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虹の架け橋  作者: 藤井桜
後日談+サブキャラのお話
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思いがけない嬉しい遭遇



 その日は、(よし)くんとお出掛けだ。嘉くんが、私に合わせて休みを取ってくれた。基本的に十月の土日はミュージカルとYOSAKOIで忙しいので、休みは平日だ。そして、ずっと行きたいと言っていた多摩六都科学館に行くことになった。これは、少しでも、嘉くんの気持ちが軽くなるように提案してみた。もう、大丈夫だって分かっているんだけどね。私の気持ちの問題だね。


 西武新宿線で花小金井駅で下車するそうだ。今日は、帽子は被っているけれど、紺色のワンピース姿なので、仕事用の格好ではない。眼鏡も掛けているので、覗き込まれなければ、分からない。覗き込まれても、仕事用のメイクではないので、それでも私だと認識は難しいだろう。



 時間に余裕も持って出てきたので、駅に着いても困ることはなかった。と言うか、電車でお出掛けが好きだった、と言う通り、嘉くんは電車の路線や時刻表に詳しかった。詳しい人がいると迷うことがなくて助かる。私の実家って、利用する電車は気仙沼(けせんぬま)線だけだったからね。

 あ、と私は見知った顔を見つけて思わず声に出してしまった。到着した電車から降りてきたのは、まさかの裕太くんだった。帽子を手に持っていて顔が見えるので、直ぐに分かった。



「あ、裕太くん」

「え」



 帽子も被っていたし、眼鏡を掛けてもいる。それに、上から下に視線を走らせてもワンピースだったので、裕太くんは私と気付かなかったようだ。軽く帽子をあげるとようやく気付いてくれた。メイクが違っていても裕太くんは私だと分かってくれた。



「麻衣?」

「うん、びっくりした」

「いや、びっくりしたのは俺の方だよ」



 裕太くんは、西武鉄道で働く運転手だって言ってた。普段、こっちの方まで足を運ばないので、会うことはないだろう、って前に言われたので、それでも驚いているようだった。

 車両は前後を変えて、出発するので、折り返し運転にために反対の車両に移動するようだ。それに、私たちは着いて行くことにした。滅多にないことなので、仕事中に申し訳ないけどもう少し話したい。



「久し振り、元気?」

「うん、元気元気。一年振りだね」

「そうなるのか! 学校でのライブ楽しかったよ」



 去年の、九月に母校でのライブ以来で、あの時は、休みが取りにくいのに、わざわざ取ってくれた。みんなとのLINEのグループでたまに近況でメッセージのやり取りはある。しかし、こうして東京で会うのは初めてだ。



「どこまで行くの?」

「うん、多摩六都科学館」

「ああ、花小金井駅だね。そこから、バスが出てるよ」

「おお、駅員さんだー」

「うん、駅員だからね」



 あはは、と言って私と裕太くんの会話に嘉くんに笑われた。それで、隣りにいた嘉くんに気付いたようで挨拶をしてくれた。私を気遣って隣りといっても一歩、後ろに控えてくれていた。基本、プライベートで私と一緒にいる男の人は嘉くんだけだろう。変装していても、分かってくれた。



「こんにちは、浅生(あそう)さん」

「こんにちは、ん、呼び捨てで良いよ。同級生で麻衣の友達でしょ、俺も呼び捨てでいい?」



 お、嘉くん、最初から猫を被っていない。去年と態度が違うので、裕太くん、びっくりしているよ。でも流石、お客さんと接することに慣れている職業だ。その辺は、スルーしてくれた。


 歩きながら、色々と教えてくれた。うん、仕事中なんで、ちゃんと仕事しないとね。ほとんど、嘉くんが知っていることだとは思うんだけど、嘉くんは裕太くんの説明を素直に聞いている。その会話の合間にお互いの近況とか話した。



「区内にプラネタリウムあるよね」

「なんか、今日行くところは、全国的にも有名な投影機があるんだって」

「へぇ、麻衣、天文好きだっけ」

「嫌いでは無いけど、嘉隆くんが好き」

「ああ、なる」



 最後に気を付けて、行っておいで、と言われて手を振られた。今度、一緒にどこか食事でも行こうかとお決まりの言葉ももらった。これは、裕太くんの奥さんも交えて実現させたいな。じゃあ、と言って私たちも裕太くんに手を振った。



* * *



 最新の投映機『ケイロンⅡ』っていう投影機で、直径27.5メートルの大型ドームのスクリーンに、高輝度LED光源で1億4000万個を超える星が投影されるそうだ。数字が大き過ぎて、分かりづらいな。『先進的なプラネタリウム』として世界一に認定されたそうだ。専門のスタッフによるライブ解説も魅力で、星座にちなんだお話や天文現象を織り交ぜた季節の夜空を分かりやすく紹介しているらしい。



 まるで、嘉くんは、きらきらと目を輝かせる子供のようだ。私の手を取ると少し早足で歩いて行く。急く気持ちも分からないわけではない。なんか、こう言うときの嘉くんは可愛いな。



「ぶち、楽しみじゃけぇ」

「あはは、どれだけ楽しみなの。広島弁になってるよ?」



 嬉しいのは、嘉くんもここに来るのは初めてだと言うことだった。区内のプラネタリウムには、何度か行ったことはあるようだったが、ここは初めてだそうだ。少し遠いので、仕事が忙しいこともあって足が伸びなかったようだ。



 色々な展示を見て、ここは、どっちかって言うと、区内のプラネタリウムよりは仙台市天文台の近いかもしれない。学べるプラネタリウムだ。ここよりも、ずっと楽しめる場所が区内にはいっぱいあるけど、私はこっちの方が楽しいので、素直にそう言ったら喜ばれた。


 最後にお決まりの「また、来ようね」と言って私たちは帰路に着いた。残念ながら、帰りは裕太くんには会えなかった。そのうち、連絡しようと思う。



 嘉隆くんが、元カノと一緒に行くのはl映画や遊園地などが多かったと思います。実は、彼女と一緒に行ったことはありません。この辺のお話を掘り下げた話も考えています。

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