君の瞳に恋をした(side理人)*
麻衣の春の全国ツアーファイナルの東京公演の数日後のお話で、杏が数日の間東京に残ることになった時の話になります。
地元の宮城から、杏が三月の麻衣のライブに来てくれた時に、絵美と学は帰ったが、その後、杏だけは、春休みを利用して、東京に数日残った。遥と六花と一緒に、浅草花やしきに行く事になり、午前中に用事のあった遥は一度、浅生家から杏と一緒に泊まった六花を預かる。麻衣も事務所に報告があったので部屋には誰もいなくなるからだ。そして、午後にまた来る、と言って遥は仕事に出掛けて言った。
「あ、お兄ちゃん」
「六花、お帰り。おじさんは?」
「仕事だって。後からまた来るって。あ、お姉さんは、川村杏さん。麻衣さんの姪っ子さん」
今日は、理人は、午後から出掛ける用事があるので、午前中は家にいた。車の音が聞こえたので、玄関に顔を出したようだ。しかし、遥は直ぐに戻って行ったので、会えなかった。
「おじさんに用事?」
「うん、でも、大したことじゃないから、後でで良いよ」
「そっか」
理人は、六花に杏を紹介された。すらりと背の高い子で、長い黒髪を下ろしている。挨拶をしてくれた、笑顔の第一印象に理人は固まって、挨拶が一瞬遅れた。
「こんにちは! はじめまして、川村杏です。六花ちゃんのお兄さんだよね、宜しくお願いします」
「ああ、こんにちは、はじめまして。古川理人です。こちらこそ、宜しくお願いします」
礼儀正しい子だった。そして、杏も同じように理人は礼儀正しい子だなと思った。二人を交互に見比べて、六花は兄のいつもと違った様子に驚いた。
「高校卒業したんだよね。おめでとう」
「ありがとうございます」
「気にしないで、タメ口でいいよー」
「いや、でも、先輩だよね」
「気にしなくて良いのに。理人くんって呼んでも良い?」
「うん、じゃあ、僕は杏さんで」
流石に年上を呼び捨てにも『ちゃん付け』にもできないので、『さん付け』になった。くるくると表情が変わる。おばの麻衣とは似ていないように見えた。身長は六花よりも少しだけ高いが、麻衣のように高いわけではないようだった。
「お兄ちゃん?」
「ああ、なんでも無い。そう言えば、母さんがお菓子用意しているから取りに来てって言ってた。ケーキ焼いたって」
「わーい、お母さんのケーキ! 嬉しい、大好きなんだ」
惚けていたことには気付かれていないようだった。黒髪なことや、挨拶もしっかり出来るので、真面目な子だと思ったが、口を開くと今時の女の子だった。そのギャップが可愛いと思った。理人はもう少し話をしたいと思ったが、流石に、六花と一緒に六花の部屋の居座るわけには行かない。何か、もう少し話す機会があれば、と思い咄嗟に声を掛けていた。
「いつまで、こっちにいるんですか」
「えっとね、明後日には、帰るよー」
「そうなんですね。じゃあ、また、来て下さい。六花もその方が嬉しいと思うので」
「うん、えへへ、古川家のお菓子が好きなので、お土産に買って帰るので、また来ます」
「待ってます」
「ありがとう」
そう言って、杏はにっこりと笑ってくれた。不意打ちの笑顔に理人は、戸惑うが、六花がにまにまと理人を見上げているので、軽く咳払いして誤魔化した。
「じゃあ、僕は出掛ける準備してくる。ごゆっくり」
「うん、理人くんも頑張ってねー」
午後からは、大学の授業があると気付いたのかもしれない。専門学校や高校と違って春休みの日程が違う。理人は大学が始まっていて、今日は午後からだ。手を振る、杏に理人は照れたように「ありがとうございます」と返した。
そして理人は杏に一目惚れしたのだった。
ここで、理人くんは杏に一目惚れしました。これは、もう一つ、そのうち、幸人くんと杏が会う話も書きたいろ思っているのですが、仙台と広島は遠くてどうしようか悩んでいます。




