夏日和(side日和)*
日和ちゃんと四季のお話の夏のお話です。このお話は、『遠く、空の向こうまで』の日和ちゃん視点のお話になります。
お盆に入って、今日の朝は、早起きして、本家のお墓参りに行って来た。その後、ママの実家の階上にも行った。朝が早かったので、少し眠い。こっちのお盆のお墓参りは朝早く、毎年四時起きだ。昨夜は早く寝なさい、と言われていたが結局寝たのは十一時過ぎだった。リビングのテーブルに突っ伏して、うとうとしかけていた私は不意に声を掛けられた。
お盆休みに入ったパパが、野球するんだけど、見にくるか、と言った。サッカー好きなパパから、野球の話が出て来て私は驚いた。うとうとしてたのだが、目が覚めてしまった。暑いし悩んでいると、従姉妹の杏お姉ちゃんも来るらしい。仙台の専門学校に進学した従姉妹の杏お姉ちゃんがお盆なので、帰って来ていることは知っていた。行く、と言うとパパは嬉しそうに笑った。パパが嬉しそうに笑うのは珍しい。
最近、私はパパと一緒に出掛ける。仙台にサッカーの試合を見に行ったり、その時、仲良くなった中山ひなたちゃんが気仙沼に遊びに来てくれたときもパパと一緒だった。仙台に行くと杏お姉ちゃんに会えると言う理由もある。杏お姉ちゃんとも何度か一緒にベガルタの試合観戦をしたことがある。
「明日、朝日も行くって」
「じゃあ、冷蔵庫で飲み物冷やしておくから持って行ってね」
そう言ったママは、キッチンから顔を出して、色々と準備してくれた。きっと、今日も暑くなるかもしれない。水分補給は大事だ。ママは、用事があるので、後から顔を出してくれると言っていた。
「用事が終わったら、浅生さんに会いに行くんだ」
「ママ、本当に嘉隆おんちゃん好きだね」
杏お姉ちゃんだけじゃなくて、麻衣おばさんと嘉隆おんちゃんも来るそうだ。ママと私は、レーゲンボーゲンの曲を聴いて、レーゲンボーゲンの、浅生嘉隆さん、嘉隆おんちゃんのファンになった。本家では、古川さんのファンが多いけど、うちは浅生さんファンだ。
「気を付けてね」
「はーい、行って来ます」
外は炎天下だったが、パパが少し早目に出て、車のエアコンを付けていてくれた。試合のある球場まではそれほど遠くはない。私と朝日は、荷物を手分けして持つと車に乗り込んだ。
* * *
おんちゃんたちが、集まる草野球。年代もバラバラな人たちがいっぱいいた。と言っても、えっと、野球は九人だっけ。パパのチーム人少なくない? 嘉隆おんちゃんが入ってくれるのは知っていた。だって、昨夜、パパとおばさんが話していたんだものね。
「よぉ、日和」
「あ、彼方くん。もしかして、彼方くんも出るの?」
「ああ、俺と友達も出る」
うわ、本当に寄せ集めだ、と言ったら、悪かったな、と怒られてしまった。パパのお友達の健太おんちゃんは、パパの幼な馴染みで、サッカーでは無く、野球を続けていた人だ。たまに、うちにも遊びに来るので知っている。それと、嘉隆おんちゃん。麻衣おばさんは見学だ。杏お姉ちゃんと一緒に屋根のあるところで応援するそうだ。
「人多く無い?」
「絵美おばさんも後から来るって」
「うちは、ママが後から来るって」
「ギャラリー多いの、俺のせいかもしれない」
「どうして?」
「なんか、おばさん来るって、言ったら増えた」
「ああ、なるほど」
ギャラリーは、高校生だけじゃなくて、大人の人もいる。近所の人たちが、おんちゃんを見に来たようだ。おんちゃんとおばさんは苦笑している。おんちゃん、ピッチャー? って聞いたら、数合わせのためにファーストに入るようだ。後から、ママと絵美おばさんが一緒に来た。飲み物を差し入れしてくれたようだが、うちからも持って来たんだよね。じゃあ、と言って絵美おばさんは、ギャラリーの人たちに配っている。どうやら、顔見知りの人も多いようだ。
試合が始まって、驚いたことがあった。パパが、ボールを取ろうと横に飛んだ。抜けるはずだったボールはパパのグローブに吸い込まれた。何があったのか、理解出来なかった。絵美おばさんとママは手を取り合って喜んでいる。
「敬也おんちゃん、すご」
「うん、びっくりした。あれ、なに?」
「多分、おんちゃん、サッカーやってるから」
「ああ」
パパは高校時代、サッカー部で、ゴールキーパーをやっていたことは聞いていた。なので、横に飛ぶのは得意なのだろう。すごい、ファインプレーに歓声があがる。その後、パパのチームが一点差で勝った。今回の功労賞はパパだね、と言われている。カッコいいパパを見るのは初めてかもしれない。朝日も嬉しそうにパパに駆け寄っていた。
私と杏お姉ちゃんは、顔を見合わせて、嬉しくなった。パパにおめでとうと、言って駆け寄ったのだった。
麻衣も出ているはずなのですが、敬兄がすごくて空気になっています。




