おまけ・二人のアリスの物語(sideみのり&天音)*
『森の洋館と二人のアリス』の二人のアリス役のみのりちゃんと天音ちゃんのお話。
このオーディションを知ったのが、みのりは、毎月、定期購読をしているファッション雑誌で、天音は大々的に取り上げられたネットニュースだった。それぞれ、知った媒体は違う。後から、そのことが話題になって笑っていた。
二百人ほどと、それほど大きなオーディションでは無かった。オーディション参加者には、双子も多くいた。しかし、最後まで残ったのは住んでいるところが違う二人だった。双子でもなんでもない。オーディションの最終審査で初めて顔を合わせた。
学年が一緒なのと、身長がほとんど一緒ぐらいで、雰囲気が若干似ているかもしれないが、二人並んでも区別は付く。誕生日は八月三十一日と九月一日で誕生月は違うが星座は一緒だ。でもl血液型は違う。育った家庭環境も違う。しかし、それが、良いと判断したのは監督だった。双子のような演技を求めているわけでは無い。双子を演じることを求めている。作品の中のアリス自体が双子になりきろうとしているのだ。そう言った理由なので、双子で無くても良かったのだ。
二人とも社交的で、誰ともすぐに打ち解けることが出来る。通常は普通のどこにでもいる高校生だ。恋バナも好きだし、カッコいい男性の話をするのも好きだ。今回のヒロインの深戸めぐみとも一番最初に仲良くなった。続けて、めぐみの事務所の先輩の川村麻衣とも仲良くなった。きらきらして、お兄さんと言う見た目だが、歌手やアイドルにも詳しい二人は麻衣のことも知っていた。そして、ミュージカルは母が好きなので、藤堂基と曽野馨のことも知っていた。みのりの母は基のファンで、天音の母は馨のファンだと言うことだ。こっそり、お願いしてサインをもらっていた。
* * *
ミュージカルの稽古終わりに一緒にご飯を食べにいくことを知った時は、みのりと天音は顔を見合わせて驚いた。学校が終わった、二時半過ぎ二人は遅れて稽古に参加する。学生なので、その辺も監督は配慮してくれた。その後に、七時までと大人組はお酒禁止で夕ご飯を食べる。それも、監督の希望で、稽古のある日はほとんど一緒に夕ご飯を食べることになった。多くは、近所の中華屋さんか定食屋さんだ。
「杏仁豆腐好き」
「マンゴープリンも美味しいよ」
仲良く、デザートまで平らげていた二人を、その様子を微笑ましく見つめていた麻衣に苦笑された。お店側が女性陣にデザートを差し入れしてくれたのだ。それに対して、馨がなんで、川村さんの前には無いの、と疑問を口にした。
「「マリ姐、あーんする?」」
仲良く首を傾げた、みのりと天音がスプーンを差し出した。麻衣は困ったように笑って、馨の疑問に答えてくれた。流石に、店側も麻衣にもデザートをいるか、聞いてくれた。それを、断ったのは麻衣だ。けして、男性に間違われたわけでは無い。
「ありがとう、いただくよ」
その一言に、周りから黄色い悲鳴が上がった。善意もあったし、一口ぐらいならもらっても良いと思ったのだろう。
「うわ、川村さんイケメン」
「藤堂さんも素敵ですよ」
「うん、ありがとう」
お互いにこにこと笑みを浮かべながら、社交辞令のような会話をしている。それに、馨はうさんくせぇ、と言って笑っている。
「本当のことなんだけどな」
「旦那さんよりも?」
「その質問、答えたく無いんですが」
「あはは、冗談だよ」
しかし、そろそろお開きのようだ。普通に学校に行って、稽古をして、疲れたのだろう、みのりと天音は、食べ終わって満足したのだろう、うとうととし始めた。スタッフの女性が二人を送り届けると言ってくれた。そこで、今日の食事会はお開きになった。
* * *
都内の高校に通うみのりの家から稽古のある場所までは、それほど遠くは無い。天音の方は若干距離があるので母が送り迎えをしてくれている。子供たちの稽古は物覚えの早さもあって、平日は三時から六時まで。それから、七時まで夕ご飯だ。土曜日は、午後からで、日曜日は休みだ。大人組は、午前中や、仕事の都合もあり、午後からの稽古が多い。
それも、もうすぐ終わりだ。基をもっちゃん、馨をかっちゃんと呼ぶまでに仲良くなった。一緒に夕ご飯を食べることが無くなるのは寂しい。今回、オーディションに合格してミュージカル出演したが、それ以降の仕事は決まってはいない。高校二年生なので、これからは大学受験に向けて忙しくなる。両立は難しいだろう。しかし、二人は役者の楽しみを知ってしまった。監督にも気に入られた。無事に高校を卒業して、大学受験に合格してそれから役者の道に進んでも遅くないと言ってくれた。
みのりと天音は毎日のようにメッセージのやり取りをしている。気軽に会える距離では無いが、ミュージカルが終わってからも頻繁に会うことになる。
仲良くなった、めぐみ、麻衣、基、馨は二人に声援を送り、待っているよ、と激励したのだった。
ミュージカルは、もう少しだけ続きますが、二人はミュージカル後も一緒に会うようになります。




