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55.先生、後悔する


「えっ……と、今日からこの二年三組の担任になりました」


 黒板に自分の名前を書いて、振り返る。

 四十人近い生徒達の好奇に満ちた視線に気圧されそうになるのをなんとか堪え、堂々と胸を張って自己紹介をする。うん、まあ、おそらく好感触。


「今の二年生は私の授業受けたことないよね。だからまずは皆の顔と名前覚えるところからなんだけど……実は予習してきたんだ。出席ついでに答え合わせと自己紹介、おねがいしていいかな。まずは1番、えーと、相田(あいだ)祐樹(ゆうき)さん」

「はーい!」


 出席簿を開いて名前を呼ぶと、野球部のムードメーカーとして皆から慕われてる男子が立ち上がった。




 春。出会いと別れ……そして学校では、新しくクラスが編成される季節。

 私は中学校教師になってまだ二年目のぺーぺーなのに、なんで突然ほぼ関わりのなかった二年生の担任を持つことになったのか。それは。


「いやあ、先生も大変ですねえ! まさか川上(かわかみ)先生が産休に入っちゃうなんてねえ」

「ははは……」


 ……元々担任をする予定だった先生が、急遽妊娠したためだった。

 このままでは中途半端な時期に担任が変更して、生徒にも新担任にも負担がかかる。それなら最初から私に担任を持たせた方がいい──というのが学校側の判断だった。


「だけど本当に大丈夫ですかね……私、今の二年生とほとんど関わりないですよ。三年ならまだしも……」

「ま、大丈夫大丈夫! そう気負わないでください! 僕も副担任として精一杯サポートしますから!」

「はあ……」


 副担任であるベテランの駒田(こまだ)先生は、体育教師を絵に描いたような熱血漢。なんでこの人が副担任で私が担任なのかな。普通逆だろ……。


「あ、でも残業と休日出勤はね、僕無理なんで!」

「あ、はい、そうですよね……」


 ……まあ、こういうところだろうな……。


 年度はじめのホームルームを終えて、駒田先生と一緒にとぼとぼと職員室へ帰る。

 昼休みを迎えた生徒達が、新学期の空気にはしゃぎながら廊下を駆けていく。なんて眩しい笑顔だ……。一体私はいつから春がこんなに憂鬱になってしまったのか……。

 いや、落ち込んでいても仕方ない。いずれは学級担任を持つのが夢だっただろう。そう自分に言い聞かせてはみるが、夢とかいうふわふわした言葉でまとめるにはどうにも現実というやつは厳しかった。

 委員会と掃除当番を決めたから、次のホームルームでは明日の親睦遠足の班決めて……やることが山積みすぎる。ため息をつく、と。


「駒田先生」


 前から向かってきた、長い黒髪の女子生徒……たしか、私のクラスの生徒で、さっき推薦で学級委員長になってくれた子。白木(しらき)(みお)が、プリントを抱えて私達を呼び止めた。

 首を傾げる私を置いて、駒田先生が「おー、白木!」と前に出る。


「言われてた自己紹介シート、集めました。人数分、確認しておいてください」

「いや、白木が集めたんだろう? それなら安心だ。そのまま掲示まで頼めるか」

「分かりました」

「っえ、ちょ……っ」


 私が口を挟もうとしたら、駒田先生が被せるように「じゃあ頼んだぞ!」と白木さんを送り出してしまう。嘘だろ、この人……。


「自己紹介シートの回収も、掲示も……教員側の仕事ですよね」

「いやいや、いいんですよ! 白木はしっかりしてるし、こういう場面では頼って!」


 いや、でも新年度始まって初めての昼休みだぞ!? 新しい友達と話すとか、クラス離れた友達に会いにいくとか、色々忙しいだろ生徒側も!

 しかし私は二年目、駒田先生はベテラン。何も言い返せず、「そうなんですね」とだけ言って会話を終わらせた。




 駒田先生の言うとおり、白木澪はしっかりしていて、冷静沈着。生徒どころか教師にも頼られる学級委員長だった。

 年度が始まって一ヶ月も経つ頃には。


「委員長! 英語の予習うつさせて!」

「……はい」

「ありがと! まじ助かる!」


 私も、白木さんのポジションというか、役割がだんだん分かってきて。


「やばっ、今日日直なのに日誌書いてない!」

「え!? エミ今日塾やん! やばくない?」

「やばっ……委員長書いてー!」

「……適当でいいなら」

「いい! ありがとー!」


 皆困ったらまず白木さんに頼るんだな、という認識は。


「あっ、黒板消してない!」

「委員長、忘れてるよ!」

「……消しておくね」


 ……なんだか、皆で白木さんを利用してやいないかという居心地の悪さに変わっていった。

 ……もちろん注意するべきだし、何度かやんわりと他の生徒には注意した。白木さんの負担も考えようねと。

 しかし、それを見ていた駒田先生が「白木なら大丈夫ですって」と止めてくるし、今は平和を保ってるクラスを壊すのが怖い。

 何よりとうの白木さんが何も文句を言っていない状況で、私が勝手に口を出すのは憚られた。


 そんな、ある日のことである。


「絶対教室に落としてる……!!」


 放課後、私は教室に向けて猛ダッシュしていた。

 理由は簡単。今日は遅番で学内の施錠係だっていうのに、持っていたはずの教室棟の鍵をどこかに落としてしまったからだ。

 最後にあるのを確認したのは我が二年三組の教室! そこになければ正直詰み! 始末書どころか教室棟全部のシリンダーの弁償代を払わされかねない!


「鍵ーーーーーーーッ!」


 生徒が誰もいないことをいいことに、怒鳴り込む勢いで教室の引き戸を開く、と。


「えっ」


 たった一人で箒を握り、教室の掃除をしていた白木さんの、涙に濡れた目と目が合った。


「……先生」

「っあ、白木さん、あの、私……」

「……鍵、ですか? 落ちてたので、教卓に置いておきました」

「あっ……ありがとうございます……」

「それじゃあ先生、さようなら」


 白木さんは涙を拭おうともしないで、そう言って掃除を再開する。あんまりにも動じないものだから、私も一瞬ああそういうもんかと納得しかけて。


「いや違くない!?」


 慌てて白木さんに駆け寄った。


「何ですか騒がしい……先生、鍵取りに来ただけなんでしょ。早く職員室に戻ってください」

「冷たっ……いやそうじゃなくて、何泣いてるの!?」

「花粉症です」

「もう五月だよ!!」


 ポケットを弄ってティッシュを取り出す。白木さんは一瞬躊躇った後に、私から奪い取るようにティッシュをとって盛大に鼻をかんだ。


「白木さん、教室の掃除当番じゃないよね? 他の人達は? なんで一人でやってるの」

「……皆は用事があるらしいです。塾とか、部活とか」

「だからって白木さんが……」


 白木さんはそれ以上何も言うつもりはないらしい。ぷい、とそっぽを向くと「ティッシュありがとうございました」とだけ言って、一人で掃除に戻ろうとしていた。

 その背中が、小さくて、切なくて。なんだか胸が締め付けられる。

 白木なら大丈夫、と駒田先生は言っていた。実際、白木さんは助けなんて求めていない。それでも。


「……白木さん、あと何したらいいの」

「へ?」


 袖を捲って、掃除用のロッカーを開ける。


「あとモップかけるだけ? やっとくよ。それで、次は押し付けられるようなことあったら先生に言ってください。ちゃんと注意するから」

「せ、先生」

「先生どーせ暇なんだから、気にしないで帰って帰って! あとやっとくから!」

「先生……それトイレ掃除用のモップです。教室用は奥にある2本」


 ずっこけた。同じところに入れとくなよ……。

 結局、一人じゃ満足に掃除もできない駄目な担任の私は白木さんご指導のもと、教室の掃除をすることになった。


「……小学生の時から、こんな感じなんです」


 もう暗くなってきた教室の中、まだ赤みの残る目を伏せて、白木さんがぽつりぽつりと話し始める。


 昔から「澪ちゃんはしっかりしてる」と言われると嬉しくて、なんでも引き受けてしまっていたこと。そのせいで気付いたら色んな人から仕事を押し付けられるようになってしまっていたこと。親もそれを自慢に思ってるみたいだから、今更やめられないこと。だけど、本当はずっと苦しいこと。


「たまに……全部断って、知らねー! うるせー! って怒鳴ってやりたい気持ちもあるんですけど」

「うわっ、びっくりした。白木さんそんな大きい声出るんだね……」


 白木さんはモップを絞り終えると、ふう、と息をつく。


「……先生みたいに思ってくれる人がいるなら、少しは頑張ってみようかな……」


 初めて、白木さんが笑うのを見た。どこかぎこちない、下手くそな笑顔。なんだか悲しくて、歯を軋ませる。


「……いや、頑張っちゃ駄目でしょう……」


 白木さんが首を傾げた。


「今度からこういうことがあった時は、先生に言って」

「でも先生、注意したって別に……」

「それでも、さ」


 白木さんから受け取ったモップを、掃除用具入れに突っ込む。


「一人でやるより、二人でやった方が早いじゃん」


 白木さんが目を見開く。そしてまた、あの下手くそな笑顔で「そうですね」と言った。


 白木澪は、私にとってきっと大切な生徒だった。


「先生」

「うぉっ!? ……白木さん、日誌で人の背中突っつくのはやめてよ……普通に声かけてよ……」

「日誌の天候欄、今まで誰も書いてなかったんですけど今日駒田先生に突っ込まれて。過去まで遡って書くことになったので手伝ってください」

「まじぃ!? 全部薄曇りとかでいいでしょ!?」

「……先生」

「分かった分かった……」


 白木澪は真面目で。


「先生、駒田先生に体育祭のプログラムのホチキス止め頼まれました」

「はぁ!? するにしても体育祭の実行委員の仕事……白木さん学級委員長と兼任でやってんのか……」

「はい。この放課後の間に済ませちゃいたいのでさっさと資料室の鍵開けてください。先生も手伝いに来ますよね」

「分かったって……小テストの採点終わったら行くわ」


 心を許した相手には少し横暴で。


「先生はなんで先生になったんですか? 教員免許とった流れとかですか」

「嫌なこと言うね……ちゃんと小さい頃から目指してたの! うちの家、お父さんが高校の先生でお母さんが支援学校の先生とかで、まあそういう家系だったから」

「へえ……」

「何? 先生になりたいの? 大学紹介してあげよっか」

「いいです。私T大目指してるので」

「T大!? や、確かに白木さんの学力なら目指せる範囲だけど、またどうしてそんな難関に……」

「……勉強は嫌いじゃないし、両親が行けって言うので」

「ははー……大変だねえ」


 いつでも他人の期待に応えようと必死で。


「先生、授業で分からないとこがあるんですけど」

「はーい、なになに……いやいやこれ数学じゃん……私、担当教科は国語ですよ」

「でも高校受験突破してるじゃないですか」

「そんないいとこ行ってないよ! 先生N高だもん!!」

「大人が泣き言言わない。ほら、分かんないんなら教科書貸しますから、とっとと教えてください」

「すごい上から目線だ……」


 甘え下手な、どこにでもいる普通の女の子だった。


 駒田先生は七月を迎えた今になっても白木さんのことを「しっかり者でどれだけ頼ってもいい生徒」なんて思ってるみたいだけど、私から見ればとんでもない。確かにしっかりしてるけど愚痴っぽいし、皆から色々引き受けすぎてキャパオーバーになって混乱した状態で私に頼ってくる。

 白木さんと過ごしてる時。白木さんがより良い学校生活を送れるように考えてる時。私は、すごく楽しかった。きっとこれが教師のやりがいなんだと、そう信じて疑わなかった。


 ある放課後、二人で教室の掃除を終えた時。


「いやー、日が長くなったっていったってもう向こうの空は暗いね。危ないから早く帰りなさいね」


 そう言いながら教室の扉を閉めると、白木さんが不意に「先生」と声をかけてきた。


「……夏休みも、学校来ていいですか?」

「へ? いいけど、なんで? 夏期講習とかあんじゃないの」


 白木さんが微笑む。初めて見た時よりずっと自然に、柔らかく。


「……前は、学校が嫌いだったから……夏休みが待ち遠しかったんですけど……今はなんか、少し寂しくて」


 「寂しい?」と私が聞き返すと、白木さんは「あはっ」とおかしそうに笑った。


「私、先生がいるから最近は学校も、悪くないなって思えるんです」


 ……この時、私は照れ臭くて、「そうですか」とか適当に返したけど、きっと顔は真っ赤だったと思う。

 だって、すごく嬉しかった。きっとこの先、何があったって、この一言があれば先生って仕事を続けられるって思った。


「……まあ、楽しく通えることが何よりですよ……」

「照れてるんです? 先生」

「照れてない、照れてないから顔見ないで……」


 それなのに、私はこの信頼を、最悪の形で裏切った。




 学期末を目前に控えたホームルームでは、二学期が始まってすぐ行われる予定の文化祭についての話し合いが行われた。


「先生ー、なんでうちは展示とかそういうめんどいやつしかしないんですかー」

「別の中学、模擬店とかやってるって聞いたよー? うちもそういうのがいい!」

「はいはい、よそはよそうちはうちですからねー」


 文句を言う生徒達にそんなお母さんみたいな台詞を言って黙らせるが、まあ気持ちはわからんでもない。

 でも仕方ないのだ。一、二年は教室内で学習発表会的な展示をする。三年の有志がステージ発表。うちの中学はそう決まってるのだ。


「準備期間が短いんだもん。それに展示だって悪いところばっかりじゃないよ。学習って名目で好きなもの調べ放題」

「つまんねー!」

「ねー、オタクじゃないんだからさあ」


 うーん……不満噴出……。

 うちのクラスは特にそういう真面目なイベントに対しての意欲が低いタイプの生徒が多いのだ。教室の隅に座る駒田先生と顔を見合わせ、苦笑いし合った。


「お前らー、もっとやる気出せ! 中学二年生の文化祭、一回しかないんだぞ!」

「題材だけ決めたらね、先生も資料取り寄せたりするから」


 まあ、いくら不満を出されてもうちの学校はこうなので、としか言いようがない。

 「何かやりたい題材がある人」と声をかけてみるが、教室は静まり返っている。ああ、これは適当にこっちで例でも示してやるのが……。


「……これさ、白木さんに任せちゃったらよくね?」


 一人の男子生徒が、いいことを思いついたかのように言った。


「っえ」


 振り向いた時にはもう、クラス中の視線は白木さんに向いていた。


「そうじゃん! 委員長なら真面目だしさ!」

「ちゃちゃーっと調べてさ、やっちゃってよ! うちら文句とか言わないし!」

「模造紙10枚くらいだっけ? 夏休み長いし、余裕でできんじゃん!」


 いや、待て、おい。止めようと口を開いたら、何か言う前に「いいなあ!」と駒田先生が乗る。


「お前らに任せるのは不安だけど、白木なら安心だ!」

「コマセンひどくね!?」

「いやでも実際そーじゃん!」


 教室に笑い声が満ちる。まるで、これが一番平和なやり方だ、と誰もが言うように。だけど、中心にいる白木さんはふるふると肩を震わせていて。


「っちょ、みんな、あの……っ」

「白木! 白木もそれでいいよな!」


 駒田先生が問いかける。白木さんは、むっつりと黙り込んで、そして。


「っ…………う、ぅるせえっっ……!!」


 椅子を倒す勢いで立ち上がると、ひっくり返った声でそう言った。

 一気に皆が静まり返って、白木さんを見る。


「知らねえ……っ!!」


 真っ赤な顔。涙をいっぱい溜めた目。白木さんはいっぱいいっぱいで、それでも、何かを変えようとしていた。


「わっ……私は、あんた達の便利屋じゃないっ……!!」


 必死の覚悟で言ったんだろう。声がずっと震えていて、なんだかこっちが泣きそうになる。

 こんなに一生懸命なんだ。きっと、みんなの心にも響いて……。


「──────ふっ…………」


 誰かが、噴き出して。


「あははははははははははははは!」


 クラス中が、笑いに包まれた。

 えっ、なに、これ。


「白木さん何今の! らしくなーい!」

「ちょ、ちょ、オレ真似していい? ぅるせぇっ、しらねぇっ!」

「にてるー!」


 足先から冷えていくのを感じる。腹の底にどす黒いものが渦巻くのに、それをどうやって扱ったらいいか分からない。

 何か、何か言わないと。白木さんの方を見る。白木さんは、縋るように私を見ていた。

 私が、私だけが、今あの子を助けられる。


「皆……」

「白木、お前あんな面白いことも言えたんだなあ!」


 私が勇気を振り絞って出した声は、駒田先生の笑い声にかき消された。そうするともう、どんどん萎縮して、言い訳ばかりが脳内に溢れ出す。

 そうだ……この場を無理に収めなくたっていい。

 展示の題材は後からみんなに何個か例でも渡して、そこから選んで貰えばいい。他のクラスにどうやって決めたか聞いてもいいし……。

 白木さんには後から謝ればいい。あの時庇えなくてごめんねって。大丈夫。あの子は賢い子だから、大人の事情くらいもう察してるはずだ。

 大丈夫、大丈夫、大丈夫。

 そう、自分に言い聞かせて。


「……あは、は……」


 皆に合わせて乾いた笑いをこぼした途端。


「……っ………………」


 白木さんが私に向けていた縋るような目はすっと温度を失った。

 そのまま、白木さんは視線を落として椅子を立て直すと、すとん、と力が抜けたみたいに腰を下ろす。


 その姿を見た途端、あ、終わった、と思った。


 そのまま学校は終業式を迎えて──……夏休みが明けても、白木さんは学校に来なかった。

 何度か家に行ってみた。しかし。


「すみません先生。あの子、先生には会いたくないって言ってて……」

「そう、ですか……」

「ほんと、お世話になったのに薄情な子ですよねえ! まったく、友達も一人も来ないし、クラスでは頼られてるなんて本当は嘘だったのかしら!」

「…………そんなこと、ないですよ……」


 お母さんの愚痴を聞くばかりで、白木さんと会えたことは一度もなかった。

 不登校なんて珍しい話じゃない。あれは仕方なかった。そう自分に言い聞かせるけど、どうしても私は、私のことが許せなくて……そのまま、学校を辞めた。




 それからずっと、実家で腐ってた間も、塾講師をやってた時も、ネロとして転生して破滅回避だなんだと奔走してた時も、ずっと、ずっとずっとずっと後悔している。


 あの時、ちゃんと白木さんを庇ってれば、白木さんは今も楽しく学校に通えてたんじゃないのかな。


 雨音の響く洞窟の中、竜のそれになった身体をじっと丸める。


 私ってずっとそうだ。

 上から目線で、傲慢で、事なかれ主義で、ヘタレで、弱虫で。誰かのためなんて言ってても結局自分の保身しか考えられてない。

 エリーゼのことだって利用しようとして、初めてエリーゼのために行動しようと思った時にはもう全部遅かった。

 その結果が、これ。


 ぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。尻尾でそれを拭って、もっと身を小さくするようにうずくまった。


「っう……」


 雨音が強くなる。まるで、私の悲しみに応えるみたいに。


「うぅぅ……ぇぇえん……」


 子供みたいに声をあげて泣いてみる。洞窟に、竜の咆哮が響いた。

この後別に白木は不幸になってしまったということはなく、普通に通信制の高校に進学して第一志望ではないけど大学にも入れてます。主人公は学校をやめたのでそのことを知りません。


「好きだな」って思ってくれたらお好みの形で好き♡を伝えてくれるとうれしいです♡

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