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憑依能力で打ち破れ 棒鬼 紙毒鬼

事務所にやって来た鬼子と葵は、目の前のソファーに座ってる妖姫を見ながら唸っていた。

妖姫は居心地が悪そうに目を細めている…。


以前の妖姫の憑依能力…あの能力についてだ。

あれを利用すれば、これからの戦いもかなり楽になると見ていたのだ。

だが妖姫に頼んでもやり方が分からないと首を横に振るばかり。

以前葵に憑依した際には葵目掛けて飛び込んでいたので今度も葵と鬼子目掛けて飛び込んでもらったのだが、二人を頭突きでぶっ飛ばしただけで何も起きなかった。


「でも、何とかすればできるはず!」


葵と鬼子は妖姫を連れて森へ向かう事にした。

最近森に悪鬼の目撃情報が相次いでいる。彼らの撃破ついでに、妖姫の能力も発動できないかと彼女を連れてきた。


森はいつも通り平和に見えるが…いつもいつも平和そうに見えて何かしらトラブルが起きるものだ。

もしかすると強敵が潜んでいるかも…葵は持ってきたショットガンを構え、鬼子も鎌を構える。

妖姫はあくびをしながら二人に続く。

「早く帰ってメロンパンを食べたいのじゃー!!」

突然大きな声を出す妖姫。

こんな所でこんな大声を出されてはたまったもんじゃない。慌てて葵が妖姫の口を塞ぐ。

その声に反応したのか、突如草むらが揺れだした。

鬼子が鎌を向ける。

「誰!?」



…現れたのは、ドクロと粉砕男だった。

粉砕男は手を振るが、実は粉砕男に恋心を抱いているドクロは、何というかうっとりしていてこちらに目が向いてない。

「実は俺達も調査に来てたんだ。悪鬼が出没してるらしいしな」

やはり、最近になってやたら悪鬼が現れるようになったらしい。

葵、鬼子、ドクロ、粉砕男、妖姫…やたら大人数になったが、悪鬼は発見できるだろうか。

思えば悪さをしてる悪鬼を探す、というだけで特に大きな目的もない。

漠然とした調査だった。



…しかし、悪鬼は意外と早く現れた。

森の奥地に辿り着いた時、動物達を追い払いながら細身の青鬼が地面を探っているのを発見した。

背中には棒が突き刺さってる。どうやらこういう身体構造の悪鬼らしい。

動物を追い払う様を偶然発見した一同。

葵が声をかける。

「ちょっとそこの青鬼。動物達のスペースとってんじゃないわよ」

「ぁあ?」

青鬼は振り返り、背中の棒を引き抜いてこちらに向けた。

「この棒鬼(ぼうき)様に向かって何を言いやが…何で何で…」

汗ばみながら後ずさる棒鬼。

…状況判断ができるやつらしい。目の前にいる五人もの戦士達が、自分一人を睨んでいるのだ。

棒を向けながらも女々しい動きをしながら尻餅をつく棒鬼。特に粉砕男は身長二メートル以上の筋肉男。こんなのに見下ろされれば誰でも怯える。

葵と鬼子が顔を見合わせる。これは、戦わなくても悪行をやめてくれるタイプかと思ったのだ。

ドクロは…やはり粉砕男をだけを見てうっとりだ。

「お、俺はただ…亜華魔姫様に花を差し上げようと思って…」

何だ、と妖姫は棒鬼に歩み寄る。

そして、懐から紫の花を取り出す。

よく見ると紙でできている。妖姫が作った工作だ。

「わらわが育てた花じゃ。光栄に思うが良い!」


…それを見て、棒鬼はニヤリと笑った。

気づかれないように、指を鳴らす。


…すると、妖姫の手元の花から何かが吹き出してくる。

…黒い毒ガスだった。

「え!」

花を落とす妖姫。だがこれは本当に紙の工作なはず。毒を仕込む事などできないはずだ。

「お、おい見ろ!」

黒いガスが場を包むなか、粉砕男がある方向を指差す。

そこには、茂みに隠れる紙のような体の何かがいた。

四角い紙の体にタラコ唇の顔、体色は紫で所々に赤い水玉模様の毒々しい姿。

そいつに目を奪われてる一同目掛けて、棒鬼は一人一人に棒を打ち付けてきた!

「ぐわ!!」

全員が声をあげ、急いで立て直す。

棒鬼は棒を地面に突き立て、得意気だ。

「何て運の悪いやつらだ。この紙毒鬼(しどくき)は紙の魔力を毒に変換できるのだ。限られた戦法だが、その分毒の威力は強烈だぞ!」

アンドロイドである葵は平気だがその他のメンバーは毒ガスにやられて膝をついていく。

やはり妖姫もそうだった。悪霊なのに毒にやられ、仰向けに倒れてしまう。

大笑いしながら棒を振り回す棒鬼。葵は先に紙毒鬼から倒そうと、棒鬼の攻撃をかわしながらショットガンに派手な音を叫ばせる。

だが紙毒鬼は平べったい体を活かして楽々かわしてしまう。葵は近づくが、紙毒鬼は見た目どおりの素早さだった。

凄い勢いで逃げ出し、葵が追いかけても全く追い付けない。

今の状況、毒を食らってない事もあり、葵だけが頼りなのだ。逃がす訳にはいかない。

こうなったらと葵は一旦立ち止まり、ショットガンを構えて慎重に発砲する。

「させん!」

それを見た棒鬼が棒を回しながら弾を弾いてしまう。

そのまま葵に接近し、棒を振り下ろして攻撃してくる!

葵は避けながらも中々手出しができずに歯を食い縛る。


…そんななか、妖姫は皆を助けようと懸命に考えていた。

目の前には倒れる粉砕男…。

「ぐっ…何でも良い!どうにかするのじゃ…!」

妖姫は地を這いずる悪霊らしからぬ姿で粉砕男に近づき…勢いよく飛び込んだ!

粉砕男の腕に勢いよく頭をぶつける妖姫。


…突如その場が光に包まれた。




…そして。


気づくと妖姫は、粉砕男の背後に浮いていた。

粉砕男は先程までの息苦しさが嘘のような勢いで立ち上がり、自身の回復に驚く。

「これは…!まさかこれが妖姫の憑依能力か!?」

試しに腕を振るう粉砕男。すると、その勢いで周囲の毒ガスが退けられていく。

「!よし!」

粉砕男は両手を広げて勢いよく回転しつつ手から魔力を放つ!後ろの妖姫も回されて悲鳴をあげている。

回転する事で広範囲に拡散される魔力が毒と中和され、消えていく。

ほんの数秒で、毒の霧は消え去ってしまう。

「妖姫、この花を踏むぞ!すまん!」

「構わないのじゃ!」

粉砕男は、妖姫が作った工作の花を踏み潰してみせた!

大口を開く紙毒鬼と棒鬼。

紙毒鬼は追いかけてくる葵から逃げながら泣きじゃくっている。紙がないと何も攻撃手段を持たないようだ。

ヒラヒラな体を押さえ込み、紙毒鬼を無力化する葵。

棒鬼は棒を握りながら怒りに震える。

「お前らぁ!何てやつらだ!」

粉砕男目掛けて棒を振り下ろす棒鬼!粉砕男は全身に力を込めて胸で受ける!

胸筋の硬さで衝撃が発生、棒を伝って棒鬼へダメージが走る。

全身に電気が走ったような衝撃に襲われる棒鬼。

今までのお返しとばかりに、粉砕男の拳の連撃を浴びせられる棒鬼!

悪鬼狩人である鬼子も全く出る幕がない程完璧な攻撃だった。

最後の一撃として繰り出されたのはアッパーカットだった。

振り上げられた拳に打ち上げられ、派手に吹っ飛んだ後、棒鬼はあっさりとダウンした。

「おぉのれ…ぼぼぼぼーう…」

謎の台詞を残して、棒鬼は気絶した。

紙毒鬼はそんな棒鬼を咥え、空へと逃げていった。


…戦闘が終わると、粉砕男から妖姫が分裂した。

「…なるほど。これは確かに凄い力だ」

粉砕男は、不思議そうな顔の妖姫を見て呟いた。

妖姫は周囲をキョロキョロと見渡した後、突然ドクロに飛びかかった!

さすがにこの奇行には対処できず、ドクロは抱きつかれ、押し倒されてしまう。

ドクロの上に乗りながら、妖姫は頭を掻く。どうやら飛びかかれば取り憑けると確信したようだ。

葵は腕を組みながら答える。

「もしかして、追い詰められないと取り憑けないのかしら?」

「可能性あるな」

粉砕男が頷くと同時に、周囲の一同も大きく頷いた。

葵はここまで同意されるとは思ってなかったのか、動揺してるようだった。


「よーし!ならば普段の状態でも取り憑けるよう、頑張るのじゃ!今すぐ修行なのじゃ!」

今度は葵に飛び込み、やはり押し倒す妖姫。

その日は、妖姫のタックル合戦だったという。


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