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悪鬼狩人の忍者修行

「ここね」

鬼子、火竜はある林へと辿り着いた。

テクニカルシティよりかなり離れた林。ここの奥にいるある戦士達に用がある。


しばらく歩いていくと…木々を飛び越えながら黒い何かが高速で動き回る。

二人は足を止め、しばらくその黒い何かを目で追う。

大体の動きは読めるが…時々あまりの速さに追い付けない。



「…鬼子殿、火竜殿。よくぞお越しくださった」

…二人の目の前に、黒い装束に身を包む丸い生き物が三匹現れた。

鬼子は彼らに拍手する。

「流石忍者マルマンね。動きが読めなかったわ」

「…恐縮」

頭…というより、丸い体全体を下げてお辞儀をする忍者マルマン達。

今日は彼らの技術を学びにきたのだ。


忍者マルマン達の案内で林の奥にある道場に辿り着く。

広く、戦いに最適な道場。壁には「忍」や「武」と墨で書かれた紙が貼られてる。

早速鬼子が土俵のような広場に立ち、目の前の忍者マルマンの前で意識を集中する。

目を閉じ、全身の感覚を研ぎ澄まし…かつ、秘めた力を熱く燃やし…。


…気づくと、鬼子の体は炎のようなオーラに包まれ、赤い髪からは黄色い角を生やす。

忍者マルマンは頷きながら言う。

「見た事もない変身…。よほど壮絶な人生を歩んできたと見える」

「ちょっとね…。悪鬼テロで親を亡くして…悪鬼を恨みながら生きて…今の仲間ともかつてはギスギスしてて」

改めて聞くとやっぱりとんでもない人生だ、と火竜が土俵外で腕を組む。

忍者マルマンは腰元から刀を取り出し、構える。

「厳しい人生を歩んだ者程伸び代がある。強い力も必ず得られるだろう。険しい山道を乗り越えた先に、美しい山頂の景色が見えるように…!」

忍者マルマンは突然凄まじい速さで鬼子へ突進!

変身した事で動体視力も上がってる鬼子は横に動いて何とか避けられた。

忍者マルマンは急停止しつつターンし、刀を納める。

「失礼した。鬼子殿なら避けられると分かっていた」

忍者マルマンは火竜、そして鬼人化を解いて元の姿に戻る鬼子を交互に見ていた。


「…よろしい。鬼子殿、火竜殿。ある敵と戦ってもらおう」



忍者マルマンはある場所に案内してくれた。

道場の裏側にある、林の一部。ここにいる生物が二人の相手だった。


…黒い体を持ち、異様に細い体を持つ大きな竜。西洋的なドラゴンでなく、蛇のように長い体を持つ細長い竜だった。

体の各所からはクナイのような形状の棘を生やしている。

そんな竜が、林の上空を我が物面で飛んでいる。

「やつは多くの忍者が修行の末に戦う事になる、『忍竜(しのびりゅう)』。やつと戦い、お二人には忍者の動きを習得してもらおう」

火竜は巨大な相手を前に両手の拳を握り、やる気満々だが…。修行でこれと戦うというのかと、鬼子は呆然としていた。


「!」

二人は息を呑む。

突然、忍者マルマンの姿が消えたのだ。

同時に、先程まで空を飛んでいた忍竜が突然低空飛行し、二人に迫ってくる!

土と草を散らしながら突撃してくる忍竜。凄まじい威圧感だが、二人は何とかかわす。

忍竜の動きはとても正確だ。木々をしなやかにかわし、一本もぶつかる事なくその巨体をうねらせる。

また体当たりをしてくる気だ。

火竜は手の平から火球を放ち、迎撃するも忍竜は直ぐ様方向転換してかわしてしまう。

更にそこから綺麗に曲がり、火竜の左腕に噛みつく!

「ぐっ!」

左腕から炎を出す事で何とか引き離せたが、下手に攻撃を仕掛けると今のようにお返しが飛んでくる。

これは攻撃のタイミングを見極める必要がある。

また忍竜は体当たりを仕掛けてくる!

すれ違い際に鬼子は忍竜の顔面に鎌を振り上げて攻撃するが、攻撃が当たった瞬間に顔の位置を僅かにずらされ、ダメージを軽減された。

鬼子は驚いている間に尾っぽで弾き飛ばされてしまう。

またもや体当たりに移ると思われた忍竜だが、今度は空中に静止し、大口を開いて緑色のブレスを吐いてくる!

風の魔力を多量に宿したブレスだ。鬼子と火竜は全身を魔力で抉られるような痛みに襲われ、凄い勢いで吹き飛ばされる。

周囲の木々も風の魔力により、折れんばかりに曲がっており、吹き飛ばされた鬼子と火竜は地面に直撃、地面に大穴を空ける。

更にかなりの距離を飛ばされたにも関わらず、忍竜はすぐに二人の元に追い付き、二人まとめて頭突きをお見舞いする。

「ぐっ…!鬼子!お前が鬼人になって炎で対抗しないとまずいぞ!」

鬼子は痛みに耐えながら頷き、意識を集中、全身が炎のオーラに包まれ、すぐに角を生やした鬼人となる。

手に炎の刀を形成し、忍竜に向けるが…向けると同時に忍竜は噛みつきを仕掛け、鬼子の右腕にジワリと来る鈍痛を叩き込む。

「ぐっ…!」

それでも力を振り絞り、炎の刀で忍竜の頭を叩きつける!

少しは効いたようで、忍竜の飛行の軌道が僅かにずれた。この調子だ。

次に火竜が足を炎で包み、忍竜の頭部へ蹴りをお見舞いした!

更に軌道がずれ、地面スレスレの位置を飛んでいく忍竜。一気に仕掛けるべく、二人は忍竜を追おうと走り出したのだが…。

突然忍竜の速度が高まり、一気に遥か上空へと飛んでいった!強風で木々が唸っている。

かなり高い所まで飛んだようで、姿が見えなくなる。

鬼子と火竜は空を睨み付ける…。



…しばらくすると…。

「…!!避けろ鬼子!!」

声をあげた頃には遅く、空の果てから物凄い速度で忍竜が帰ってきた!!

鬼子は回避が間に合わず直撃、勢いよく吹っ飛ばされる。

忍竜は地面に体を突っ込んで地中に潜っていき、再び姿を消した。

火竜は拳を地面に叩きつけ、衝撃で炙り出そうとするが…。


「おあっ!?」

火竜の足元の地面が盛り上がり、忍竜が地中から体当たりを仕掛けてくる!

火竜も動けなくしたところで忍竜は口から風を吐き、二人を吹き飛ばし、木々に叩きつけた!

勢いよくへし折れる木々。

ダメージは与えられてるはずだが…明らかに先程より素早くなってる忍竜を睨む二人。

火竜は右腕をぶつけたようだ。左手で拳を握りながら困り顔。

「このままじゃ完全にやつのペースだ…どうする」

鬼子は考えた。


…ある事を思い付いた。


鬼子は深呼吸し、精神を研ぎ澄ます。

そんな鬼子を見て、火竜も同じように深呼吸。相棒に合わせるのだ。

忍竜は動きを止めた二人目掛けてまたもや突撃してくるが…。



「…おお!読める!」

火竜が真っ先に動きを読み、忍竜をかわしつつその背中に飛び乗り、掴まる。

背中を掴まれて怯んだ忍竜の顔に、鬼子が炎の刀を叩きつける!

これはかなり効いたようだ。忍竜は苦しみながらあちこちに飛び回る。

苦しみながらも空の上まで飛んでいき、再びあの急降下攻撃に移ろうとする。

鬼子と火竜は意識を集中し、視界よりも全身の感覚を頼る。

…大気の流れが身に伝わる。忍竜との距離がどんどん縮まっていくのが分かる。


…そして。

「今だ!!」

二人同時に叫ぶと同時に忍竜が落ちてくる!

タイミングは逃さない。二人は同時に忍竜の突進を避け、再び地面に潜られる前に鬼子は炎の刀を振り上げ、火竜は蹴りを打ち込んだ!

真横に吹っ飛ばされる忍竜。地面に勢いよく叩きつけられ、長い体を震わせる。

そこから鬼子、火竜は飛翔、渾身の踵落としを炸裂させた!!

土砂が飛び散り、忍竜の体が宙に浮き、気を失わせた。

互いの手を叩きあい、勝利を確信した二人。


「流石、お二人とも筋が良い…」

木の上から声がした。


…素早く忍者マルマンが降りてくる。まさか今までの戦いを全て見ていたというのか。

鬼子と火竜の動きを見て、忍者マルマンは感心した様子だ。

「自分の体だけでなく、周囲の環境を利用するだけ利用する。そして相手の動きを常に先読みする。これぞ忍の極意!」

忍者マルマンは刀を取り出し、ポーズをとりながら楽しそうに語る。意外とテンションが上がりやすいらしい。

鬼子と火竜は顔を見合わせた。

「…これが忍ね」

「ああ。引き続き修行をつけてもらおう」






…そして。


「え、嘘でしょ?」


…二人に向けられた次の修行。

それは忍竜二体を同時に相手するというものだった。

更なる絶望を味わったのは先の話だ。

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