私を守ってくれる存在
莉子さんの仕事が終わるのを待って、私と莉子さんは、美月さんのオススメのお店に来ていた。一緒にランチに行こうと誘ったは珍しく私だ。美月さんオススメのお店は、ガレットが食べれるお店だった。ガレットってそば粉が使われたクレープみたいな料理だよね。量も気にしてくれたようで、美月さんには感謝だ。
「もう少し、心を痛めると思ってたわ」
「きっと、嘉くんのことだったら、そうだったかも知れません」
「今回の誹謗中傷のターゲットが自分だったから? 昔だったら、違っていたわよね」
きっと、昔の私だったら、誹謗中傷に耐えられなかったかもしれない。でも、今は、私が守られていることに胡座をかいているわけではないが、安心出来る腕があるから、耐えられている。
「でも、こうして、ランチに誘ったのは、一人になりたくなかったから、なのかもしれません」
「もしかして、その、浅生くんファンが、麻衣ちゃんを狙っているかもしれないとか?」
「そんなこと、あったら嫌ですけど、まさか、あるはずないじゃないですか。気にしているのは、違います。一人だと考え込んでしまいそうだったので」
「考えすぎるって何を?」
「嘉くんファンの子のことです」
その人は、嘉くんしか見えていないのだろう。嘉くんが好きで、嘉くんに近づくと人を悪と決めつけるほどの過激なファンはどこにでもいる。その人がどんな人かは分からないけれど、もしも、それが私のファンで嘉くんを傷付けたらと思ってしまうんだ。そんな、人はいないと思っているんだけどね。
「私のファンの子が、嘉くんを傷付けるかもしれない」
「優しすぎるわよ。悪いことじゃないけど、そこは考えちゃだめよ。分かっているでしょ。この業界にいる以上、目を背けることも大事よ。厳しいこと言っているかもしれないけど、麻衣も分かっているんじゃないの」
デビューしたばかりの頃に比べれば、色々と学んできた。良いことも悪いこともだ。それを理解して、私はここにいる。不思議だ。こうして、誰かと食事を共にしておしゃべりしているだけでこんなにも心が落ち着いていられる。
「はい、分かっているつもりです。私はきっとこうして、莉子さんに叱ってもらいたかったのかもしれません」
「叱咤激励って言う意味なら、いくらでもするわ」
「ありがとうございます」
私もいるわよ、そう言った美月さんは、自分が頼んだパスタから海老をフォークで突き刺すと、私の口に放り込んだ。あは、こんな激励の仕方もあるのか。このことはまだ、嘉くんには言えない。多田さんから、rip tideの荻野さんに話を通して、遥くんと話し合ってからのなるだろう。遥くんにもまだ言わずに、多田さんから連絡をもらってからにするつもりだ。
「ありがとうござます」
「どういたしまして」
莉子さんは、そう言って、コーヒーを飲みながら、優しい笑みを浮かべた。莉子さんと美月さんがいたから、それと、多田さんもいたからこうしてここまでやって来ることができた。今私を助けてくれるの筆頭は莉子さんから嘉くんに変わってしまったけれどね。
美味しいコーヒーまで飲んで、私は心も身体も満たされていた。
一連のレーゲンボーゲンとの仕事を自重する話から続いています。麻衣も心の奥では、やっぱり、気にしてると思います。




