖姫はあなたを恐れてるのよ」

あまりにもハッキリと言うものだから、今度はエックスが固まってしまう。

そこで、鬼子は彼に一つアドバイスをした。

「妖姫はパンが好きなの。だからパン屋にでも行くと良いわっ!!」



という事で、エックスは妖姫を誘い、テクニカルシティのパン屋へと向かった。

素直な妖姫は怖がりつつもすぐについてきてくれた。

今はエックスの隣についてくれている。…固まったまま、足を全く動かさず棒立ちのまま浮遊してついてきているのだが。

「ここか!」

鬼子に教えられた通り進むと、パン屋に辿り着く。

町でも評判のパン屋だ。

エックスが扉を開けると、ふんわりとした心地よい香りが溢れてくる。

全身を包み込むような香りだ。広範囲に広がりながらも、店の外には出ようとせず、店の中だけに広がる香り…。

エックスは久々にこんな香りを嗅いだ。


「…ん?妖姫?」

エックスの隣にいたはずの妖姫が、いつの間にか消えていた。

店内を見渡すと…。



「エックス!これ買うのじゃ!」

トレーいっぱいにパンをのせた妖姫がよろめきながら歩いてきていた!

いつの間にこんなに取ってきたのか…というか、周りの客、普通の人間には妖姫の姿は見えてないのだ。

今の光景はトレーがひとりでに浮いているように見えているに違いない!

「お、おい!!ちょっと落ち着くんだ!」

エックスは急いでトレーをぶんどった。パンを一つも落とす事なく。



「エックスって意外と良いやつじゃな」

パン屋から出る頃には、妖姫はすっかりエックスにくっついていた。

たった今買ったばかりのクリームパンを食べて幸せそうだ。

エックスは妖姫を見て笑った。子供というのは何と無邪気だろうか。


「あ!あれ欲しいのじゃ!」

エックスを恐れなくなった妖姫はエックスに甘えていた。今度はよく分からない土偶が売っている店を指差し、走り出そうとする。


その時!



「!妖姫!止まれ!」

地中に気配を察知したエックスが妖姫に叫ぶ!

驚いて転ぶ妖姫。



突如地面が揺れ、コンクリートの地面を破って何かが現れた!

それは…全身が棘に包まれた巨大なモグラのモンスターだった。

白い棘に覆われた体は焦げ茶色だ。

逃げ惑う人々に向かって地中から取り出した岩を投げつけていくモグラ。

「やめろ!」

エックスはモグラに急接近し、体全体でぶつかった!

地面に体を埋めたままよろめくモグラ。

「何だお前はぁ!このニドモーグ様の邪魔をするたぁ良い度胸だな!」

ニドモーグはエックス一人に狙いを定め、次々に岩を投げる!

エックスは岩を蹴り壊しながら近づき、ニドモーグの頭を蹴りつけようとしたのだが…ニドモーグは地中に潜り、攻撃をかわしてしまう。

穴の空いた地面だけが残され、静かになる…。

エックスは妖姫を抱きかかえ、空中飛行する!


「飛んで避けれると思うなぁ!」

近くにあった店が揺れ、真下からニドモーグが飛び出してきた!

店は粉々だ。何の店だったかももう分からない。

出現するなり、空中目掛けて岩を投げてくる!

エックスは空中より地上戦の方が得意だ。岩を上手くかわせず、何発か直撃してしまう。

せめて妖姫だけでも守ろうとするが…。

ニドモーグの全力の投石がエックスの背中に炸裂した!

「ぐっ!」

綺麗な赤い服が薄汚れ、エックスは地上へ落ちていく。

妖姫も空中飛行姿勢に移り、落ちていくエックスを掴んで助けようとしたのだが…。

エックスの落下地点にニドモーグが移動した!

そして、体の棘でエックスを突き刺してしまう。

「ぐうっ!!…くそっ…!」

並みの人間なら死んでいるところだ。エックスは背中から血を流す。

垂れ落ちた血はニドモーグの額に流れる。

どこに持ってきたのか、ニドモーグは青いハンカチで額を拭きながらエックスに聞く。

「闇姫様のご命令で地獄石を探してんだ。地獄石はどこだ!」

「地獄石…?んなもん知るかよ…!」

ニドモーグは勢いよく体を振ってエックスを痛め付ける。

しかし、本当に地獄石の場所など知らないのだ。答えようがない。

「しらばっくれようとしてもそうはいかんぞ!このニドモーグ様は頭が良いんだ!」

どう考えても頭が良い方ではない…とエックスは心で呟くが、今はそんな事を考えてる場合ではない。

棘は深く食い込んでおり、全く外れそうにない。

「ぐっ…どうすれば!」



その時!


突如エックスに力が漲った!


「!おりゃあああ!!」

エックスは刺されていない筋肉の力だけで体を持ち上げ、棘を引き抜いてみせた!

予想外の行動にニドモーグは驚く。


着地と同時に、エックスは近くに落ちていた窓ガラスを見て自身の姿を見た。

背後に半透明になった妖姫が浮いており、全身から白いエネルギーが溢れている。

そして、両肩の棘は三本に増えており、下顎からは猪のような牙が生えていた。

「…これが妖姫の憑依能力というやつか!」

前を見ると、ニドモーグは何が起きたのか分からず困惑している。やるなら今だ。

「いくぞ!」

地を蹴ると、周囲に凄まじい衝撃波が放たれ、自動車や瓦礫が一瞬宙に浮く。

空中からニドモーグに狙いを定め、急降下していく!

ニドモーグは冷や汗をかきながら必死に岩を投げつけまくる。

「うわあああ来んな化け物化け物化け物!!来んなああああああ!!」

だが何発ぶつけてもエックスは全く止まらない。まるで装甲を纏っているかのようだ。

エックスが拳を構え、叫ぶ。

「鉄拳・排除の刑!!」

殴ると同時にニドモーグの全身の棘が音をたててへし折れ、そのまま地面から体が飛び出し、派手に吹き飛んでしまう。地割れを起こしながらしばらく地上を滑っていき、白い煙をたてながら止まった。

戦いが終わり、エックスから妖姫が分離する。

「ありがとう妖姫。お前いなかったらやばかったよ」

「わらわも礼を言わねばならん。このパンを全部守ってくれて…」

妖姫は紙袋を突きだす。

そういえば戦いで忘れていたが、今はパンを買った帰り道だった。

「…帰って食うか」

その言葉で、妖姫は満面に笑みを浮かべた。

二人で手を繋ぎ、仲良く事務所へと向かっていった。



…妖姫の笑みが、どこか複雑な笑みな事には、エックスは気付けなかった。





「…闇姫様。この辺りにはないようです」

…ニドモーグは、倒れながらもしっかりと主に報告をしていた。



「そうか」

ニドモーグが隠し持っていた通信機から、地獄石がない事を知る闇姫。

彼女の近くには、四つ腕の球状悪魔バッディー、紫の球状の体に羽を生やしたデビルマルマン、ダイヤから黄色い角を生やした姿をしたダイガル、白衣を着た蛙、ガンデル…。

闇姫軍最強の戦士達、闇姫軍四天王が集結していた。

闇姫は玉座に腰かけたまま、頭を下げている四人に命令する。

「ガンデル。地獄石の反応はあったか」

「はい。ソサリ渓谷に多数の反応が」

闇姫は立ち上がる。同時に立ち上がる四天王。

「悪鬼どもがすぐに狙いに向かうだろう。地獄石は大きな戦力となる。先に全部堀りにいくぞ」

四人は敬礼し、闇姫についていく。

また大きな戦いが繰り広げられようとしていた。


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