秋日和(side日和)*
日和ちゃん視点の過去話を四季に合わせて投稿していきます。全四話ほどになります。
パパがまさか、歌えるとは思っていなかった。サッカーが好きで、どちらかと芸術関係とは無縁だと思ったが、ママは高校時代には美術部だったので、もしかしたら、芸術方面の話で盛り上がったのかもしれない。
私のおばの麻衣おばさんは歌手で、悠おんちゃんは父の実家に行くたびに、よく歌っているのを見るが、パパが歌っているところを見たことはこれまで、一度も無かった。パパの実家の本家に行っても、パパは特に何も言わない。おんちゃんは、歌っていることがあるし、おばさんは、歌手だ。歌の話はたまに出てくるが、歌は嫌いでは無いと言うことぐらいしか知らなかった。そして、おじいちゃんもおばあちゃんも歌が好きで、パパの実家はいつも歌で溢れていた。
忙しい稲刈りが終わって、少しだけ農家に余裕が生まれる十月の後半。稲刈りは、私たちも家族みんなで日曜日に手伝いに行った。そして、麻衣おばさんが従姉妹の杏お姉ちゃんの誕生日を祝うために帰って来てくれた。そして、サプライズで何かお祝いをしてあげようとしているようだ。それを知ったのは前日に麻衣おばさんと悠おんちゃんがうちに家に来たからだ。
「おばさん、こんにちは!」
「日和、こんにちは、ちょっと見ないうちにまた大きくなったね」
「えへへ、いつもありがとうございます」
お土産は、東京の有名な洋菓子だった。家族四人で住んでいるし、どちらかと言うと私も朝日も洋菓子が好きだ。きっと、本家には、おじいちゃんたちがいるので和菓子がお土産なのかもしれない。
「ごめんね、うるさいかもしれないけど、ちょっと練習させてね」
「杏お姉ちゃんには内緒なんですよね。私が聞いても大丈夫ですか?」
「うん、いいよ」
どうやら、三人で歌うようだ。え、と言って私はパパを見上げる。悠おんちゃんは、友人と一緒にバンド活動をしているのを知っているので、まさか、パパが歌うとは思っていなかったようだ。
「パパも歌うの?」
「不本意だけどね」
嘘、と言ってはいるが、どこか嬉しそうだ。すると、ママがバラしてくれた。ママが高校の時にパパは文化祭でバンドを組んで歌ったらしい。知らなかった。だよね、と呟いて納得した。
「おんちゃんもおばさんも歌うものね。パパが歌ってもおかしくないよね」
「歌う機会無かったからな。それに、高校の時は、頼まれたんだよ」
そっか、パパは、家にいてもTVは見るが、音楽を聞いているのは見たことがない。車を運転する時も、麻衣おばさんの曲をかけていることがあるがそれは、妹の麻衣おばさんの曲だから、聞いていたんだと思っていた。
そして、初めて聞いたパパの歌は、悠おんちゃんと麻衣おばさんに劣らないほど上手だった。しかし、ずっと歌っていなかったって言っている。麻衣おばさんは仕事で歌うし、悠おんちゃんは畑仕事をしながら歌っている以外に友人の居酒屋でもバンドを組んで歌っている。
「やば、パパうま」
「歌ったの聞いたの高校以来かも」
「パパと一緒にカラオケも行ったことないからね」
そして、レーゲンボーゲンの歌は、私も知っていた。麻衣おばさんは、歌わずにこの曲は悠おんちゃんとパパで歌って、杏お姉ちゃんを驚かせるようだ。それが、見れるのが私には楽しみだった。
かなり遡って、麻衣が、杏のサプライズで実家に帰る話です。麻衣と悠兄、敬兄と三人で歌う話で、そのお話の日和ちゃん視点のお話のなります。




