闇姫が修行してるど アイスドラゴン クロトカッゲ
「どうしたの闇姫どうしたどうしたどうしたどうした」
テクニカルシティ近くの美しい草原にて。
景色とは真逆の野蛮な光景が展開されている。
散歩中のれな、ドクロ、テリーに突然襲いかかってきた闇姫。
れなが早口で闇姫の拳を受け止めながら後ろへ下がり続ける。
草を散らし、空の雲も拳圧で遠ざかっていく。
ドクロとテリーが闇姫目掛けて黒い光弾を発射してれなを援護。
闇姫は一旦連打をやめ、後ろに飛び跳ね、背中から灰色の翼を広げて急降下してくる。
三人は間一髪かわし、次の攻撃に備えたのだが…。
闇姫はそのまま空へと飛んでいってしまった。
「え、何がしたかったのあいつ」
ぼんやりと空を見上げるれなと、骨の腕を組むテリー。今回ばかりは、闇姫が何を考えてたのかさっぱり分からなかった。
…闇姫が次に向かったのは、遥か北にある氷の大陸。
吹雪が吹き荒れるが、闇姫は風圧で吹雪を押し退けていく。
しばらく飛んでいくと、きらびやかな氷の大地に巨大な何かが歩いている。
…氷のように青白く光る体を持ち、白い翼を持つドラゴンだ。猛烈な吹雪のなかでも堂々と歩いている。
近づいてくる闇姫に気づくと、大口を開いて口から青い冷凍光線を吐いてくる!
闇姫は横向きに回転して回避、そこから急加速し、ドラゴンの胸元に拳を叩き込んだ!
勢いよく吹っ飛ばされるドラゴンの巨体。近くにあった氷山に叩きつけられ、そのまま気を失う。
滑りやすい地面の上でもしっかり着地する闇姫。
物足りなさを感じながら、吹雪のなか黒いツインテールを揺らしていた。
「…こんなものでは亜華魔姫の刀には完璧に対処できん」
悪鬼達は厄介な存在だ。軍の為にも必ず黙らせなければならない組織…。
前回は刀を振るう亜華魔姫にも対抗できたのだが、やつのあの目…必ずリベンジに来るはずだ。
勿論、更なる強さを身につけて…。
その時の為に、闇姫も更に力をつけようと必死だった。
握られた自分の拳を見つめる闇姫。
「…尺だが、やつに頼るか」
ある人物の顔が浮かび、暗い空へと飛び去っていく。
れなたちは、先程の闇姫の襲撃について色々と推測していた。
「修行の為だった」という正解がドクロから出てきたが、その後のれなの「イライラしてたから」という意見で全てが台無しに。
ドクロも何故かそれに納得してしまう。
「なるほどイライラしてたからね」
「うん!あいつ背低いからいつも部下に見下されてイライラしてたんだよ!他にもドーナツを食い過ぎたとか私への愛情表現とか。まああんなやつの愛情など、こっちからお断り!ゴミ箱へポイ!カレーは辛い!だがな!ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
なぜか闇姫が攻撃してきた理由について面白おかしく語るれな。
…が、その話を聞いて黙ってられない者が偶然にも現れた。
突如地面に影が現れたかと思うと、三人の目の前に何かが勢いよく降りてくる!
吹っ飛ばされそうになる三人だが、何とか堪えつつ突如現れたそいつを睨み付けた。
現れたのは、黒いトカゲのような怪人だった。手には長い槍を持っている。土砂のなか、背中を丸めて槍を構え、ポーズをとっている。
「俺はクロトカッゲ。お前ら…闇姫様を侮辱するのは許さんぞ…!」
勢いよくれな目掛けて槍を突き出し、問答無用で襲ってくるクロトカッゲ。れなは両手を振りながら後ずさって回避しまくる。
「や、闇姫の部下!?な、何でいきなりこんな所に!?」
「この辺をパトロールしてたんだよ!!たまたまお前らの会話を聞いたんだ!!闇姫様を侮辱しやがって!命で償えやああああ!!」
れなからドクロとテリーにターゲットを切り替えるクロトカッゲ。れなと同じように避けまくる二人。
「はあああ!?私達は何にも言ってないのに!!」
こんなのたまったもんじゃない。更にクロトカッゲは槍攻撃から唐突に尻尾を叩きつける攻撃に移行し、二人を転倒させ、更にそこから槍を突き立てまくる。
兄妹仲良く転がりながらかわす二人。
「闇姫様はなぁ!今必死に修行をなされてるんだよ!」
立ち上がる兄妹。かわすと同時に、クロトカッゲの言葉にしっかりと耳を傾けていた。
「修行?何でまた…」
「何だ知らんのか!悪鬼達が本格的に行動を始めているんだ!闇姫様は奴らを潰すために滅茶苦茶頑張ってるんだよ!」
クロトカッゲは槍を振り回す。すると黒い風が巻き起こり、三人を巻き込んでいく。
飛ばされながら三人は叫ぶ。
「つまり修行を頑張ってるのか〜〜!?」
「そうだ!」
クロトカッゲは飛ばされて動けない三人に、槍から放つ黒い波動で攻撃した!
撃ち落とされる三人。
中々多くの技を持ってるやつだ。れなが起き上がりながらクロトカッゲに聞く。
「でも…あんまり認めなくないけど闇姫は強いよ。悪鬼達なんてチョロいんじゃ…」
「意外とそうでもないのさ。生意気な事に悪鬼の現首領の女、闇姫様のほっぺに傷をつけたらしい…!」
悪鬼の首領…そういえばこの前、鬼子から聞いた。
鬼子が一度対峙し、かなりの苦戦を強いられたという悪鬼。…確か名前は亜華魔姫と言ったはずだ。
クロトカッゲは槍を左手で持って地面に突き立て、右手は拳を握っている。
震えだし、突然大きな声を出すクロトカッゲ。
「うぬあああ!!こうしてはおれん!闇姫様に傷をつけたクソ女め、必ずこの俺が串刺しにしてトカゲ焼きにしてくれる…!!その前に!」
槍を引き抜き、三人に向け、突撃してくる!
「闇姫様をバカにしたお前らを先に始末してやる!」
物凄い勢いで迫ってくるが、三人は迷わず分散、クロトカッゲはれなを最優先に狙ってるようでドクロとテリーには見向きもせずれな一人を狙う!
しかし、ドクロとテリーはこちらに背を向けたクロトカッゲ目掛けて黒い光弾を連射、バランスを崩させる。
そこかられながクロトカッゲへ向かっていく。クロトカッゲは急いでバランスをとり、槍を振るう!
れなはその瞬間を見逃さなかった。
前に向かって一瞬飛び跳ねて勢いをつけ、槍に回し蹴り!
槍は付け根からへし折れ、地面の草に受け止められて柔らかく落ちた。
回し蹴りの勢いのままに更にもう一回転し、クロトカッゲの首もとに二発目の蹴りを叩き込んだ!
「ぐはっ…」
地に伏すクロトカッゲ。
れなは右腕を振り上げてガッツポーズを決めた。
「…くそっ!闇姫様に膝枕してもらってくる!次会った時はお前らをバラバラにして肥料にしてやる!」
クロトカッゲは勢いよく空の果てへと飛んでいった。
何とか勝てたようだ…。
「…闇姫でも苦戦する相手がいるのね」
不安そうに呟く妹のドクロにテリーが言う。
「話を聞く限り刀の達人のようだな。闇姫達も本格的にやつらの対策を進めてるに違いない。俺たちも負けてられないな!」
拳を握りあう兄妹を見て、れなも更なる修行にかかる事を考えていた。
…脳裏には、あの杖が浮かんでいた。




