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061:森の中

 森の中にいる。

 ?

 どこここ?。

 これが死後の世界ってこと?

 いや、あいつはそんなの無いって言ってたよな・・・あぁ、でも、俺たちは混ぜるな危険扱いみたいなことも言ってたから、幽閉場所って感じなのか?

 まてよ、俺、魂残してた。

 確か、俺の中に6つあるって言ってたよな。

 向こうの俺を救うのに4つ、丸悪魔にちゃんと答えさせるのに1つで5つ使ったから・・・と、俺自身のはどうなったんだっけ?

 俺のと合わせて残2(ざんに)?

 え?うそ・・・まさか俺、生き返った?

 魂一つ消費して生き返った、的な?

 モヤモヤする。

 クソ、スゲェモヤる。

 「ちゃんと説明しろよ!」

 自分の声が出たことにちょっと感動しちゃったじゃないか。

 「「まぁ、だいたいご想像の通りですよ。」」

 出てきやがった。

 「ってことは、俺の魂的なものは俺のままだってことでいいんだよな。」

 いつものように、現れたというよりもいつの間にか目の前にいたクソ悪魔。

 最初からそこにいたのに俺が気が付いてなかったみたいな。

 「「ええ、肉体を再構成するために残っていた一つ分のエネルギーを消費したとお考え下さい。

 良かったですよ、あのままもう一つ使われていたら、貴方は彼の物になっていました。」」

 ・・・やばかった、あの時追い立てられるように入ってなかったら、確実にもう一つ使ってあいつとの会話を続けようとしてたよな・・・。

 「ところで・・・いねぇし。」

 逃げられたか。

 モヤモヤは解消されたけど。

 それにしても、周りに誰もいないんだけど・・・。

 なんで?

 皆はどこに?

 村は?

 ん?そういえばこの服・・・なんでこんなもん着てるんだ?

 白い簡素な服。

 この世界に落とされたときに着ていたやつだよな。

 え?

 嘘だろ?

 さすがにそれは無いよな。

 恐る恐るステータスを確認する。

 次の瞬間、俺はその場で膝からくずおれ、両手を地についた。

 ●|⌒|_

 ↑こんな感じに。

 

 氏 名:シン(15)/飯田 真一(48)

 性 別:男  種 族:ヒューマン

 職 業:超越者  レベル:1   経験値:0 

 生命力:5   魔 力:5   気 力:5 

 筋 力:5   体 力:5   敏捷性:5   器用さ:5 

 知 識:5   知 恵:5   魅 力:5 

 魔法 :無し  スキル:商会(MAX)  所持品:無し

 装 備:シャツ(服)・ズボン(服)・パンツ(服)・靴(服)肩掛けバッグ(袋)


 レベル1だよレベル1!

 マジか、ウソだろコレ。

 ドッキリかなんかだろ?

 クソ悪魔ぁ~!

 迷彩男を倒したとき、レベル20から40になってたからその分の経験値、10万点くらいが減るのは理解できるさ、使っちゃったんだから。

 そこまでは納得するさ!

 まさかのレベル1・・・。

 装備も所持品も初期化って。

 ひどすぎない?

 詐欺だ~!

 喚き散らしても無駄、と言うか、魔物を呼んじゃうから心のなかで思い散らす。

 諦めるしかないのね!

 納得はしないけどね!

 納得はしないよ!マジで!!

 はぁ・・・所持品までリセットかよ。

 しかも、ここどこ?

 ひょっとして場所もリセット?ってことは初めてこの世界に来た場所?

 わからん、けど、何となく見覚えがあるような無いような。

 真上を見上げて思い出した。

 あ、やっぱり初期地だ。

 空が見えないほど生い茂った樹々、風で揺らぐ枝、その時かろうじて覗く青い空。

 夜になれば月明かりすら届かないほど真っ暗になるんだよな。

 懐かしい。

 ひたすら怖くて震えて朝を待ったっけ。

 まさか、時間までリセットされて無いよな?

 さすがに無いか、今昼間だもんな。

 あの時は夜中、真っ暗闇だったし。

 それに、落ち着いてよく観察すれば、ちらほらと融け残ったような雪も見えるし。

 ってことは、もうすぐ春かな?

 そんな中、途方に暮れ四つん這いで呆然と地面を見ている青年(中身オッサン)一人。

 いかん、惚けてる場合じゃない。

 ここが最初の場所で、時間軸がリセットされてないなら、俺、相当ヤバいんじゃない?

 レベル1でここはマジ不味い。

 あの時と違って、魔物の氾濫からかなり時間が過ぎているってことだろう、当然魔物の量もそれなりに回復しているに違いない。

 氾濫直後で魔物が激減した状態でも、リルベアとかゴブリンとか、魔物にはそこそこ遭遇したのに。

 普段のこの森では、10分歩けば魔物に当たる的な激やば空間だったはず。

 ゴクリ。

 今の状態の俺にとって、頼みの綱は生き帰る直前に選んだスキル”商会”だ。

 あの短時間で、あの膨大な量のスキルと魔法の中からよくぞこれを見つけ出したものだ。

 誰も褒めてくれないから自分で自分を褒めたたえよう。

 凄いぞ、俺。

 ドキドキしながら商会を起動する。

 この商会、本来は大商人レベル90で解放されるスキルだ。

 町や村を指定して、売買する商品を設定すると、自動的に販売と買取をしてくれるというもので、まさに”商会”なのだ。

 熟練度MAXまで上げているので10店舗まで商店を作ることができる。

 それぞれの店舗には1~5人までのNPC店員を雇うことができ、店員が増えれば取り扱える商品の幅や売り上げなども増える。

 さらに、それぞれの店舗には貯蔵庫の1/3程度のアイテムを保管できる倉庫、しかも時間停止機能付きが付いている。

 ここまでは、本来のスキル効果を考えれば金策や拠点製造に必要な大量の資材集めを終えるとあまり活躍の機会が無くなるスキルといえる。

 重要なのは、スキルに付随する商品管理機能だ。

 商人系のスキル、貯蔵庫シリーズは、第一から第四まであるけれど、それぞれが独立している。

 なので、第一から第三へアイテムを移動しようとすると、一度第一から取り出して第三へ仕舞わなければならない。

 これが大量に移動しようとすると、とてつもなく面倒なのだ。

 特にこの世界では、ゲームと違って実際に自分で貯蔵庫に入って、自分で探して持ち出さなければならない。

 せめて一覧表でも見られればいいんだけど、どこに何が入っているのか調べるだけでもかなりの時間を要してしまう。

 それが、商会の商品管理機能を利用するといとも簡単に移動、取り出しができるようになる。

 もちろん各店舗の倉庫や手持ちのバッグ、MODで導入した簡易貯蔵庫の中身まで管理できるというとんでも機能。

 ひょっとすると、まだ開放していなかった貯蔵庫の中身も出し入れできるようになるかも、との淡い期待でこれを選んだわけ・・・ではない。

 今にすればそこにすがりたいけど、あの短時間でそこにまで思い至れる程、俺は理性的ではいられなかった。

 金稼ぐのに使える。

 単純にそう思ったんだよ、あの時はね。

 いろいろリセットされた事が分かった現状では重要度がはるかに増してしまった。

 たのむ!期待通り動いてくれ。

 祈るようにスキル商会の管理機能を開く。

 目の前にタブレットのようなものが現れた。

 両手でつかむと、在庫管理と書かれたボタンをタップする。

 全身に鳥肌が立った。

 「ありがとう。」

 思わずつぶやいてしまった。

 「そしてグッジョブ!あの時の俺。」

 スキル 商会 は、ゲームどおり機能してくれた。

 いや、レベル1で使えてるんだからそれ以上か。

 バッグから簡易貯蔵庫から、第四貯蔵庫まで、バッチリ中身を確認できるし、中身もちゃんと入っている。

 イカンイカン、感動してる場合じゃないんだった。

 大急ぎで、今必要な装備を取り出して装備しなきゃ。

 スキル確保のために転職を繰り返していた時愛用していた、レベル1でも装備できる最良装備の数々だ。

 超越者になって不要となった後に売らなくてよかった。

 俺の具、飯田真一のパッシブスキル、捨てられない貧乏性が役に立つ日が来るとは。

 装備を選択して取り出し指定をすると、目の前に装備品を乗せた黒い円形の台座が現れた。

 早速お着換え、装備品を台座からすべて取ると、台座は細かいブロック状の粒子になって消えていった。

 相変わらず鎧の装着はめんどい。

 ゲームみたいに瞬間装着してくれたらいいのに。

 俺自慢の転職用装備は、全身黒。

 この世界では結構目立ってしまうのがちょっと難点だ。

 まずインナーは、物理に強いオリハルコンと魔法に強いミスリルを組み合わせて作ったチェーンシャツ。

 ボトムスはダンジョンボス、闇の眷属から採れる素材で作ったスラックスっぽいズボン。

 アーマードホーンブルの希少部位を集めて作った胸当。

 ミスリルベースの手甲や脚甲。

 疾走モードでのスタミナ消費を大幅に減少させるブーツ。

 耐熱、耐冷気、耐腐食など、各種耐性を付与したワイバーンのロングコート。

 ミスリルの兜、は、MODで外見を左耳に付ける装飾品に変更してある。

 左の手甲に隠れるように魔法攻撃力強化、右には物理攻撃力強化のブレスレット。

 左の指には各種耐性アップの指輪を4つ、右は地、水、火、風属性強化の指輪をそれぞれ1つずつ。

 刀身が高熱を発するロングソード。

 速度強化と、一戦闘に一回という制限付きだけどウインドカッターが撃てる二本一対のショートソード。

 命中補正が付いたスローイングダガー。

 連射速度強化のクロスボウ(MODで見た目はライフル)。

 時間停止機能付きのバックパック(MODで見た目はウエストポーチ)。

 もちろんどれも限界まで強化済みだ。

 さらに、一度だけ生命力が尽きると即50%まで回復できる消耗品のネックレスも装備。

 ポーチにはポーション類を詰め込んだ。

 なんせレベル1だし。

 懐かしい。

 いや、実際自分自身が装備するのは初めてだけどね。

 ゲームではかなりの期間お世話になった装備だ。

 完全に安心はできないけど、とりあえずここが最初にいた場所ならやっていけるだろう。

 ようやく落ち着けたので、改めてじっくりと商品管理で貯蔵庫内を確認する。

 ぬ?

 第一貯蔵庫の中身が元に戻ってる?

 あ、簡易貯蔵庫もだ。

 いきなり無くしたショートソードと補正付きの斧がある。

 拠点をバラされて詰め込まれていた資材は村に運び出したはずなのに、また詰め込まれている。

 まずい。

 これ、補充じゃなくて回収されてたとしたら・・・貯蔵庫内の資材を大量に使ってる村は惨状では?

 やばいぃ。

 ・・・そうでないことを祈ろう。

 無信神者の祈りなんて意味は無いけど。

 お願いしますクソ悪魔さま、村が惨状になってませんように・・・。

 なってたら両替機燃やす。

 逆に、この世界で新たに入れたもの、主に魔素抜き中の食材や魔石はきれいに無くなっている。

 まぁ、戦闘前にほとんど運び出してたからたいして残ってはいなかったけど。

 やっぱり問題は資材関係か。

 はぁ・・・気が重いなぁ。

 村に戻らずにバックレちゃおうかな・・・いやいかんな、さすがに無責任が過ぎる。 

 ここでウダってても仕方ないんだけどね。

 切り替えていこう・・・切り替えなきゃね。

 胃が痛い。

 村に行くのが怖い。

 遠くからそっと覗いてみようか。

 最悪の事態だったらまず土下座だな・・・。

 うん、そうしよう。

 みんなやさしいから、きっと許してくれるさ。

 さて、村の方角が分からないから、適当に歩いてまずは森を出ないとな。

 あ、そういえば騎乗用のモンスターがいたな。

 トライコーン(三本角の馬系魔獣)は足場が悪くて怖いなぁ。

 足の骨折なんて馬には致命傷だし。

 骨折するのか?するよな、現実だし。

 ウルフ系なら問題無く動けそうだし、ブリザードウルフにするか。

 騎乗用の馬や魔物などは、大型アイテム扱いのため第四貯蔵庫に入れなければならない。

 なので今まで使うことができなかった。

 ほんと、商会 選んでよかったよ。

 ブリザードウルフを呼び出す。

挿絵(By みてみん)

 先ほどと同じように台座に乗った、微妙に青みのある白銀の狼が現れた。

 騎乗出来るだけあって馬のようにデカい。

 シルバーウルフの特殊個体で、足場を凍結させる能力があって、水の上も走ることができる。

 全力疾走でのスタミナは馬系に及ばないが、速度は同レベルだし、水の上も走れると言うことでデカい川や湖をショートカットする時によく使った。

 ゲームでは騎乗化すると攻撃しなくなるから、水の上を走れるという能力は、騎乗して水の上を走って初めて知ることになる。

 だからこの能力を知るプレイヤーは少ない。

 レアなうえ、戦闘力を当てにして従魔化するプレイヤーがほとんどだからだ。

 下手すると、騎乗化していても気づかないプレイヤーもいるかもしれない。

 だって、ステータスには表示されないからね、その能力。

 俺も、操作ミスって騎乗したまま深い川に落ちなかったら気が付かなかったよ。

 最初バグかと思ったくらいだもん。

 しかし・・・ブリザードウルフと言うからにはキンキンに冷えているのかと思ったけど、普通に暖かい。

 うんうん・・・モフモフではないか。

 少々デカいが、ワシャワシャしてやろう。

 なんて、ひとしきり堪能してしまった。

 いい加減出発しなければ。

 装着済みの鞍にまたがって森を疾そ・・・ちょ、ストップっ!

 想像以上に怖かった。

 小枝なんかもバシバシ当たるし。

 防具のおかげで痛くは無いけどさ。

 それでも怖いもんは怖い。

 遊園地なんて子供のころ以来行ってないから知らなかったなぁ。

 絶叫系NGだったんだな、俺。

 首をグルんと曲げて、不思議そうにこちらを見るブリザードウルフ。

 かわええやないけ。

 「ゆっくり行こう。」

 ブリザードウルフにそう言って、再び走り出した。

 あぁ、名前つけてやりたいなぁあぁあ!

 だいぶ速度は落としてくれたけど、まだ結構怖い。

 けどがまんだ。

 とにかく森を抜けるまで。

 もつかな、俺。

挿絵(By みてみん)

リアル版・・・こっちの方がモフってる。

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