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虹の架け橋  作者: 藤井桜
新婚編
74/719

優しい君の声で起こして



 定時の五時半に掛けられた、私の目覚ましのアラームが遠くで鳴っている。覚醒途中での遠くなので、物理的な遠くではない。起きなきゃ、と思っても目がどうしても、開いてくれない。

 アラームから聞こえる優しい歌声は、(よし)くんのソロ曲だ。隣りで、寝ているのに、というツッコミは受け付けない。ソロアルバムの中ですごく好きな曲なのだ。

 きっと、この曲を聞いてきっと、恋に落ちたんだと思う。



「麻衣…?」

「ううう」

「これ、絶対に、アラームには向かない曲選でしょ、俺としては、ぶち嬉しいんだけど」



 優しいバラードは、心地良くて、どちらかと言うと良く眠れそうな歌だ。朝は、弱い、それでも、アラームが鳴って、その数分後には起きれるはずだった。起きれなかった原因は私を背中から抱きしめているこの人のせいだ。昨夜は寝かせてもらえなかった。


 突然、アラームの音が止まった、その後に耳元で、同じ声が流れた。耳元で、同じ曲を嘉くんが歌い出したのだ。突然の事に流石に目が覚めた。



 遥か遠く 君の元に届ける事が出来たら

 遥か遠く 僕の歌が君に届く事信じてる

 遥か遠く 僕のこの小さな望みが叶えば

 遥か遠く 僕はずっとずっと歌い続ける


 色褪せることのない 空に架かる彩りを見上げて

 僕は歌うよ 歌い続けるよ 君のために



「嘉くん?!」

「目覚めた?」



 とびきりの良い笑顔と視線が絡み、口付けられた。一番のアラームはこの人なのかもしれない。今日も、頑張って起きて、散歩に出かけないといけないのに、それがどうしても、出来そうにない。



「今日は俺も走るのやめて、歩こうかな」

「え」

「だって、眠そうだし、歩くのも大変そうだし」

「だ。大丈夫だよ。嘉くんはいつものようにジョギングしてきて」



 嘉くんは週に二日、私に付き合って歩いてくれる。それ以外はジョギングだ。だから、朝は私と違って弱くはない。高校の頃からバイトをしていて、朝早い事もあったようだ。すごいなと思う。更にジムにも通っている。尊敬しかない。



「ほら、昨夜、無理させたし」

「それは、無理させないで下さい」

「それは、無理かな。だって、麻衣、可愛い事するんだもの」

「可愛い?!」

「アラームに俺の曲使ってくれた」

「好きな曲で目覚めたいじゃないですか」

「それが、可愛いって言うの」



 そう言って、また、キスされた。それから、三十分後にようやく、散歩に出掛けられました。今日、事務所に行く用事あったんだけどな。朝ごはんは、散歩途中に、パン屋さんで調達する事になりました。



「あの曲って」

「麻衣がアラームに使った俺の曲の事?」

「あれ、周りから、遥くんに向けた曲なんじゃないかって言われてたの知ってるの?」

「まぁ、タイトルが『遥か遠く』だからね。知ってるよ」

「でも、あの曲の歌詞聞いてると、違うんじゃ無いかって、最近思い始めてた」

「そうだね、あれは、麻衣に向けた曲だからね」



 ああ、やっぱり、そうじゃないかって思ってた。遥くんに向けた曲でも、違和感はない。でも、あの話を、嘉くんが休止中に私の曲で励まされたのなら、この曲は、この曲の歌詞だけは、私に向けられた様な気がした。


 嘉くんは、一日中ずっと、機嫌が良かったです。



 いつもこの曲なら、毎日大変でしょうね。今回のこの曲のチョイスはたまたまです。麻衣の目覚ましは基本、逆に良く眠れそうな子守唄の様な選曲が多いです。

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