広島の県花と宮城の県花(sideレーゲンボーゲン)*
三月の話なので、*印付けました。
遥にその話が来たのは、突然の事だった。昔からお世話になっているという呉服屋の奥さんは母と仲が良く、素敵な柄の浴衣用の反物が手に入ったので、見ないかと言う事だった。
去年の秋に突然、麻衣から送られて来た、米に何かの形でお礼をしたいと言われていた。それが、反物の値段を抑えて、買わないかと言う事だった。贈っても良いのだが、気にするだろうという心遣いだ。
遥は、嘉隆に相談してみると、伝える。その後、送られて来た画像を見て、嘉隆は即答しそうなので、必ず、本人に確認してからと念を押さないといけない。
見てみたいという、返事をもらって、遥は二人を実家に招いた。前々から、麻衣を招きたいと言っていた、母は、呉服屋では、気兼ねできないと思ったようで、今回、用意して貰った色違いだが、柄の同じ反物を呉服屋から預かってきた。
まず、はじめに遥は麻衣に念を押した。「気に入らなければ、はっきりと断って良い」と、麻衣の性格は知っている。気を遣って、即購入も考えられたからだ。
浴衣にしたのは、着物よりも値段が抑えられて、いらないと言う事も容易いと思ったからだ。それになにより、この生地の柄は浴衣向けだ。着物は着慣れないわけではないが、あまり、自分には似合っていないと思っているようで、そんな事はないのだが、それを尊重して浴衣にした。八月の七夕の時にでも着てもらえればいい。
「初めまして、川村…じゃない、あ、浅生麻衣です」
「慣れない?」
「入籍したの先日ですよ。無理に決まってます」
少し拗ねたような口調だが、母が嬉しそうに目的の反物を取り出すと、目が輝いた。黒、白、藍の三種の色合いの生地に散りばめられたのは、落ち着いた色合いの紅葉と可愛らしい紫の花だった。嘉隆は花の方にはぴんときていなかったようだが、麻衣は違ったようだ。
「どちらも秋の意匠ですよね、紅葉は広島の県花ですよね。萩の方は宮城の県花です。遥くんは知っていたんですか?」
「何種類か見せてもらったんだけど、これが一番しっくり来た。県花が萩っていうのは知らなかった。つうか、突っ込んでいいか。広島の県花なんで、紅葉なんだよ。あれ、花じゃないだろう」
「確かに、嘉くん、なんで?」
嘉隆も知るはずはない。「分からない」という返事が返って来た。ちなみに、県木ももみじ、どれだけ、もみじが好きなんだよ、と思う。
「嘉くん、どの色が良いと思う?」
「俺が選んでいいの?」
すかさず、遥の母が反物を麻衣の襟筋に合わせてくれた。肌の白い麻衣にはどちらかという濃い目の色が似合う。黒か藍で悩んだようだが、最終的には藍を選んだ。
俺もそれだと思った、と遥は嬉しそうに笑う。優柔不断な麻衣と違って、嘉隆は、決断力も早い。麻衣は嘉隆を尊重するし、やっぱり、良い組み合わせなのかもしれない。
その後、色味の抑えた、紫色の帯と合わせるととても、綺麗だった。数ヶ月後に、仕立て終わった浴衣に袖を通すのが楽しみだった。嘉隆も揃いの藍と、遥の母が気を使って選んだ、渋い色合いのえんじ色の浴衣で、七夕に行く事に決まった。
広島と宮城の県花、どっちも秋の植物ですね。紅葉は花なのか謎ですが。広島さん、たまにちょっと謎、県魚が牡蠣っていうのもあります。どっちもそれ花じゃないし、魚じゃないでしょ(笑)。
三月の話なので、前のお話と時系列がちょっと前後していますね、すみません。こうして、過去のお話が途中入る事あります。惑わせてすみません。




