一緒にいるから楽しいこと、君への初恋③*
初恋シリーズの三つ目。麻衣のお話になります。好きかもしれないけど、自覚はありません。
高校は、お隣りの市の気仙沼高校を選んだと言う話を兄の敬兄から聞いた。敬兄は、ずっと水産高校に行くと言っていたので驚いた。野球だけなら、東陵高校がこの地域では、強くて有名なんだけど、あっちは私立なので、お金が掛かると言う理由でやめたらしい。
「え、敬兄と同じ高校受験するんじゃないんだ」
「うん、高校行っても、野球続けたいからね」
「そっか」
「麻衣は? 二年後、受験でしょ」
「うん、ここから近いところが良いから。多分、本吉に行く」
「相変わらず、麻衣は、朝弱いよね」
そう言って笑われてしまった。朝は弱いんじゃないよ。頑張れば起きられるし。ちゃんと、六時には起きている。ご飯の後にちょっと、寝ぶかけしてるかもしれないけどさ。でも、近い方が色々と便利だよ。それに、農家の勉強に適した学校だから、他を選ぶ選択肢は無いね。
「それと、もう少し勉強がしたい」
「確かに、この辺では一番学力が高い高校だよね」
分かってた。本吉高校は、気仙沼高校に比べるとどうしても、学力で劣るからね。敬兄は、サッカーが出来るから水産高校にしたようだ。うん、悠兄も私もだけど、あまり頭は良く無い。敬兄が健太くんに勉強を教わっているのを何度か見たことがあるし、私も教えてもらったことがある。その時、兄はあまり役に立たない。
「敬也、船乗りにでもなるの」
「ううん、違うとこにするって言ってた。悠兄が本吉高校卒業したから、お父さんはどこでも良かった見たいだよ」
「だから、サッカー選んだんだね」
悠兄は健太くんと一緒で、野球をやっていたんだけど、敬兄はサッカーにハマったんだよね。ポジションはゴールキーパーなんだけど、ゴールキーパーなんて、暇なんじゃないかな。そう言ったら、キャプテンなんで、指示を飛ばすのに、ゴールキーパーは広く周りを見ることが出来て向いているらしい。
サッカーは、体育の授業でやったことはあったが、ボールを追いかけるだけで疲れた。最後には、ゴールキーパーをさせられた。立っているだけだったんだよね。楽だったけど暇だった。学校の授業だから、敬兄のように指示を飛ばすこともないからね。
「男子校だよね」
「麻衣なら、入れるんじゃない?」
「え。一応、女子の自覚あるんだけど」
「あはは、やっぱダメか」
ダメに決まってるじゃん、何を言うんだ。一緒の高校に行きたいとは思うけど、気仙沼高校は男子校だ。私が入れるわけがない。残念だけど、一緒には行けないので、受験頑張ってとしか言えない。
「うん、ありがと」
まぁ、元々、学年が二年違うので、今でも部活が忙しいということもあって、前よりもうちに遊びに来る時間が減っていた。中学では、敬兄はサッカー部で、健太くんは野球部だ。私は美術部に入ったけど、家でおばあちゃんに民謡や三味線を習っているので、部活はほとんど出ていない。部活は、中総体が終わって、そして、受験勉強が始まる。また、うちに来るのが減るのかなと思っていたのだが、前よりも来てくれるようになった。どうして、と聞いたら敬兄と受験する学校は違うけど、試験内容は変わらないので、一緒に勉強するようだ。
「それ、敬兄に教えに来るんじゃないの。教えていたら、勉強にならないんじゃないの?」
「復習になるし、俺の勉強にもなるから、それと、麻衣の勉強も見てあげられる。それも、同じように復習になるから問題ないよ」
「私は嬉しいんだけど、本当に無理はしないでね」
「うん、ありがとう」
そう言って、私は、頭を撫でられた。もう子供じゃないんだけど、嫌いじゃない。健太くんに頭を撫でられるのは好きだ。私は、応援することしか出来ない。高校生になるとうちに来る機会が減ると思う。だったら、中学卒業まで、楽しいことをしようと思う。それが、一緒に勉強することなんだけど、絵美に言ったら、それ、どこが楽しいの、って言われてしまった。勉強は嫌いじゃ無いので、楽しいよ、って言ったら、英語も? って言われてしまった。うん、それは楽しくないかもしれない。
その後、敬兄も健太くんも無事に高校に合格したのだった。私は、二人におめでとう、と告げた。少し寂しいけど、高校に行っても頑張って欲しい。
麻衣の場合は、何年か経って、あ、好きだったんだ、と思っているかもしれません。曖昧なもので、本当に好きと言う感情はありません。




