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3勢力が集う地

黄色い花が咲き乱れる美しい草原地帯に、磨かれた墓石が並べられた墓地があった。


…鬼子と火竜が、ある一つの墓石の前で両手をあわせていた。

「お父さん、お母さん。私はまた新たな敵と戦う事になるかもしれないわ。だけど…きっとまた、生き延びてみせる」

鬼子の言葉と共に、二人は両手を戻し、目を開く。

火竜は墓石に青い花を添えながら鬼子に聞いた。

「お前の鬼人になる能力って確か…」

「そ。悪鬼の力に溺れたお父さんは最終的に自らも悪鬼になったわ。でも最後は分かってくれた。命を落としたお父さんの魂の力が、私の邪神シンの魂と結合して鬼人の力を目覚めさせた…」

改めて凄い人生だな、と火竜は目を細めながら腕を組む。

この際だから、と鬼子は火竜に一つの目標を教えた。

「私達は悪鬼を懲らしめるのが仕事だけど…私個人の目的として、私の人生を壊した悪鬼テロの連中を突き止めたい。…できるなら、あの時お母さんを殺した連中を一発殴ってやりたい」

声のトーンが低くなる鬼子。火竜は、腕を組んだまま近くの木に寄りかかる。

「…俺が悪鬼狩人になった理由は単純だ。人々を苦しめる悪鬼を倒したい。お前と比べるとちっぽけだけど、もしお前が求めるなら、俺もそのクソ野郎共を追ってやるさ」

「単純だなんて、そんな事ないわ。火竜は立派よ」

笑いあう二人。もう長い付き合いとなっていた。


その頃…。とある岩山にて、二つの組織が争っていた。

紫の鎧を身に纏う騎士達と、赤い小鬼達が凄まじい勢いで迫りあい、土砂を散らしながら衝突している。

小鬼は金棒で騎士の頭を狙い、騎士達は盾でそれを防ぎ、剣で小鬼の頭を叩き斬る。

上空では、二人の戦士が激しくぶつかり合っていた。

紫の球状の体の悪魔…闇姫軍四天王のデビルマルマンと、スキンヘッドに黄色い角を生やし、紬を着た老人悪鬼、叡光鬼だ。

デビルマルマンの拳の一撃を、刀で受け止める叡光鬼。

「あなた、さっきからぶつかったり離れたり、行動パターンが見え見えですよ」

煽る叡光鬼だが、デビルマルマンはそこから翼を激しく羽ばたかせ、叡光鬼を吹き飛ばし、高速飛行して突撃する!頭突き攻撃だ。

「わざと単純な動きをしてお前の気を引いたんだよ!」

ニヤリと笑うデビルマルマン。叡光鬼も痛みに歪みつつもはっきりとした笑顔を見せつける。

叡光鬼が刀を振り回し、デビルマルマンは手足でそれを受け止め続ける。




そんな激闘のなか、岩に隠れながら何人かの人間がある物を持ち運んでいた。

「うおお…見ろよあの戦いを。すげえな」






赤い血管のような模様がついた不気味な石を持ち運んでいる。。アーマーを着た二人の男が重そうに汗を流している。

岩の隙間から戦いを見守りながら、えっさほいさとどこかへ持ち込もうとしている。

「これが地獄石か。こんな石役に立つのか?」

「さあな。でも理由もなしにこんなキモい石集めさせないだろ」

今戦いに夢中な連中には気づかれない、そう思っていたのだが…。


「何をしてる?」

突然声が聞こえてきたものだから、二人は地獄石を落としてしまった。

派手な音をたてて地面に落ちる地獄石。


二人の背後には、真っ黒な球状の体に四本の腕を生やした小さな悪魔が立っていた。

二人の男は一瞬だけ顔を見合わせ、悪魔を見下した。

こんな小さい悪魔なら何て事ない、四本の腕にさえ気を付ければ良いと思ったのだ。

更にこの二人はこう見えてかなりの実戦経験もあり、低級の悪魔の知識もある。

ポケットからナイフを取りだし、悪魔に向ける人間達。

悪魔は四本の腕のうち、下側の腕を構え、上の手の指を鳴らす。


「おらあああ!!」

人間達が威勢よく飛び出す。それに対し、悪魔は上の手を軽く振るった。

人間達はその一撃だけで派手に吹っ飛ばされてしまう。

「ぐああ!!」

人間達が地面に落ちる前に悪魔は下の右手で地面を殴る。

すると、地面から凄まじい勢いで岩が飛び出し、人間達を打ち付けた!

人間達は地面に叩きつけられる。これでも極限まで加減していた。

「骨、ニ、三本は折れたな。後で救助でも何でも呼びやがれ」

ふと悪魔が岩の向こうの戦場へ目を向けると…。


膝をつく叡光鬼に、紫色に輝く手を向けるデビルマルマンの姿があった。周りには剣を向ける騎士達、足元には地に伏す小鬼達。こちらも余裕なようだった。

刀を地面に突き立てて立ち上がる叡光鬼。その顔には、依然として笑みがある。

「流石悪魔…。少し油断していましたよ…」

「この岩山は俺達闇姫軍が貰い受けてやる。とっとと消えればお前の首は胴体とサヨナラしなくて済むぜ」

潔い叡光鬼は、刀を地面に落とし、両手をあげながら軽く頷く。

「仕方ありません。ここは諦めましょう。まあ惜しくはありません。他の地帯にも地獄石はありますしね…」

霧のように姿を消す叡光鬼と小鬼達…。




「デビル、終わったか?」

「ああ。…バッディー、それは何だ?」

上の手でVサインを送りながら、下の手で奇妙な石を持ってくるバッディー。血管のようなものが浮かび上がった世にも不気味な石を見て、デビルマルマンは嫌な顔をした。

「『地獄石』だそうだ。大切そうに人間達が持っていたぞ」

地面に置かれた地獄石を、騎士達は興味深そうに見つめていた。

何やら嫌な魔力を感じる石だった。何だか、体に直接悪寒が流れてくるというか、体の内側の何かが激しく拒絶するような魔力だ。

こんな嫌なものを、人間達はなぜ大切そうに持ち歩いていたのだろう。

あの二人に聞きたいところでもあるが…あいにく二人は気絶している。



「バッディー様!デビル様!それと同じ物と思われる石が!」

ドクロマークに手足を生やしたような姿の、闇姫軍の下級兵士達が全く同じ石を持ってヨチヨチと走ってきた。

ふーむと唸るバッディー。

彼が持ってきてくれた地獄石も同じように不気味な魔力が漂っている…デビルマルマンは羽ばたいて石をくまなく観察しながら案を出した。

「…この石は城で要調査が必要だな」

「という事はガンデルの世話になる訳か。めんどくせえ…」

バッディーは四本の腕を地面につけ、丸い体で転がるように寝転がった。

その後、発見した地獄石はデビルマルマンとバッディーが持ち運び、部下達を休めながら城へと帰還した。



そして、闇姫軍一の科学者、ガンデルをはじめとした研究員達の総力により、地獄石の徹底解剖が開始された。

デビルマルマンとバッディーに石を渡されたガンデルは、見た事のない石を前に蛙面に満面の笑みを浮かべながら研究道具でお手玉を始めた。

「素晴らしい!!この震えるような魔力!悪用すればあらゆる文明を根絶やしにできる予感がするよ!」

「相変わらずのサディストクソガエルめ…」

デビルマルマンは腕を組んで呆れ顔。背中の翼も脱力している。


それから約一時間程…。

…さすがガンデル。一時間の中で、早くも様々な事を明らかにしたようだ。

「おーまたせー、皆見ろ見ろー!!」

白衣を激しく振るいながら、城の廊下を走るガンデル。その手には地獄石が抱えられていた。

回りながら地獄石を振り回すガンデルに兵士達は顔をしかめていた。

飾ってある花瓶を倒しそうになるガンデルを見て、バッディーは慌てて四本の腕で彼を押さえ付けた。


「…ほほん。では…この地獄石について解説していくよ」

落ち着いたガンデルはデビルマルマンとバッディーを横に並べ、ポケットから地獄石をスケッチしたホワイトボードを出し、解説を始めた。

「まずズバリ言うと、これは地獄の魔力が固まった結晶体だね!」

「地獄の…というと、悪鬼の魔力という事か?」

デビルマルマンの問いに、ガンデルは首を横に振るう。

「地獄の魔力と悪鬼の魔力は別物だよ。そもそも地獄は場所で、悪鬼は生物だろ?根本的に違うじゃん。トイレとクソしてる人は同一じゃないだろ?」

「良いから続きを話せ!そういうノリうざいんだわ!!」

怒鳴るデビルマルマン。ニヤニヤしながらガンデルは続けた。

「…で、この石は地獄の魔力が込められている石だから、何かしらの強力なエネルギーで石を振動すれば石の魔力が放たれ、空間を刺激し、空間の穴を開く可能性がある。そしてその空間の穴の行く先は…地獄だね」

つまりこの石の魔力を解放すれば、現世と地獄が繋がってしまうという事だ。

そんな危険な物をなぜ人間が…と、デビルマルマンは考えたが、バッディーが考えを見透かすように言った。

「どうせクソ人間が考える事だ。地獄の力を使い、モンスターの国やら何やらを制圧して活動区域を広めようとでも考えてんだろ。で、その地獄の力を制御できずに自分達が滅ぶのが定番のオチだ」

なるほど、とデビルマルマンはバッディーを見た。ガンデルも頷いて納得した。

「ま…そんなところだろうね。人間は醜いよ。現に悪鬼を生み出してるのも人間の悪意な訳だしね」

しかしどんな目的があるにせよ、地獄の力などを使われれば闇姫軍にとっても脅威となりうる。

人間に奪われるより先に地獄石を奪わねばならない。

幸い、一つや二つでは空間に穴を空けられる程の魔力にはならないらしい。

デビルマルマンが羽を動かし、低空飛行しながら二人に言う。

「闇姫様に俺達で申請しよう。人間はまだしも、地獄石を放置したら危険だ。不安要素は潰していこう」

頷く二人。

三人は、城の暗がりへと歩いていった。

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