Book リレー:麻衣編
特定の作品名、作家名が出て来ますので苦手な方はご注意下さいませ。
今日は、遥くんがうちの事務所に来ている。数日前に打診されて、今回は本格的な打ち合わせだ。出版社のお兄さんと、遥くんのマネージャーの沢木さんが一緒だ。今日は、午前中から来てくれて、私と嘉くんとの『離婚話浮上』に関して打ち合わせをしたところだ。
「これが、バックナンバーです」
「本屋さんで見た事はありますが、読んだ事はありませんね」
「やっぱり、知名度低いですよね」
「と言うか、この手の雑誌は読む人を選びますからね」
「ここ何年か、音楽活動をされている方も特集を組んだりしているんですけどね」
すみません、本を読む事は嫌いでは無いのですが、中々、時間が取れません。そう言うと、そういった人たち多いですよね、と返してくれた。その辺は、よくあることのようだ。前は、もっと時間も取れて読んでいたんだけどね。
「それで、今回は、古川さんからバトンを川村さんに繋いでいただきました」
「私、書けるかな」
「なんでも、構いません。それこそ、児童書や雑誌、漫画でも問題ありません。こう言った形で一ページだけ、お好きな本について語ってもうらおうと言う企画を十年ほど続けています」
「すごいな、あ、これ知っています。この本は好きなので読みました」
「伊坂幸太郎さんですね。本を読まないと言うわけでは無いんですね」
「まぁ、少しは読みます。伊坂幸太郎さんなどでも良いんですね」
「はい、問題ありません」
遥くんの原稿をもらったタイミングで次の人へバトンを渡すそうだ。この雑誌は季刊出版の雑誌なので、発売はもう少し先だそうだ。これを繰り返していて、その連載が十年ほど続いている。書く側の文字数がそれほど多くはないので気軽に好きなことを書けるので、今まで断られたことはないそうだ。知り合いにお願いされたら断る選択肢はないかもしれない。私の場合は誰から受けても断ることはしないと思う。
「これ、嘉のやつ」
「え、嘉隆くんも書いた事あるの?」
「ああ、麻衣ちゃんに会った辺りかな、多分、忘れていると思う」
「そっか、嘉隆くんらしいね。それでさ、何を書いたか想像付くんだけど」
「ああ、麻衣ちゃんの予想当たってる」
きっと、『銀河鉄道の夜』だろう。それしか無い。それに決まっている。そう言うと、遥くんに笑われた。でも、遥くんもそう思ったようだ。でも、『よだかの星』と悩んだみたいなことが書かれていたって。あれも、宮沢賢治だけどね。これから、嘉くんの読むのが楽しみだ。今回持って来てくれたバックナンバーは頂いても良いそうだ。わ、ありがとうございます。
「締め切り日の一週間前には、次に誰に回すか決めておいて下さい。締め切りと共に次の方へとバトンを回させていただきます。そして、守って頂きたいことがあります」
「はい」
「バトン回す方は、同じ事務所の方は避けてもらいたいんです。それと、前の方の事務所、今回の場合は、古川さんのrip tideを避けていただきたいです」
「分かりました」
いや、その二つが候補から外れるとどうするんだ。まぁ、何か考えよう。それと、今回は、嘉くんには内緒かな。だって、遥くんも嘉くんにはバラしていないって言う事だからね。
では、宜しくお願いします、と言って担当の出版社の人たちは帰って行った。出来上がったら、遥くんのも持って来てくれるということだったので、読むのが楽しみだ。それと、文章を書くのは好きなので、どの本にするか楽しみだね。
結局、遥くんは午前中に遥くんとの打ち合わせの時に出したチーズケーキを全て食べていて笑った。「じゃあ、今夜宜しく」と言って帰って行った。それに、苦笑している沢木さんは、「相変わらず、遥食べ過ぎ」と言って注意していた。あれ、沢木さんもいた方が良いんじゃないかな? 私は慌てて、沢木さんも来るように伝言した。
そして、その後、私が選んだ本は、今回は伊坂幸太郎さんではなかったのだった。
雑誌のコラムのお話なども面白そうだな、と思って書きました。嘉隆くんが麻衣にバトンタッチ出来なかったのは、麻衣と出会った頃に書いていたからです。遥くんは、聖良ちゃんもいたのですが、麻衣を選んだのは即決でした。




