春日和(side日和)*
日和視点のお話で、春ごろに仙台に行った杏に会いに行く話です。特定のお店の名前や、プロスポーツチームの名前が出てきますので、苦手な方はご注意下さいませ。
従姉妹の杏お姉ちゃんが仙台の専門学校に進学した。部屋を借りて、一人暮らしを始めるようだ。小学生の頃までは、本家に行くと一緒に遊んでくれたので少し寂しい。それと、従兄弟の彼方お兄ちゃんも高校に進学して、野球部に入って、部活が忙しくなった。私も中学の部活が忙しいので、遊びに行くのはかなり減った。ママは、私が中学にあがるタイミングで、ママの実家の山本水産でパートの仕事を始めた。本家は車じゃないと行けないので、行く機会が減ったわけだ。
「日和」
「明日、サッカーの試合を見に行くけど、日和はどうする?」
「え、行かなくていいかな」
「そうか」
そう言ったパパは少し寂しそうだった。前は、一緒にベガルタの試合を見に行ったが、仙台は車で三時間も掛かるので、道中かなり暇だ。ママの仕事も土日でも普通に入っているので、パパと一緒にサッカー観戦しなくなった。たまに、朝日が着いて行くくらいだ。
「杏が会いたいって言っているけど?」
「え、パパ、それ最初に言ってよ! 杏お姉ちゃんに会えるなら行く」
「現金だな」
「だって、杏お姉ちゃんがいなくなって、寂しいんだもの」
「寂しいって、言っても三ヶ月ぐらいしか経っていないだろ」
「いなくなったら、寂しいじゃない」
「そういうものか」
「そういうものなの!」
そうか、と言ってパパは引き下がってくれた。杏お姉ちゃんに会えるなら、道中暇だが、なんとかなる。と言うか、なんとかする。しかし、パパは普段なら高速道路を使わないのだが、今回は使ってくれた。理由は、一人だともったいないが三人も乗れば時間の節約にもなって良いと言われた。今回は、結局、ご飯に釣られて朝日も行くと言い出した。道中は、ゲームをして遊んでいると思う。
そして、私たちは、本家からの荷物を預かって仙台に向かった。本家からの荷物の多さに日和は苦笑していた。お米だけで、10キロあった。他にも野菜があって、それを、車に積んで仙台まで運ぶことになる。
* * *
仙台に着いて、杏お姉ちゃんの住んでいるアパートに最初に向かった。お昼を一緒に取って、試合を見に行くと言うパパと朝日と別れて、私は杏お姉ちゃんと一緒に行動することになった。
「杏、ありがとう」
「私も日和と一緒に遊べて嬉しい。おんちゃんも応援頑張ってね!」
応援を頑張るって、意味が分からないが、パパは「ん」と返事をして、「これ」と言って、杏お姉ちゃんにお小遣いを渡していた。杏お姉ちゃんは、嬉しそうに、いつもありがとうございます、と言って素直にもらっていた。
「へへ、美味しいパンケーキ食べに行こうか?」
「おおお、パンケーキなんて、都会ってすごい」
「いや、仙台いうて都会じゃないでしょ」
「津谷に比べたら都会だって」
仙台は十分、都会だと思った。地元にいてもたまに気仙沼のイオンに行くくらいしかない。でも、最近は欲しいものがネットで買えるので困っていなかった。しかし、食べ物は違う。やっぱり、その場でしか食べれないものがある。
「ああ、日和。杏に服を何着か選んでもらえって言われてたよな。忘れるな」
「ああ、そうだった! 杏お姉ちゃん宜しくお願いします」
仙台に来た目的に一つの服を買って来るように言われた。気仙沼にUNIQLOもしまむらもあるけど、気に入ったものを買っておいでと言われていたのだ。今日の目的をすっかり忘れていた。
その後、杏お姉ちゃんオススメのパンケーキを食べて、ベガルタの試合が終わる時間まで、杏お姉ちゃんに仙台も町を案内してもらった。最後には、一緒に、スタジアムのある駅まで送ってくれたのだった。
「今度、また、来る!」
「敬也おんちゃん、微妙な顔してるよ。おんちゃん、今度私も試合あるときに誘って下さい」
「え、サッカー見ても楽しくないんじゃ?」
「そんなことないよ。野球は見たことあって楽しかったけど、サッカーもきっと楽しいと思うよ」
「杏お姉ちゃんと一緒だったら、楽しいかも。うん、今度、サッカーの応援に行こうね」
「うん」
パパはそれでも、嬉しそうだった。また、約束が出来て嬉しい。仙台にまた来るときは、今度は、サッカーの応援に行くのだ。もしかしたら、咲子おばさんもくるって言うかな。
杏が、仙台の専門学校に進学して、日和は寂しい思いをしていましたが、敬也が杏のところに連れて行ってくれました。日和は、結構、周りに流される性格をしています。そこは、川村家なのかもしれません。




