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虹の架け橋  作者: 藤井桜
新婚編
69/722

君の好きな音を奏でる事の幸福



 ギターに触っていた私は、不意に後ろから抱き込まれた。そう言う事するのは、(よし)くんしかいない。彼は手に二つのカップを持っていて、器用に手近なテーブルに置いた。今日もコーヒーを淹れてくれた様で、ありがとう、と言うと俺が飲みたいだけだから、と甘い笑顔付きで、返って来た。



「曲作り? それとも、何か、歌ってくれるの?」

「ギターに触りたかっただけ。今は特に思い浮かばない。ギター触っているとなんか安心しない?」

「それは分かるね。でも、麻衣の歌聞きたいな」

「じゃあ、嘉くん弾いてくれる?」

「何が良いの?」

my(マイ) way(ウェイ)

「その曲、好きだね」

「だって、私の名前入ってるんだもの」



 その曲は、レーゲンボーゲンの曲で私が一番好きな曲だ。私の声と嘉くんの声が重なる。この人は、とても合わせるのが上手だ。私は、基本一人で歌うので、頑張って覚えないと合わせるのが難しい。

 この曲だけは、大好きなこの曲は本当に練習した。彼らの曲で特に有名な曲ではない、アルバムの中の一曲に過ぎない。歌詞が少しだけ切なくて、それでも、深読みすると、愛に溢れたとても素敵な歌詞だ。



 この道を一緒に歩いて行こう 道が違えそうなら

 君の小さな手を握り 引き戻すから

 前を向いて その道の先にある優しい光に向かって


 僕の大事な、君を誰よりも守るから


 この道を一緒に歩いて行こう 道半ばで倒れても

 君の小さな手を握り 立ち上がらせるから

 振り返らない その道の先にある美しい光を求めて


 僕の大事な、君を誰よりも愛すから


 LaLaLa…



 そんな優しい曲だ。実は私も嘉くんもあまり、過去の事があってか、別れ歌とか、悲しい歌は好きではない。

 流れる優しい音は、とてもゆっくりしたバラードだ。

 これ、難しいところがあって、嘉くんのパートですごい高音がある。いつも、よく出るなぁって感心する。私には無理。出そうとすると、いつも声が裏返っちゃう。だから、一緒に歌う時は、遥くんのパートを歌わせてもらう。あ、曲、終わっちゃった。



「麻衣は、ギター以外に楽器は何か出来るの?」

「何だろう、ギターもそれほど、上手じゃなくて、作曲に使うくらいなのよね」

「ピアノとかは?」

「一応、音階とか、楽譜は読めるので、触れば何とか、いけると思う。私に、何かさせようとしてる?」

「いや、気になっただけ。俺もギター以外は同じようなものかな。ギターは人前で弾ける。最近、ようやく、ビートルズの曲も弾ける様になったところ」

「え? 好きだけど、弾けなかったの?」

「うん、遥ね、ストリートライブ時代からぶち上手かった。でも俺には、少し難しくて、人前で弾けるほどではなかった。いっぱい、練習してようやく弾ける様になった。あの頃は、遥のギターに合わせて歌っていたよ。それで、麻衣はどうなの?」

「ビートルズを楽器で演奏なんて、無理! 歌う事すら難しくて、それでも、歌える様になっちゃった」



 あー、その言葉に嘉くん、少し遠い目をする。私も申し訳なくて、視線を逸らしたんだけど、嘉くんの方を向かせられた。うん、だって、あの頃、広大(こうだい)くんと、いっぱい歌ったんだものね。ビートルズのあの曲を。



「気にしていないって言ったら嘘になるけど、俺とも一緒に歌ってくれるんでしょ? それなら、良いよ」

「うん、それは、もちろん、一緒に歌うよ。嘉くんはギター弾いてくれるんでしょう?」

「うん、俺で良かったら、弾くよ。麻衣が望むなら、ピアノだって、頑張るよ?」

「へへ、ありがとう」



 好きな事に関しては、全力で努力を惜しまない。そして、この人は、何でこんなにも優しいの。私も嘉くんのために、何か出来る事ないかな。少し考えて、思い出した。私が弾ける楽器があった。いや、でもそれは、嘉くんのためになるのかは分からないけれど。



「…私ね、一つ人前で弾いても大丈夫な楽器あるよ」



 ふと思い出した。きっと、触れば今でも弾けるはずだ。でも、それは実家にあって、こっちには置いていない。高校生になってから、練習は出来なくなった。でも、たまに弾いていた。最後に触ったのは、某有名曲が流行った時だった。触れば感覚取り戻せるかな。嘉くん、弾くと言う言葉から、弾く楽器を想像するのは、流石だ。



「ベースとか?」

「ううん、違う。三味線」

「そうきたか!」



 民謡、踊り、そして、三味線もおばあちゃんに習いました。三味線弾きながら、民謡歌う事出来ます。何だったら、有名なボカロ曲も弾けちゃいます。嘉くん大笑い、嘉くんの受けを取れたようで、満足です。

 前に、広島の嘉くんの実家に行った時に、民謡歌ったから、それと、同じ事したね。今度、聞かせてよ、というお願いに、手元にないので、実家に帰った時にね、と了承した。



 有名なボカロ曲は、『千本桜』で、世間的にも私にとっても初めて聞いたボカロ曲ですね。高校に上がってからは、教えてくれる人がいなくなったので、独学です。そして、いる場所がリビングなのでいちゃいちゃは禁止ではないです。

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