060話:あのよ
何もかも真っ黒だ。
俺、どうやら死んだらしい?
死んだ実感はあるんだけど、どうして意識があるん?
異世界なんだし死後の世界とかもあるのかな。
どうやら俺、真っ暗な場所で漂っているらしい。
しかし、ハデに死んだな。
血がブシャーって出てたもんな。
色々丸投げしといて良かった。
俺いなくても村は問題無いと思うけど・・・投げとくもんだね。
いやいや、計算よ?
マジね、うんうん、いつこうなっても問題無いように丸投げしてたんだからね。
すいません、嘘です。
めんどくさかっただけです。
いなくなってよかった~とか言われてたりして。
面倒事押し付けられなくてすむぜ〜なんてさ。
あ、マジでそんな気がしてきた。
俺、死んじゃってよかったかも?
いかんな、死んでもネガティブ思考なんて。
ぽじてぶぽじてぶ・・・
しかし、何なんだここ?
「「ぬ・・・。かたまった・か・・・。」」
声のした方を見ると、ぼんやりと大きな塊が見えた。
その塊がのっそりと動く。
塊、というか、大きな人がうずくまっていたようだ。
立ち上がっても真ん丸だぁ~。
見上げるほど背が高くて横にも大きな、まぁるい人影。
あの悪魔の同類か?
個体識別はできるけど顔が覚えられない不快な感覚は、クソ悪魔の嫌がらせじゃなく悪魔の共通点なんだろうか。
(ここって、死後の世界ってこと?)
声に出したつもりだったが、声は出ない。
(あ、体が無い。)
「「ぬぅ・・・ここは・・・あー・・・それでいい」」
(いや、それでいいって。めんどくさがってません?)
「「ああ・・・」」
(最短文で即肯定しやがった。)
「「おまえ・・・ん?・・・いいや、いけ・・・」」
そう言って悪魔は再びうずくまろうとする。
(いやいやいやいや!いくらなんでも端折りすぎでしょ!意味わかんないし!行けってどこに?)
腕があったら思いっきり揺さぶってやりたい。
「「はぁ~~~~~。」」
(ため息つきたいのはこっちだよ!)
地響きのようなため息を吐いた悪魔に怒鳴りつけた。
つもりだったけど声が出ない。なんかイライラだけが募る。
「「お前・・・1人殺した・・・そいつ・・・5人殺した・・・6人分・・・お前の中・・・お前死んだ・・・一人分で固まった・・・行け。」」
(いや、わかんねーよ!)
とにかく、めんどくさいのか、言葉が不得手なのか、会話がなかなか進まない。
話しても一文字でも短くしようとするから意味が分からん。
こうして俺は、この”わけわか”な状況下でまんまる悪魔との激戦に身を投じることになったのだった。
**
(だぁ~かぁ~らぁ~、ここはどこで俺は今どんな状態なんだよ!これ、18回目だからね!!)
「「ここはここ・・・おまえ・・・。」」
そう言って、丸悪魔はめんどくさそうに俺の方を指さす。
ぬぁ~~~!話が進まん!!
俺は頭をかきむしって吠えまくった。
手も頭も無いし声出ないけどね。
雰囲気よ雰囲気。
こうして俺は、43回目にしてようやくここがどこなのかを知ることができた。
「「はぁ~・・・ウザイ・・・ここ、俺の世界。」」
ハイ、ありがとうございます!!
なんにもわかんねぇよ!!!
「「お前ら死ぬと、ここに来る。」」
ぬ?
(ってことは、やっぱりここは死後の世界?
いやいや、おまえの世界って言ってたよな?
ってことは、死後の世界とやらに行く前に無理矢理作られたワタリビト専用窓口?)
「「死後の世界、無い。」」
(あ、そうなの?)
「「・・・・・・・・・・・・」」
そのままだんまりに入りやがった!
(死後の世界が無いならどうして俺はここにいるんだよ。
他の奴らは?迷彩男が俺の中ってどういうことだよ。)
「「もういいだろう・・・行け・・・」」
(良いだろうじゃねぇよ!で、だいたいどこに行けって?)
「「はぁ~~~・・・そこに・・・?・・・無い・・・?」」
首をかしげる悪魔・・・かけらもかわいくない。
「「おまえ・・・グズ・・・」」
それだけ言ってうずくまってしまった。
(だからちゃんと説明を!)
「「モタモタしてたから・・・出口・・・無くなった」」
(無くなったですとぉ~!っていうか、モタモタしたのはお前のせいだろうが!)
「「・・・・・・・・・・・・」」
こいつ・・・。
本格的にダンマリモードに・・・?
スー・・・スー・・・
寝て・・・やがる。
見た目と合わねぇ寝息たてやがってぇ!
苦労して何とか状況が分かるまで辛抱強く、途中何度も諦めようとする悪魔を激励?しつつ会話を続けた。
ホントに苦労したよ。
誰も褒めてくれないから自分で褒めよう、よくやった!
で、分かったこと(多分に推測含む)。
どうやら、この世界で生物が死ぬとその魂は霧散して消滅するらしい。
しかし、俺たち異世界から拉致された被害者達は例外で、クソ悪魔の作った?システムに保護されていると。
そんなわけで霧散はしない。
異世界から来た俺たちがこの世界に混じる?事を防ぐためらしい。
異世界人の手にかかって死んだ場合は、殺した相手に吸収される。
それによってこの世界に交じることを防止したんだって。
俺の中に6人分ってのは、俺が殺した迷彩男と、迷彩男が殺していた5人合わせてってことで、それが俺の中にあったと。
なんか気持ち悪いと思ったけど、どうやら俺の考える魂とこいつらの言う魂とは意味が違うようだ。
いや、ちがうな、俺が勝手に魂と呼んでいるだけで、こいつはそう言っていない。
どう表現すればいいんだろう、こいつの足りなすぎる言葉から推測するしかないんで見当違いなのかもしれないけど、仮称”魂”は、記憶情報を持った”命”そのもの、って感じか。
命の部分は経験値として有効活用できるけど、記憶の方は利用できないみたい。
どうもこいつの話からすると、この記憶部分がこの世界に混ざることを嫌っているように感じた。
だから他人の存在が俺に混ざるとか、そう言った気分の悪いことにはならないようだ。
と言うことで少し安心。
でだ、異世界人同士で殺し合った場合は保護先が殺した張本人になるわけだけど、俺みたいに、異世界人の手によらずに死んでしまった場合は、俺の仮称”魂”は行き場所が無いことになる。
この世界の生物には受け入れるためのシステムが組み込まれていないし、病死や事故死の場合だって受け入れ先が無い。
と言うことでここを作ったと。
ふぅ、ようやくここまで理解できた・・・のか?推測の方が多い気がするけど。
って、まだ分かったのって、一番最初の質問だけじゃないか!!!
真っ暗なままだし、俺、眠くもならないし腹も減らないから時間の感覚が分かりにくいけど、たぶん週単位で時間かかってたんじゃないかって気がする。
いかんぞ、こいつといると俺が俺でなくなる。
(そういえば、元の世界での俺はどうなってるんだ?)
ふと気になったことを聞いた。
最後の襲撃時に、時間稼ぎのハッタリでこっちが死ぬと向こうも死ぬ、なんて言ったことがあったけどさ、実はまったく思ってもいないことを言ったわけじゃないんだ。
だって、魂の一部をこっちに持ってきたのなら、つながったままって考えることもできるしね。
どっちかが死んだらって考えちゃうよね。
「「・・・言ってよかったか?・・・むぅ・・・めんどうだ・・・いいか・・・もうすぐ死ぬぞ。」」
やっぱり向こうも死ぬのか。
(なぁ、俺と取引しないか?)
「「・・・・・」」
興味くらいは引けたか?
(俺の中に魂(?)がいくつかあるんだろ?それ使ってさ、向こうの俺、死なないようにできない?)
「「ん~・・・4ついる。」」
(マジか!ダメもとで言ってみたけど、4つって・・・命のことか?って4つも?)
「「世界をこえる、無駄多い・・・めんどう・・・」」
最後に本音が出たけど・・・どうせこっちは死んじゃったんだし、向こうの俺は救えるなら救いたい。
一応まだ向こうには母親もいるし、仕事も残ってるだろうし。
(契約成立でいいんだな?)
「「あ~・・・え~・・・まぁ、いいか・・・。」」
不安だなぁ!
まぁいい、時間が無限に消費されそうだから。
とにかく、向こうの俺を救うために4人分の命を差し出した・・・んだよね?
特に何かあったわけじゃないから実感が欠片も無くてすごく不安なんだけど。
ええい!この面倒くさがりな悪魔を信じるしかない。
・・・やっぱり凄く不安なんですけど。
**
疲れた。
体が無いので疲れるはずがないのに、疲労感がハンパない。
このままいつでも過労死できそうだ。
常に真っ暗な場所で時間の感覚があいまいだからか、何年もここにいる気さえする。
やることないからいっそのこと真相を暴いてやろうなんて無謀な挑戦を始めてしまったけど、俺、何やってるんだろう。
ってか、俺どうなるんだろう。
本来なら出口とやらから出ていく予定だったの?
出て行ったらどうなってたんだろう。
そこら辺を聞きだしたらまた途方もない時間がかかるだろうから諦めた。
とにかく、一度始めたんだから真相関係の話は諦めないぞ。
散々苦労に苦労を重ねて、怠惰な丸い悪魔との会話を続ける。
面倒になるとだんまりを決め込むし、気が付くと寝るしでもう、体があったらきっとストレスで血管ブちぎれて失血死が確定だったわ。
・・・何年経っただろうか。
なんて思えるくらい延々と話しかけ続けた成果というか、時間はかかるけど一応返事をするようになってきた。
きたのか?
最初こそかろうじて会話があったものの、それ以降は基本無視、たまに「あ~」とか「う~」とか声を発するだけだった。
それでも根気よく延々と話しかけ続けた。
とにかく手当たり次第に質問し続け、それらを最低でも100回は繰り返しただろうか。
とうとう根負けしたのか、悪魔の回答があ~う~から単語に変わった。
質問から回答までかなり時間がかかるけど。
質問したことを忘れたころに返事が返ってくるような状態だけど。
一応回答があるだけ進歩だよね。
ようやくたどり着けた会話?を続け、やっとのことで新たな交渉を取り付けた。
残っている2人分の仮称”魂”の内、一つを悪魔に差し出す代わりに、こちらの質問には可能な限り迅速に、単語ではなく言葉で、嘘偽りなく回答すること。
期間は俺がここにいる間。
すでにここまでで疲労困憊です。
体無いけど。
気分だけだけど気力を振り絞る。
(で、そもそも俺たちは何のためにこの世界に連れてこられたんだ?)
質問をしたはいいけど、回答が来るまでのんびり待つ。
これが大変なんだよ、なんせ、いつ返事が戻ってくるのか分からない。
可能な限り迅速にって、即答のつもりだったんだけどさ、こいつの判断では、優先順位はあげるけど即答なんて聞いてないと。
マジ後悔。
苦労して聞き出した情報をまとめて整理して・・・結局分からんから推測をだいぶ追加するという作業に取り掛かった。
そもそも、この世界には魔素は無かった・・・ようだ。
かつてある国の王が、不老不死を求めて悪魔を呼び出した。
悪魔は1万人の魂と引き換えに異世界から魔素を呼び込み、その魔素によって王とその国民は不老となった。
しかし、呼び込まれた魔素は王たちのためだけに留まらず、瞬く間に世界中に拡散し、あらゆるものに浸透していった。
その結果、あらゆる生物が魔物化してしまったと。
困った王は再度悪魔を召還。
さらに1万人の魂を代価に、ヒト種は魔素に耐性を持つようになった。
千年を超えた頃、諸悪の根源、アホな王が三度悪魔を召喚して、世界から魔素を無くせと言い出した。
丸悪魔もその理由までは知らないそうだけど、魔素を無くすには対価が少なすぎると断られたらしい。
で、どこがどうなったかは分からないけれど、異世界から魂をたくさん召喚して世界中に放り込むことになった。
魔素を無くす方向で減らしていく、的な契約にでもなったのか?
まずは魂が入る肉体を魔素で作ることで一気にある程度消費してしまおうと。
さらに特別な力(レベルアップやスキル、魔法など)を与えて、その力を使うたびに魔素を消費していくように設計されたみたいだね。
力を使って消費した魔素を回復するためにも周囲の魔素を吸収するようにされてるみたいだし・・・要するに生きた浄化装置ってことだ。
その上この世界の生物を殺すことで、生物に内在する魔素を吸収して取り込み強化されるようになっており、強化することで浄化能力や消費する魔素の量が増えるようになっていくと。
なるほどなるほど。
俺たち、空気清浄機代わりに拉致られたわけか。
自由に生きろなんて言うわけだね。
ユルスマジ。
**
「「おい」」
突然声をかけられて驚いた。
向こうから声をかけてくるなんて、いつぶりだろうか。
あ、時間の感覚無いからわからん。
「「門開いた・・・とっとといけ」」
指さす方には、なんだか禍々しい門、そして二人の少女がいた。
真っ黒な世界に真っ黒な振袖のような服を着た二人は、双子のようによく似ていた。
ゆっくりと開いてゆく門の先には、なんだか波紋のように歪んだ光景が。
森か?
「「一つ選べ」」
何の予備知識も与えられずに、いきなり自分の視界に文字の羅列が浮かんだ。
あ、これエイルヴァーンのスキルだ。
って、死んでるのに意味あるのか?これ。
「「閉まるぞ」」
な!
はやすぎだろうが!
ってか、サービスってなんだよ!
そもそもこれ、入らないとどうなるの?
いい加減説明しろって。
なんて間にもどんどん小さくなる歪み。
とにかくゲーム時代もお気に入りだったスキルをポチって飛び込んだ。
「「あ、少し時間かかる」」
何が?!
俺どうなるんだよぉお~~。




