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虹の架け橋  作者: 藤井桜
本編
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秋風に揺れる、青と紫の風に触れる



 お盆にはやはり、帰る事ができなかった。八月には、大きな、イベントの参加があったからだ。一日だけでもと思ったのだが、さすがに日帰りにはきつい距離だ。二十代までの頃なら、いくら体力のない私でもやっていただろう。

 そして、嘉隆(よしたか)くんに稲刈りを手伝ってもらう事になってしまった。まぁ、選んだ時点で分かっていた。それなりに、付き合いが長くなって、この人の性格も分かってきた様に思う。



 天気予報を見ると、台風情報もあったが、天候悪化が予想されるのは週半ばなので、帰省時は回避出来そうだった。

 少しでも人手が欲しい、一家総出という言葉の通り、家族総出で、稲刈りに取り組む。今は、昔ほど広い範囲の稲刈りをすることはないのだが、それでも大変な事に変わりはないのだが。

 昔は、親戚一同だけではなく、近所の人にも手伝ってもらっていたらしい。昔の話になるが、田植え休みや稲刈り休みという言葉があったほどだ。学生も学校を休んで田植えや稲刈りに駆り出されるのが、常だった。


 (あん)は高校生になると、学校の授業の稲刈りがあるので、家の手伝いはしていない。今日は、近所の人に手伝ってもらうまでではないが、絵美も手伝いに来てくれた。



「初めまして、麻衣の大親友の田中絵美です」

「自分で大親友って言う?」

「良いじゃん、浅生(あそう)くん、流石のイケメンさんだ」

「それも、本人前にして良く言えるね」

「もう、麻衣ってば茶々入れすぎだってば」



 私と絵美の掛け合いは、昔から変わらない。その様子がおかしかったのか、嘉隆くんよく笑う。ぼそりと、絵美がイメージと違うねと、言った。レーゲンボーゲンの浅生くんも、古川くんも、そんなに笑うイメージがない。

 それでも、再開後は随分と笑う様になった。古川くんは、プライベートでもそんなに変わらないけれど、あ、いや、大笑いする事、何度か見た事あるから、良く笑う方なのかな。プライベートの嘉隆くんは、本当に楽しそうに笑ってくれる。



「お父さんがたばこにしよ…」



 周りが普通に方言をしゃべっているので、油断した。私は赤面して、顔を逸らすが、その言葉は聞こえていたようで、彼は驚いたような表情で私を見る。

 ごめん、見ないで。すごく、恥ずかしいよ。絵美がその様子を見てくすくすと笑っている。



「なして?」

「へ?」

「通じとるけぇ」

「広島でも言うの?」

「休憩のことでしょ、広島でも使うけん」

「というか、嘉隆くん、何故、方言?」

「麻衣が気にしてるようじゃけぇ、合わせてみたんよ」



 私に合わせてくれたようだけど、嘉隆くんはどこか楽しそうだ。たまに私をしずるように方言を使う。しずるは揶揄うの意味を持つ。滅多に使わないはずの方言が出た事が私にとっては、すごく恥ずかしかったが、嘉隆くんは違う様だ。



「方言出るって恥ずかしくないの?」

「恥ずかしいとは思わないかな。方言こそ、大事にしていかないといけない文化じゃない?」

「そうだね」

「まぁ、あんまり、方言使わないんだけどね」



 あ、残念な事に、さっきまでの方言は、標準語に戻ってしまった。ちょっと、勿体無い。方言、新鮮で良かったのにな。また、話題にしたら、方言使ってくれるかな。



「俺、怖くない?」

「何で?」



 怖いかと言ったら全然、怖くはない。嘉隆くんの方言はどちらかというと、優しく人を思いやるそんな感じの言葉だ。何故、そんなことを聞くのか不思議だった。不思議そうに見返すと、説明してくれた。



「広島弁って怖いって言われるから。それもあって、方言は、なるべく、使わないようにしている、たまに出ちゃうんだけどね」

「怖くない。嘉隆くんの方言、私、好きだよ」

「俺も麻衣の方言もっと聞いてみたいな。この辺も仙台弁なの?」

「ううん、どちらかというと、岩手の言葉に近いかな。驚いた時とかに、お母さん、ばばばって言ってる。じぇじぇじぇって聞いた事あるでしょう? それの派生みたいなの。お父さん、冗談でここ、宮手県だからって言ってる」



 そう、説明するが、ここ数時間で家族の方言混じりの言葉には、気付いていると思う。ただ、彼の産まれた広島と比べると言葉はかなり違うだろう。

 何年も前にやっていた、朝ドラでの有名なセリフは、見ていなくても分かるだろうから、それを、お手本にしてみたが、分かってくれたようだ。



「分からない言葉とかあると思う。気になったらいつでも聞いてね。特に、お父さんとかお母さん、方言強いし」

「ありがとう、でも今のところは大丈夫」



 九月の半ばになっても、まだ暑かった。台風が過ぎると一気に秋らしくなるんだけどね。でも、台風が来ると稲が倒れるなどの被害が出て困るのもある。適度に水分補給をとって、その日の作業は終わったのだった。

 なんか、嘉隆くんも、周りも平然としていて、普通に作業を続けている。嘉隆くんの人柄なのか、うちの家族が図太いのか良く分からない。



 夕ご飯の席で、私は明日の行動について、家族の意見を聞く事にした。明日は、嘉隆くんを誘って、この辺を案内する予定だ。夏は終わってしまって、海水浴というシーズンでもない、特に観光の名所になるところは本当に少ない。



「せっかくのデートに軽トラっていうわけに行かないだろ」

「私の車、使って良いからね」



 田舎では車は一人一台、って言うほどに必要な交通手段だ。ちなみに、うちの実家には四台ある。父と兄が主に乗る軽トラ、咲子(さきこ)さんの軽ワゴン、これは、咲子さん、幼稚園の送り迎えとかあるから、必須だ。そして、母のも軽だ。母は可愛いものが好きで、車も可愛らしい赤色だ。

 そして、兄の大型のワゴン、家族が多いし、悠兄の好みが反映されたものだ。これに、乗ってるの見ると本当にヤンキーだなと思う。


 まぁ、流石に軽トラを借りるつもりはなかった。デートっていうわけでもないんだけど、お言葉に甘えることにする。人の多いところに行く事を考えると、身バレすることが少し心配だったが、まぁ、そこは開き直っている。嘉隆くんのファンとか遭遇する事があるかもしれない。私はどちらかというと、そんなにTVとか出ているわけじゃないので、心配はしていない。一応、気にして、服装は選んだ。

 咲子さんの軽自動車は鮮やかな青色で可愛いので、運転して見たかったんだよね。


 そう考えると行くのは南かな。南三陸町方面に行く事にする。絵美のお父さんの実家のある町だ。気仙沼(けせんぬま)市内は流石に身バレしている。あっちは、大島架橋が出来たので、大島に行くのも楽になったし、他にも観光スポット色々あるんだけどね。

 そういえば、大島も朝ドラで有名になったっけ。主にあの兄のせいで、出来れば行きたくない、兄とはそんなに似ているわけじゃないんだけど、私が歌手だと言う事は有名な話な様で、顔を知られている。


 明日は月曜日で、絵美は仕事なので、誘えなかった。地元なので、色々と案内してもらえたんだけどね。今日も、夕ご飯の支度があるからって早々に帰って行った。手伝ってくれてありがとう、と言うといつもお米もらってるから、少しでも手伝うよ、という事だった。絵美が一番、強かかもしれない。



「蛸とか銀鮭とか、有名なので、明日は、美味しい海鮮丼食べに行こうか」

「今日こんなに、海産物食べているのに、贅沢だな」

「普通に食卓にのぼるよ。珍しいのでは、フカとかマンボウ?」

「マンボウって食べちゃうの? 水族館にいるものじゃないの」

「酢味噌で食べると美味しいよ」

「そうなのか、フカは知ってる。ここだと、フカヒレ有名だよね。サメはワニと言って、広島でも食べるらしい」



 お客さんが来ると食卓に並ぶのは、お寿司と昔から決まっていた。何故かは分からないんだけど。姪っ子甥っ子が多いので、お寿司は争奪戦だ。好きなものからどんどん無くなる。

 お客さんが優先でしょと、咲子さんに叱られてる。まぁ、どちらかというとお酒が進んでいるようだし、明日も食べに行こうと思っているので、無理に取り上げるようなことまでしなくて良いと思う。咲子さんにそう告げるとごめんねと謝られた。



 そういうわけで、明日のドライブは南部の南三陸町方面になった。北部の気仙沼市内方面はまたそのうちにでも。きっと、行く機会もあるでしょう。



 サメは広島でも、宮城でも食べるそうです。一気に、方言のキーワード回収回ですね。蛸も広島の郷土料理にたこめしがありますね。

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