新しいミュージカルの告知会に出席することになりました。
私は、事前に嘉くんに会っていたこともあって、それほど、驚いてはいない。どちらかと言うと、嘉くんの隣りにいた茂木さんに驚いた。
顔合わせ時の衝撃はすごかった。茂木さんは、私と嘉くんがいる事に驚いた様だ。いや、私も驚きましたよ。周りは私よりも嘉くんに驚いた様だ。「誰、このイケメン」と言われていて、嘉くんだと気付いている人はいない様だ。だって、いつもの見た目からかなり、かけ離れているのと、今まで、役者なんてする事が無かったからね。
茂木さんの隣りの嘉くんは、猫を被ってにこにこと笑みを浮かべている。私の隣りのヒロインのりらちゃんは、すごく緊張しているようだった。それは、まぁ、有名な人たちばかりだと緊張するよね。
監督さんの紹介で、ようやく、このイケメンが誰か分かった様で更に悲鳴が上がった。そして何故か私に視線が向けられた。まぁ、夫婦でいるので、驚かれるよね。いつものメイクでは無いけれど、それでも、私だと気付かれた。隣りのりらちゃんも嘉くんに釘付けだ。
「茂木幹也です。宜しくお願いします」
「ども、新人の浅生嘉隆です。宜しくお願いします」
新人か? と頭を傾げる人もいるけど、俳優に関しては嘉くん、新人で間違ってはいないね。獣人族側から、順番に挨拶をして、人間側の番になった。
ここは、ヒロインが一番最初に挨拶をするべきだろう。しかし、緊張し過ぎて、言葉が出ないようだ。私は彼女の背中をぽんぽんと優しく叩くと視線を合わせた。小さな彼女にだけ聞こえる声で、「深呼吸して。ゆっくりで、構わないから。手、握っていてあげるよ」そう言ったら、こくこくとロボットの様に頷いた。
「的場りらです。宜しくお願いします!」
「うん、言えたね」
そう言って、りらちゃんの頭を撫ぜると、顔を真っ赤にして俯いてしまった。あ、やり過ぎたか? 微笑ましいものを見る視線が、周りから送られている。改めて、私も挨拶だ。
「川村麻衣です、宜しくお願いします」
その後も、これから、一緒にミュージカルをする人たちの紹介が続いていた。この後、説明を受けて、夕方から、マスコミを通して、告知会に入っていく。
「川村さん、ありがとうございました」
「少しは、緊張もほぐれた?」
「はい」
「良かった、改めてこれから宜しくね。私もそれほど、ミュージカルに出ているわけじゃないんで、一緒に頑張っていこう」
「はい!」
的場りらちゃんは、二十五歳、大学では、演劇をしていて、卒業しても仕事をしながら演劇の勉強を続けていた様だ。そして、今回のオーディションの役が、軍人なので、それなりに、年齢が高い子が選ばれた。
私はシンガーなので、ずっと演劇を続けていたりらちゃんの方がずっと、基礎も出来ていて上手だと思うね。私の方がひよっこだ。
出演者を見回す。私の隣りのりらちゃん。監督さんを挟んで反対側に茂木さんと嘉くんがいる。茂木さんがいることに驚きすぎて他の出演者を気にする余裕がなかった。
『兄弟星の物語』と言うのが、そのミュージカルのタイトルだった。
私の役は、侵略者側の軍人で偉い人。大佐だったと思う。りらちゃんはその私の補佐官だ。侵略される側の星の人間が族長が茂木さんだ。嘉くんの役は村の戦士という事なんだけど、戦士っぽい感じは薄い。
今回のヒロインはりらちゃんで、りらちゃんと村の若者である青年、嘉くんではない。が恋に落ちる。まぁ、その辺りまでしか分からない。だって、私がもらった台本は前半部分だけだからね。その青年は今回の主人公だ。田辺祥太郎くん。りらちゃんと同い年の役者さんで、ミュージカルよりはドラマへの出演が多い。
監督さんが一人一人に声を掛けて説明しているのを聞いている。マスコミの数も多かった。獣人側の衣装は、すごいな。民族衣装っぽい感じが素敵だ。男性人はカッコよくて、女性陣の衣装も可愛い。それとは、違って私たち軍人側の衣装は簡素で面白みは少ないね。りらちゃんのもスカートでは無く動きやすいズボンだ。
質疑応答では、嘉くんへの質問が多かった。初めて演者としてミュージカルに出ることに対するものと、褒め言葉が多数だ。マスコミのお姉さんの目はハートマークだ。隣りの茂木さんと田辺さんと並ぶと眼福ですね、と言われている。まぁ、イケメン三人が並ぶとそうなるかな。
「あっちにも、イケメンいるけどね」
ぼそりと呟いた茂木さんの一言に視線が私に集中した。あ、私もイケメン枠ですか。りらちゃんも隣りでこくこく頷いている。確かに、ってマスコミのお姉さんまで頷かないで下さい。
練習も公演もまだ先だがこうして、告知会は終わった。
『兄弟星の物語』と言うタイトルのミュージカルです。ここで、すべての役者の顔合わせが終わマスコミにもカミングアウトされました。稽古、本番ともう少し書いていきたいと思っています。




