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技将 百戦鬼

「何をしてるんだお前ら!」

とある研究所にて、一人の男が二人の男に怒号をあげていた。

この二人には地獄石の採集を任せたのだが、帰ってくるなりヘコヘコと頭を下げだしたのだ。

「変な二人に邪魔されて…無理だったよおおお!!」

泣きじゃくりながら抱きつく二人。男はもはや何も言えずに二人を殴り付けた。

「悪鬼の活動は進んでいる。もう時間がないんだぞ!!何としても地獄石を発見し、これを完成させねば…!!」

男は近くのテーブルに置かれた一枚の紙を強く握りしめていた…。





「な、何じゃお前は!」

妖姫は仰天した。

事務所に帰って来た鬼子が、粉砕男と同じくらいの背丈の大男を連れて帰ってきたのだから。

しかも両肩から大きな棘が生えているという、威圧的な姿だった。

新たな仲間として迎え入れられたエックス。

丁度この時はれなたちもおり、一同に手を振りながら挨拶していた。

そんな彼にラオンが話しかける。

「お前、もしや…」

しーっ、と人差し指をたてるエックス。

かつて鬼子を倒す為に送り出された排除者だった…などと話せば妖姫は更に警戒するだろう。

今でも後退りすぎて後ろにあった棚に尻をぶつけているのだし…。


「…という事で、俺も協力させてもらうぞ。今回の悪鬼騒動の解決に」

エックスはソファーに座りながら、目の前の葵と粉砕男に話していた。

新たな仲間が増えるのは実に素晴らしい。葵と粉砕男は手を差し出し、エックスはそれぞれと握手を交わす。

「まずは悪鬼の首領…前に鬼子が対峙した亜華魔姫を見つけ出すのが最優先ね」

首領を叩けば下の悪鬼も崩れ落ちる。簡単な話だが、実際に実行するとなるとそう簡単ではない。

そもそも鬼子が出会えたのも偶然だった。

やつが何者なのか…何が目的なのか…。それすらよく分かってない状況。

闇姫がまだマシな相手に感じてくる程、謎に包まれていた。

次に声をだしたのはれな。

「あかま姫だけじゃないよー。闇姫もなー。あいつ本当めんどくさいしなー」

まあ、れならしい発言だ。

闇姫は確かに面倒くさい。

今回の亜華魔姫の悪鬼達のように新たな組織が出現し、自分達が戦おうとする度に闇姫も割り込んでくる。今回も恐らく悪鬼の力を軍に引き入れようとしているだろう。

エックスは出された紅茶を行儀よく飲むと、ため息をつく。

「昔から困らせてくれるやつらだな…」








その頃。



「どうしました剛強鬼さん」

「いや、俺の大胸筋が疼いててな…。誰か俺の噂をしてるらしい」

細長い木々が並ぶ不気味な森林地帯にて、剛強鬼と叡光鬼がある場所を目指して進んでいた。

剛強鬼はその巨体で木々が邪魔になるらしい。両手で木々をどかしながら進んでいる。


しばらく進むと、明るい光が木々の隙間から漏れている広場に辿り着いた。

技将(ぎしょう)さん」

叡光鬼が呟くように言うと…。




…突如、二人の目の前に誰かが現れた。

どこから現れたのか分からない。いつの間にか、そこに現れたのだ。

青い鎧に身を包み、赤いお面をつけている。

腰元には槍を備えつけており、赤い長髪からは黄色い三本角が見えている。

その戦士は、二人の言葉を待っているらしい。黙ったまま佇んでいる。

「剛強鬼、私、そして貴方が揃うのも久々ですね」

「…風が私に伝えた。戦う時だと」

戦士はポツリと呟いた。叡光鬼は大きく頷きながら彼に言う。

「改めまして…技将、百戦鬼(ひゃくせんき)殿。我らが主、亜華魔姫様がお呼びです」



…それから、悪鬼の城にて。


露台から夜空を見上げ、白い髪を風になびかせる亜華魔姫のもとに、技将百戦鬼が参上した。

「亜華魔姫様。技将、ただいま参りました」

背を向けたまま、亜華魔姫は頷く。そして、口を開く。

「悪鬼狩人に、闇姫軍。我々の計画には障害が多すぎる。目的達成への道はイバラの道という事は何より承知。しかし、あまりにイバラが多すぎるのだ」

淡々と語る亜華魔姫の言葉に、百戦鬼の後ろにいた剛強鬼が逞しい両手を組みながら首を傾けた。

百戦鬼は膝をつきながら答えた。

「お任せください。私は幾戦の戦いを乗り越えた身であります。必ずや邪魔を排除し、イバラの道を更地にして差し上げます」

亜華魔姫は、ようやくこちらに向き直る。

星一つ見えない赤く禍々しい夜空を背に、命令を下した。

「邪魔物の排除は百戦鬼に任す。叡光鬼、剛強鬼は地獄石の回収を続けろ」

「ま、待ってください!」

戦闘狂の剛強鬼は亜華魔姫の前に歩み寄り、異議を申し立てた。

「邪魔の排除は俺に任せてください!悪鬼の力を見せつけてやりたいのです!」

「ダメだ。あらゆる状況に適応できる百戦鬼が妥当だ。敵は悪鬼狩人、闇姫軍と多彩。お前の剛力だけではどうにもならん。一人で数人分の戦闘力と技量を併せ持つ技将こそが複数の標的の抹殺にあっている」

剛強鬼は変わらず膝をついている百戦鬼を横目で睨み付ける。

叡光鬼は、そんな光景をただ見ていた。

「安心しろ。万一百戦鬼が窮地に陥ればお前も戦場に送り出す」

それだけ言うと、亜華魔姫はまた夜空を見上げ出すのだった。

剛強鬼は拳を握りながら後ずさる。


「善は急げと言います。早速掃除に向かいましょう」

百戦鬼はそれだけ言い残すと、現れた時と同じように瞬時に姿を消してしまった。

残された叡光鬼は剛強鬼にひっそり呟いた。

「…あなたの出番、ないでしょうね」

「…俺は、ただ戦いたいだけなのに」

悲しそうな声で、剛強鬼は引き下がった。



「あそこだ…」

夜空の下、悪鬼の城の前に広がる大草原にて。

紫の筋肉質な体を持つ悪魔三人が、遠くに聳える悪鬼の城を見つめていた。

和風の美しい城だ。彼らの主、闇姫の城とはまた違う美しさがある。

「闇姫軍が悪鬼軍に打ち勝った暁にはあの城も手に入るんだな…!」

「ああ。それに過去のデータによればあの城は何と動くらしい。そんなもので人間を轢き殺せばさぞ気持ちいいんだろうな…!」

胸を踊らせながら城を見上げる三人…。

闇姫から偵察に送り込まれていた三人だが、偵察ついでに悪鬼を何人殺せるか勝負する予定だった。

「待ちきれないぜ、早く侵入しよう!」

一人が先走ろうと足を動かしたその時。




「!?」

三人は同時に同じような驚き顔を見せた。

三人の目の前に、突如武士のような戦士が現れたのだ。

本当にいつの間にか、現れた。


…技将、百戦鬼。

「…な、何だてめぇ?俺達の最初のターゲットになりてえのか!」

現れただけで喧嘩腰の悪魔達。百戦鬼を取り囲み、両手を向けて戦闘姿勢に。

百戦鬼は呆れたように槍を取りだし、地面に突き立てる。

「おらあああ!!死ねえええ!」

一人が拳を向けて突撃してくる!


「が!?」

突然、悪魔達に強い衝撃が走る。


…三人に視認させる事すら許さない速度で、百戦鬼は槍を振るった。

閃光が三人の体を切り裂き、数秒間沈黙がよぎる。


「…んわ!?」

間抜けな声をあげながら、三人は自分達の身に起きた事に恐怖した。


上半身が少しずつずれていき…地面に落ちたのだ。

残された下半身は地面に立ったままだった。


「…まだ残ってるな」

百戦鬼は槍を宙に掲げ、槍の先端からエネルギーを放出する。

放たれた白いエネルギーは小型の槍となり、周囲に放たれ、地面に突き刺さる。

すると、地面から赤い血が吹き出してきた!


…血が吹き出した地面から土砂が吹き上がり、何かが地中から飛び出してきた。

先程の三人と同じような姿をした悪魔達が、無数に現れた。

いずれも、今の技で頭を刺され、とどめを刺されたところだった。

「な、なぜ…地中に潜伏してたのに…」

地中から城を監視していたようだが、百戦鬼の目からは逃れられなかった。


…その戦いは、城の叡光鬼の目にもついていた。

「おやおや…。しばらく見ないうちに更に技を…。流石、亜華魔の将はこうでなくては」

窓から離れ、自身の書斎へと戻っていく叡光鬼。


…剛強鬼だけは、百戦鬼を妬ましそうな目で睨んでいた。


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