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エックスとの共闘 形掌鬼

「おーい、私よ。鬼子よー」

鬼子の声がとある山奥にこだます。

彼女が訪ねたのは、ある小屋だった。


「久しぶりね」

小屋のドアを開けて出てきた大男に、鬼子は軽く手を上げて挨拶した。

二メートルを越える程の身長を持ち、屈強な体つき、スキンヘッドで、赤い服を着ている大男。

普通の人間ではないようで、両肩には白い棘が生えている。

「鬼子か。本当に久々だな」

大男はにこやかに鬼子を迎え入れた。


大男の家は小さいが、とても綺麗で、整った部屋が広がっていた。

昔の彼の事を知っている鬼子はその部屋の清潔感に驚いている。

「何だ?俺だって部屋は清潔な方が良いさ」

大笑いしながら鬼子を椅子に座らせる大男。



「…さて、今回はありがとね。エックス」

エックスと呼ばれたこの大男…。彼と鬼子の出会いははっきり言って最悪なものだった。

エックスは元々、鬼子の父に使われていた男だった。

悪鬼の力に魅了された鬼子の父は当時悪鬼を皆殺しにしようとしていた鬼子を排除しようと送り出した排除者と呼ばれる男がいた。

その男こそが、このエックス。はじめは怪物のように鬼子に襲いかかり、彼女を殺す為にどこまでも追いかけてきた。


そんな彼が、今では目の前で自分にお茶を入れてくれている…鬼子は思わず微笑んだ。

そして、エックスには更にもう一つの秘密がある。

それは…。

「鬼子、お前の中のシンの魂はどうなった?」

エックスに聞かれ、鬼子は一瞬迷った後に答えた。

「私のはもう消えたみたいね。エックスのは?」

「俺からも、シンの魂は消えたようだ。肩はこんなだが、もう普通の人間だよ」

そう、彼は鬼子と同じくシンの魂を持つ人間だったのだ。

かつての戦いでシンが復活した際には、鬼子とエックスの二人が合体する事でシンが甦る…というような形だった。


「…知ってるぜ。また悪鬼が良からぬ動きを見せてるそうだな」

エックスは両肘を机について重い声で言う。頷く鬼子。


鬼子は悪鬼の騒動で両親を亡くしているのだ。もう悪鬼には大人しくしててほしいところだろう…。

自然と鬼子の表情が暗くなっていたのを見たエックスは、声を高らかにあげながら言った。

「良いぜ。俺も力になってやる!鬼人に変身できるお前と比べれば俺は普通の人間だが、悪鬼十匹くらいなら余裕で倒せるつもりだ!」

筋肉を強調するポーズをとるエックスに、鬼子は笑った。

「…それに鬼子。悪鬼だけじゃない。人間も何をやらかすか分からない。また悪鬼を使ったテロでも起こされればたまったもんじゃない。お前の母親みたいな犠牲者が出る前に、悪鬼達を何とかするぞ」

鬼子は思わずエックスの手を掴み、満面に喜びを浮かべた。

悪鬼に母親を殺された彼女。エックスのようなまっすぐな味方はとても心強いのだ。



…とその時。

二人の会話が終わった瞬間に、何か鉄を引きずるような音が小屋の外から聞こえてきた。

何事かと外へ出てみると…。



「…!」

二人は、怪しい人物を発見する。


木々が並ぶ山道に、明らかに場違いな黒い服の男二人が台車に何かを乗せて運んでいたのだ。

「はっこーべ!!はっこーべ!!」

スラリとした男達だが、やたら間抜けな声で掛け声を発してる。

台車に乗ってる物は…血管のような赤い不気味な模様が無数に刻まれた石。

見るからに危なそうな物体だ。

「おい、そりゃ何だ?」

エックスが二人に近づくと…二人は飛び跳ねて驚く。

あまりに不審な反応と風貌に、鬼子も睨みながら歩み寄る。

「こ、ここここここここれはでででででですすすねそ、そのそのしのすのせのその…」

見ていて心配になる程の冷や汗と震え…。もう怪しいという次元すら越えている。

二人が石に視線を寄せると…。



「行け!形掌鬼!」

人間達はポケットからカプセルを取りだし、投げ飛ばす。

カプセルは空中で真っ二つに開き、中から何かが現れる。



現れたのは四つん這いの赤鬼だった。

角の先に巨大な手が生えている。

エックスは両腕を構えて形掌鬼と呼ばれるその悪鬼に向ける。

「丁度良い。鬼子、俺の実力見せてやる!」

エックスは勢いよく飛翔し、形掌鬼の角を狙う!

拳を振り下ろすが、形掌鬼は角の先の手を振り上げ、攻撃を退ける。

四つん這いで迫ってくる形掌鬼。エックスは更に拳を突き出すが、形掌鬼の角の手が突然波打ち、盾のように大きく広がる。

エックスは拳を受け止められてしまうが、あまり大きな反応は見せなかった。

「それがお前の芸か!」

角の手は元に戻り、素早く振り下ろされるが、エックスは怯まず下がって攻撃をかわし、形掌鬼の頭上を飛び越え、背中に蹴りを打ち込む!

「まずはワンヒットだな!」

角の手は今度は刃のような形状に変わり、周囲の草花ごとエックスを切り裂こうとしてくる。激しい風が吹き荒れるなか、エックスは軽快に動き、形掌鬼の後ろ足を掴み、転倒させた。

突然バランスを崩した事でパニックになった形掌鬼は角の手を無数の触手に変化させ、周囲をひたすら凪ぎ払って暴れるがエックスはそれすらかわす。

両腕を広げて拳を握り、回転しながら形掌鬼を連続で殴りつけるエックス!その素早い連撃には形掌鬼の手も対処できなかった。

形掌鬼は草を散らしながら派手に吹っ飛ばされ、地面に直撃する。

「ひぃぃ!!こいつ化け物だ…!撃て!!撃て!!」

二人の男はエックスの強さに驚愕しつつもハンドガンを取りだし、銃撃を仕掛ける。

予想外の攻撃にエックスは驚くが、幸いにもエックスは一人ではない。

「させないわ!」

鬼子がほんの一瞬のうちに精神を全集中し、頭から角を生やし、鬼人化。

炎の刀を振るい、飛ばされた弾を切り落とす!

男達は引けた腰で今度は鬼子に狙いを定めるが、鬼子は素早く二人の背後に回り込み、背中を蹴りつける。

凄まじい勢いで吹き飛ばされ、地面に直撃し、そのまま気を失う男達。

「ナイスだ鬼子!」

エックスは飛び出し、形掌鬼に更なる追い討ちを浴びせようと拳を構えた。

形掌鬼は大口を開いて威嚇し、角の手を使ってエックスを掴もうとする!

エックスは素早く足を振るい、五本の指を蹴りつけ、怯ませる。

怯んだ隙に、エックスの渾身の一撃が形掌鬼の頭部に炸裂した!

ついに形掌鬼は白目を剥いて倒れ、決着がつく。


「…これは一体」

敵を倒すなり、エックスは台車に乗せられた石を睨むように見つめていた。

「台車に地獄石と書かれてるわね…」

鬼子は台車に貼られたラベルを指差した。

新たな仲間と同時に、新たな不穏が鬼子の心を覆うのだった。

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