奏でる音を聞くひととき(sideレーゲンボーゲン)*
八月の後半と九月の前半に開催された、広島と東京でのライブの話になります。
遥の提案に、荘太郎は思わず聞き返していた。流石に、サポートメンバーが出しゃばるわけにはいかない、と申し訳なさそうに言われた。しかし、三月のデュオからバンドへの移行のための準備を少しずつしておきたいとも思っていると社長にも言われている。
それが、五分と言う時間で、サポートメンバーだけで、曲を一曲奏でることだ。それには、奏子のコーラスも入れる。その間、舞台袖で、嘉隆と遥は待機する。なんなら、歌っても良いと言った。
「それじゃあ、レーゲンボーゲンのライブじゃないよ」
「良いんだよ」
「嘉は良いの?」
嘉隆にも、異存はないようだ。それに、この暑い中、少しでも休憩出来るのは大きい、と言われた。それには、思わず、俺たちは良いのか、と荘太郎に突っ込まれた。ボーカルよりは、少しだが、サポートメンバーには、休むところがあるので、楽器の方が楽な方だ。それでも、ドラムの荘太郎は一番大変かもしれない。ドラムパートはかなりの運動量だ。
「でも、やらせてくれるなんて、正直嬉しい」
「アレンジ好きにやってもらって構わないけど、ほどほどにな。ソウ、力入りそうだ」
「おう。頑張る」
「いや、それがダメなんだって」
気合十分な荘太郎に釘を刺すが、遥に言われても響かないと返された。それには、嘉隆は爆笑している。いつもなら、こだわり出すとキリが無いのは、遥の方なので、面白かったようだ。じゃあ、よろしく頼むと言って、サポートメンバーはそれを了承してくれた。
* * *
サポートメンバーだけの、セッションは、好評だった。レーゲンボーゲンの曲を五曲ほど、メドレーにして繋ぎ合わせて、一つの曲にしている。聞き馴染みがあるので、直ぐに分かってくれたようだ。サビ部分を奏子がコーラスで口遊む。それも、どの曲か気付きやすい特徴の一つだろう。初期の懐かしい曲から、再活動後に出した曲をセレクトして、全て、アレンジしてくれたのは荘太郎だ。
荘太郎は、ガチだった。ここまで、バンドを意識した音は珍しい。ギターとキーボードが入らないのに、音としてまとまっているのだ。ギターとキーボード無しでも、音を届けるためにアレンジを頑張ってくれたようだ。何度も練習をして、嘉隆も遥も側で聞いて来た。しかし、今が最高の出来だと思った。晃のサックスが音を広げて、佑のベースが低い音を奏でる。それが、全て、一体となっていた。
レーゲンボーゲンがいないのに、ブーイングは一切無かった。お客さんは四人が奏でる音を、奏子だけは、歌っているのだが、その音に聞き惚れてくれている。遥は手応えを感じていた。これなら、来年の三月にバンドへ以降しても問題ないだろう。そして、サポートメンバーが楽しそうなのも良かった。三月に五人と奏子が揃う日が楽しみだった。
少しづつ小出しではありますが、社長の荻野さんは、デュオからバンドへの移行のために、準備を進めています。もしかしたら、はっきり言ってませんが、これも、サポートメンバーとの『らぶらぶ大作戦』の一貫かもしれません。




