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虹の架け橋  作者: 藤井桜
本編
48/722

きらきらのランチときらきらの君(彼女の方)

 東日本大震災の話が出てきます。ご注意を。



 ゆっくりと、海沿いの道を南下して、隣りの町に入る。合併前は歌津(うたつ)町と言われていたところだ。そして、運転は私だ。広島でも運転させてもらったけれど、運転はそれなりに緊張するけれど、楽しい。

 お互いの曲を流しては、歌う時間はあっという間だった。一時間弱で着いちゃう距離なんだよね。本当は高速道路もあるんだけど、今日は時間があるし、ゆっくり走りたかったので、国道を走る事にした。


 南三陸町内に入り、震災後の復旧はまだ、完全とはいえないけれど、ここに来るたびに景色が変わっているなと思う。震災遺構の建物を見て、手を合わせた。海風が気持ちいい。

 ゆっくりと、公園内を散歩して、混む前に食堂に入る。目的の海鮮丼を食べるためだ。季節によって、海産物が変わる海鮮丼は店によって、バリエーションが違っていてそれだけでも選ぶ楽しみがある。

 絵美のお父さんの実家は高台にあったので、震災は無事だったようだ。それでも、牡蠣の養殖棚は流されたらしい。でも、頑張ってまた、養殖業を再開したらしい。



 食べ終わって、買い物して帰ろうとした時、不意に声を掛けられた。私たちよりも少しだけ若い女性だった。あ、やっぱりという言葉が続く。その人は、嬉しそうに嘉隆(よしたか)くんへと駆け寄って来た。レーゲンボーゲンのファンの子だ。



「レーゲンボーゲンの浅生(あそう)くんですよね? 私、浅生くんのファンなんです、もし良かったら、一緒に写真撮ってもらっても良いですか?」



 そりゃあ、ファンはどこにでもいるはずだ。ごめん、隣りにいるのが私で本当にすみません。その女性は私の事を知らなかったようで、一瞬だけ私に視線を向けると、古川くんじゃないと呟いた。仕事で来たわけじゃない、プライベートで来ているので、仕方がない。

 サイン、写真? 私は、そそくさとその場から離れようとしたが、それは嘉隆くんが私の腰を引き寄せて止められた。今日の私の格好は、体型の隠れる、丈の長い上衣に下は、スラックスだ。帽子は被っているが、眼鏡を忘れた。今日、ワンピースじゃなかったのは、ワンピースはたまにでいいから、好きな服を着て、と言われたからだ。会う度に、ワンピースでいたので、嘉隆くんを逆に困らせたようだ。



「彼女も一緒ならいいけん」

「いやいや、邪魔しちゃ悪いし、私は向こうで待ってるから、嘉隆くん、ごゆっくり」

「三人でなら写真撮るじゃけぇ、それ以外は撮るつもりないけん」



 彼女という言葉に私は不躾な視線に晒される。こんな、格好じゃ、男同士って思われているかもしれない。彼女という言葉を強調してくれたが、それはそれで、不味くないか。付き合っている恋人と思われないか。その台詞に嘉隆くんは、気付いていないようだ。

 そして、あまり歓迎されていない視線が気に障ったのか、嘉隆くんの声のトーンが下がった。突然の広島弁。怖いってこれの事か! 確かに威圧感のある広島弁はちょっと怖い。

 それでも、一緒に写真を撮りたいという欲が勝ったようで、その後は、その女性の友人と四人で写真におさまった。写真では、流石に営業スマイルでした。プロだ、プロがいる。

 というか、私すごく居心地悪いのですが! それでも、私も営業スマイルと、いつもの、女性受けする、表情を作る。これなら、誰も文句はないはず、見た目にはイケメンに挟まれる女子二人だ。案の定、嘉隆くんのファンのお友達は、私を見て顔を赤くしてくれている。バレていないといいな、耳元で嘉隆くん、思い出したように、謝ってくれた。バレちゃいけない彼女発言した事に気付いたらしい。



「マリ姐さん!」



 今度は私が呼ばれた。視線を向けると女子大生ぐらいの女の子が私に声を掛けてくれた。ふと、ここが観光地だった事を思い出す。地元の人だけではないし、平日でもそれなりに人がいた。混み合うほどではないが、その中に私を知る人もいた様だ。

 マリ姐とは、十年ほど前から、唯一私が続けているミュージカルで演じたマリアという役どころから、来ている。ショートカットの髪型の男性のような見た目の女性で、マリア姐さん、マリア姐、マリ姐とどんどん短くなった。今でも、数年に一度行われるミュージカルのようなお芝居で、マリア役を演じていた。

 その呼ばれ方に嘉隆くんは、一瞬固まった。怒ってはいない、驚いているだけの様だ。それを軽く説明すると、納得してくれた。さっきまでの不機嫌さはどこにもない。



「ありがとうございます」

「こっちこそ、いつもありがとう」



 ふわりと女の子が喜ぶような、営業スマイルをすると、私のファンだという女の子は、私と嘉隆くんを見て黄色い声を上げた。手帳にサインをしてあげて、写真も一緒に撮った。何故か、その子には、嘉隆くんと二人セットで喜ばれているみたいだ。

 これで、良いのかな? 嘉隆くん、さっきまでとは違って、いつも通りなので、間違ってはいないはず。というか、最近の嘉隆くんは、ファンを喜ばせる様な行動に出る事がある。私たちは、三人で写真におさまって彼女は何度も頭を下げてくれた。こういう子ばかりじゃないのが、ファンなんだよね。

 なんか、嘉隆くん、私を守ってくれる行動をしてくれる。やっぱり、昔のこと気にしているのかもしれない。



「古川くんへのお土産何にする?」

「甘いものは外せないね、日持ちのするものがいいんじゃないの? あ、あと(あん)ちゃんにこれとか」

「良いね、これ、ちゃんと神社で祈祷されてるらしいよ」

「へぇ、すごいな。うちの甥っ子にも買って送ろうかな」

「嘉隆くんの甥っ子くんも受験生なんだね。良いんじゃないかな」



 受験生に人気のマスコットを模したもの。まぁ、持ってるかもしれないけれど、近所だし。それでも、嘉隆くんが選んでくれたものだから、それに決めた。甥っ子くんの分も買う事にした様だ。他にも、色々なものを買った。結局、古川くんへのお土産は、地元のお菓子に決まった。ほら、甘いもの好きだから。でも、お酒も好きなんだよね、古川くんは不思議な人だ。

 重いから、ここで有名なワインは今回はパスすることに。冬になれば牡蠣が美味しい季節になるので、牡蠣に合うというワインはその時にでも。古川くんにもこっちに来てもらおう。帰りが新幹線だと、お土産いっぱい買えないんだよね。仕方がない。

 実家には、子供達が喜ぶだろうお菓子。某仙台の有名な芸人さんたちオススメのマドレーヌなんかをチョイスした。


 観光目的なので、せっかく来たんだと、モアイと写真も撮った。大きい蛸のマスコットも写真に収めた。どれも、古川くんに送りつけるつもりだ。何故、モアイが居るのか驚いていたけれど、昔、チリで地震があって、その地震による津波がこの町を襲って、それから、友好が始まったとか、目が入っているモアイはここだけらしい。


 時間があったら、松島まで、足を運んでも良かったんだけど、ここからだと少し遠いのよね。また、機会があったら、って事になりました。日本三景はやっぱり、行きたくなるよね。



 南三陸町の名産がオンパレードな回です。マドレーヌはすごく美味しくておすすめです!

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