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獄炎刀を守れ

「ふん!!ふん!!」

れなが、自宅である研究所の倉庫から何かを取り出し、それを引っ張っている。

倉庫にれなの杖と共に封印していた、かつて邪神シンとの戦いで振るった獄炎刀だ。

れなの腕力でも引き抜けず、本当に刀なのかと疑うような強靭さだ。

「ふん!!!!ふん!!!!!!」

あまりにうるさいのか、研究所二階で昼寝をしていたれみが起きてしまい、うるさい姉を窓から怒鳴り付けた。

「うっせぇぞ!!!」

「うっせぇのはそっちだ!!」

れなは振り返り際にれみ目掛けて獄炎刀を投げつけてみせた。

まさか投げてくるとは思わなかったのか、れみは驚愕の表情を浮かべながら飛んできた獄炎刀の鞘に頭をぶつけて倒れた。


起き上がりながら、獄炎刀を手に取るれみ。

「これを外そうとしてたのか。確かに一回抜けたきりだし…ふん!!!ふん!!!」

れみも引き抜こうとするが、やはりびくともしない。

そもそもこれは一体何なのだろうか。地獄で作られた刀、という事は分かってるのだが、そもそも地獄とは何か?なぜこの刀が作られたのか…。

「博士に頼んでも分からない事だらけだしなぁ」

彼女らの親である博士はテクニカルシティの他の研究所へと出張中。いつもなら気になる事を聞けばすぐに答えてくれるのだが、いない時は当然どうしようもない。




そんな時、姉妹が何となく獄炎刀の事を聞いてみたのはテクニカルシティに留まっている鬼子だった。

彼女の魔力を探知していたところ、コンビニにいたのを発見。

会計中に彼女に詰め寄り、早速困らせた。



その後、町にある公園にて話をした。

「邪神シンと戦った時はこれを引き抜いて、確かれなが振るったのよね。でもこれ、それ以来力を失ったように抜けないのよね。ふん!!ふん!!」

鬼子でも引き抜けなかった。

そもそもこの獄炎刀は元々刀の店に並んでいたのを鬼子が発見した物で、実は特にこれと言って一同と深い関係がある訳でもない武器なのだ。

だからこそ、この刀を引き抜けられるタイミングが分からない。全ての悪鬼の始まりと呼ぶべき神、シンと戦ったあの時だけは抜けたのだ…。


「…ん?」

突如、地面が揺れだした。

突然地面が揺れて何かが現れるのは三人にとってはよくある事。

周囲のビルに背中をつけ、何かが起こるのを待つ。


…勢いよく地面を押し破り、何か大きなものが現れた!

揺る動くビルと共にれなたちも揺らされ、立っていられず空中飛行に移る。


現れたのは、赤鬼の上半身に獣の下半身を持つ巨大な獣人だった。

獣人はれなたちと目があうなり、いきなり手を振り下ろしてくる!

れなとれみが同時に右足を振り上げ、蹴飛ばす事で退けるが、物凄い馬鹿力だ。

二人は右足を痛め、左足だけで立つ羽目に。

獣人の姿を見て鬼子が叫ぶ。

「こいつ!粉砕男が戦った悪鬼、剛強鬼!」

剛強鬼は恐ろしい雄叫びをあげて威嚇し、怒鳴るように喋る。

「その刀を寄越せ!!」

更に両腕を振り下ろす剛強鬼。れなたち三人は急いで回避するが、地面に腕が叩きつけられると同時に周りの建物が歪むように傾く。

これ以上暴れさせれば町が滅茶苦茶だ。れなは獄炎刀をしっかりと抱き抱えながら空中飛行に移り、飛び回る。

剛強鬼は獄炎刀が目的のようだ。町には目もくれず、れなの持つ獄炎刀を睨みつけている。

れなはこれを利用し、海の方向へと飛び出す。れみも飛行して姉を追いかけていく。

空を飛べない鬼子も建物から建物へと飛び移りながら二人を追いかける。

「待ちやがれぇぇぇ!!」

追いかける剛強鬼。その脚力で、大地が揺れていた。


しばらく飛んでいき、海へ辿り着く。れなとれみは海上をある程度進んだところで止まり、鬼子も砂浜で足を止めた。

すぐに追い付いた剛強鬼にれみが聞く。

「何で獄炎刀を狙うんだ!」

「てめぇらに関係ねぇ!!悪鬼の力、見せてやる!」

剛強鬼は拳を振り下ろす。

すると砂浜の砂が空中に舞い上がり、鬼子の視界を封じる。

その隙に獣の下半身で蹴りをぶちかまし、鬼子をれなの方へと吹っ飛ばす!

間一髪、れなは鬼子を受け止めたが、口から血が垂れていた。砂浜をよく見ると、鬼子が吹いた血が。

「…私は大丈夫。それより、来るわよ!」

鬼子が真正面を指差す。

剛強鬼が凄まじい勢いで海上へと飛び出し、れなたちへ拳を振り下ろそうとしてきた!

れなとれみは後ろに飛行してかわすが、拳が海面にぶつかると同時に広範囲に衝撃が放たれ、荒波が嵐のように吹き荒れ、殴った海面に穴が空いてしまう。

鬼子と獄炎刀を抱えていて動けない姉の代わりに剛強鬼へ突っ込むれみ!

勢いよく足を向け、急降下して蹴りを決める!

一発目の蹴りが当たると同時にひたすら足を突き出し続ける。その勢いで剛強鬼は少しずつ動いていく。

「チビのくせにやるな…だが…!」

剛強鬼は両腕を振り上げる。すると、振り上げた勢いで生じた衝撃波で海面が盛り上がり、れみの上から落ちてくる!

れみは頭上から海水で叩きつけられ、視界が悪くなる。

視界に押し寄せる輝く海水にハッ、と体が反応し、急いで後退する。

直後、れみの目の前に赤い拳が現れ、拳圧で吹っ飛ばされる!

危なかった。鬼子が蹴飛ばされるのを見てたからこの不意打ちを察知できた。

飛ばされつつも、ダメージは受けなかった。それを見て、鬼子が微笑む。

「流石貴女の妹ね。私も動けるわ」

「え、でも鬼子は飛行能力持ってないから、今動いたら危ないよ!…え、何そのドヤ顔」

鬼子は一瞬れなにドヤ顔を見せると、腕からスルリと抜け出し、海へと落ちていく。海中に潜り、姿を眩ます鬼子。

巨体の剛強鬼は両足の膝程しかない水位だが、鬼子は全身が隠れる。

「ど、どこに消えた!」

剛強鬼はまた海面を殴ろうとするが…。

拳が当たるまさにその直前、突如海中から飛び出した鬼子が剛強鬼の腕を殴りあげた!

買い物中だったのでいつもの武器である鎌は持っていなかったが、悪鬼を切り裂ける程の硬度と重量の鎌をいつも振り回しているのだ。腕力にも自信はある。

剛強鬼は腕に走った衝撃でよろめく。鬼子が飛び出した事と剛拳鬼の拳が間近まで飛んできた事で、海面も一層荒れていた。

その隙を見たれなとれみは直ぐ様剛強鬼へ飛行していき、両足で蹴りをぶちかました!

そして、れなが手の平を向け…。

「オメガキャノン!」

手の平から飛び出す青い破壊光線!

青い光に包まれる剛強鬼!


「くそ…!」

光に包まれながらも、剛強鬼は足を振り下ろし、今までにない勢いで海水を周囲に散らす。

顔を覆う三人。

海水は、実に二十秒程上がり続けていた。

「…あっ!」

海水が無くなる頃には…剛強鬼は消えていた。

海水の勢いでオメガキャノンのエネルギーを消し飛ばしたと言うのだろうか。

だとすれば…単なる力だけの相手ではない。

「できればもう戦いたくないわね」

鬼子は全身の力を抜いた。





「申し訳ございません!姫様!!剛強鬼一生の不覚!!」

…悪鬼の城にて、玉座に腰かける亜華魔姫に土下座する剛強鬼。

勢いが良すぎて城が揺れている。亜華魔姫は腰かけつつも若干体を前に倒しながら手を向け、その勢いを止めた。

「良い。獄炎刀をやつらが持っているという情報を確定できただけ上出来だ。入手はもう少し先へ回そう」

「ありがとうございます!!」

また勢いよく頭を下ろす剛強鬼。…天井から埃が舞い落ちる。

「獄炎刀…あれを一刻も早く手に入れなければならない。このところ人間の動きも活発化している。…人間は恐ろしい。どんな兵器で我々を潰しに来るか分からん」

亜華魔姫の赤い目は、何か嫌なものを感じているようだった。

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