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虹の架け橋  作者: 藤井桜
本編
41/415

過去の告白に君を泣かせてしまった(side レーゲンボーゲン)

 


 麻衣のツアーは四月の初めに最後の東京公演を無事に終える事が出来た。麻衣の希望で東京で縁のある人に、遥を選んでくれた。広島公演の時に、嘉隆(よしたか)だったので、広島と東京のどちらもレーゲンボーゲンの出演になった。

 レーゲンボーゲンのデビュー曲である『空に還る』と麻衣のデビュー曲『空の向こうに』が選ばれたのは、きっと、ツアー最終日が、麻衣の新たな始まりを意味するからだろう。


 ちなみに、広島公演で歌ったのは、レーゲンボーゲン側が『夢のカタチ』で、一番売れた曲なので、知っている人も多いだろうと選ばれた。麻衣の方は『星の夜想曲』だった。

 ヴァイオリンが奏でる音に合わせて歌う優しいバラードだ。基本、麻衣が歌うツアーの曲のセットリストは変わらないのだが、ご当地ゲストによって、二曲ほど増える。それは、ゲストの希望と麻衣の希望で決まるらしい。


 レーゲンボーゲンの好きな曲である、『虹』と『Mother(マザー) port(ポート)』はセットリストに含まれていたために、『星の夜想曲』になった様だ。これは、遥が気に入っている曲だ。広島と東京のどちらの公演も、麻衣の歌う『虹』の後に、レーゲンボーゲンが登場する演出はとても良かった様で好評だった。

 彼女の落ち着いた声で「ここから空は見えないけれど、みんなに見える虹、確かにここにあるから、レーゲンボーゲンと言う虹が」そう、呼ばれての登場だった。



 四月に入り、舞台での仕事が入るという事で、麻衣から、参考になるか分からないが、過去の作品を見ないかと誘われた。一緒に、遥も誘った様だが、断られたらしい。後で、DVDを貸してくれという、頼みはちゃっかりしていた。


 デビュー作から恋愛ドラマ、そして、城咲(しろさき)広大と一緒に出演したサスペンスドラマ。最後の方は、見る事が辛くなって来たのだろう、悲痛な表情で、画面を見つめていた。

 しかし、目は逸らさない。真っ直ぐな瞳に涙が浮かんだ。堪えきれない涙がこぼれ落ちると同時に嘉隆は彼女を引き寄せていた。彼女の肩を引き寄せて、涙を拭い、自分の方を向かせる。同じ目線で、彼女の瞳を覗き込む。見ていて欲しくなかった。別れたとはいえ、かつての夫を瞳に映す姿を見たくはなかった。


 我儘になっているな、と皮肉気に笑って、彼女に口付けた。俺だけを見て、そう告げるように。慣れない口付けに、目元を赤く染めながらも応えてくれる。



「ねぇ、俺の話、聞いてくれる?」

「嘉隆くんの事、話してくれるの?」

「うん、あんまり、聞いていて、良い話でもないんだけどね。それでも、麻衣に話しておきたい。知って欲しいんだ。なんの話か、想像付くと思うんだけどね」

「それって」

「聞いてくれる?」



 麻衣の言いたい事を遮って、もう一度、告げると麻衣は頷いてくれた。こないだ、話してくれた彼女の過去の話を聞いて、自分の事も話しておかなければいけないと思った。

 麻衣には、幸せな結婚生活を送っていたと、思われていたらしい。彼女もまた、嘉隆と同じ様に、過去の詮索はしなかった様だ。現実は違う。結婚に裏切られた愚かな男の話だ。

 遥には、いつか、その顔の良さで、騙されるんじゃないかって、言われた事もあった。


 麻衣は瞳を濡らしながら、真っ直ぐな瞳で聞いてくれた。話が終わると、止まらなくなった涙を流したまま、嘉隆の前妻に怒ってくれた。それだけで、胸が熱くなって、さっきよりも強く抱きしめた。その後に続いた、盛大な褒め言葉に嘉隆は、顔を染めて照れながら、地元の言葉で、照れまくったのだった。


 ああ、誰よりも愛しい。泣かせたくは無かったが、嘉隆のために泣いてくれるのが、嬉しかった。過去の話は、聞いていて、とても辛いものだろう。それでも、前に進むきっかけになってくれたら嬉しい。



 ここでようやく過去の話をする事が出来ました。二人はお互いの過去の話を知らないので、間違って会話に入れちゃわないか、確認作業が大変でした。薄っすら、喋っているところはありますが、はっきりとは言ってません。

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