↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/212

028話:建設

 さて、時間があまり無いのでチャチャッと取り掛からなければならない。

 ハンター用の小屋は、中央に広い部屋、その周囲に6畳ほどの個室で囲んだだけの簡単なものにした。

 ログハウス風で工期を時短、中央の部屋のど真ん中に囲炉裏風のテーブルを置く。

 囲炉裏は暖房とコンロを兼用できる優れた熱源だけど、この世界は基本椅子社会なのでテーブルの中央に埋め込むような形にした。

 囲炉裏から出た煙は天井に開けた穴から排出。

 天井から吊り下げられる金具も鍋も用意したので、一応調理もできる。

 後は勝手に使ってもらおう。

 すぐ外に井戸も設置、これは村のシステムを利用したのであっという間に完成した。

 反対側にはボットン式のトイレも作ったし、ゴブリン用に購入した小屋がとりあえず不要になったので、ハンターの作業場とか物置として2棟隣接して建てておいた。

 これからの冬に備えてってわけじゃないけど、それぞれを隣接させることで移動で外にいる時間を減らしてみたけど、使う人次第だからどう使うかはハンターたち次第だ。

 あと必要なものがあるなら、その都度対応するしかない。

 次に手を付けたのが、村の外、道の整備だ。

 やはり今のままでは森を抜けるのに時間がかかる、雪が降り始めるまでにあまり時間が無いだろうけれど、少しでも手を付けておきたいところだ。

 俺とトウリョーが切り株周辺を掘り、斧に持ち替えてクマと協力して根を切ると、ロープをかけてオヤカタ、アオン、ユーシンの軽トラで引き抜く。

 本当なら、残った根も掘り出して処理しないと、何年かしたら陥没するんだよね。

 残った根が腐って空洞化、雨とかでそこに土砂が流れ込んで地表近くが一気に陥没。

 まぁ、この密林状態の森なら、他の根がみっちり張り巡らされていて大丈夫かな?

 素人考えなのでどうなるか分からんけど。

 重機を使っても面倒な作業が、何とも簡単に進んでしまう、まさにチートというやつなんだろうな。

 地味だけど。

 「異世界物の漫画なんかだと、魔法一発でズパッと終わるんだけどなぁ。」

 地味すぎてつい愚痴が出てしまう。

 引き抜いてできた穴はゴンとユーキが周囲から集めた土を入れて埋め固める。

 わずか1日で1Kmもの距離にわたって切り株の除去が完了してしまった。

 とはいえ150Km、順調に進んでも5か月はかかってしまうな。

 ん?まてよ・・・150Kmもの距離を人力と魔物力(?)だけで5か月って、無茶苦茶速くない?それでも途方もなく感じちゃうのって、やっぱりスキルチートで感覚が狂ってるんだろうなぁ。

 最終的にはしっかり整地して、石畳かなんかで舗装したいところだ。

 けど、今はひたすら根掘り根掘り。

 日が暮れるまで作業に明け暮れて、村に戻ったら第一貯蔵庫にこもって資材のチェックだ。

 とにかく膨大な量が乱雑に入れられているので非常に時間がかかる。

 特別な力の無い、ただの資材を中心に貯蔵庫から出し、村の空いている場所に積んでいく。

 今見つけたいのは、モンスターの侵入を防ぐ魔道具だ。

 第一貯蔵庫に入っていてくれればいいんだけれど。

 もし出てきてくれても、この世界の魔物に効くかは試してみるしかないけれど、やっぱり期待してしまう。

 ここ数日は作業後に貯蔵庫にこもって整理、どうしても夕食の支度は手抜き料理になってしまう。

 ガチャの排出率向上で調味料や香辛料が豊富になってきたので何とか胡麻化しているけれど、やっぱり本当に料理のできる人を見つけて食事を一任できればいいんだけどな。

 ボロが出ないうちにね!

 そんな願いも空しく、朝食の準備から始まり、日中は街道の整備、夕方から貯蔵庫整理してからの夕食準備と、かなりハードな日々を過ごしていた。

挿絵(By みてみん)

 ハードな日々に耐えながら、根を抜いてなだらかに整地できた距離はようやく約10Kmほどに達した。

 日を追うごとに整地速度は上がったけれど、村との移動に時間がかかるようになってきた。

 移動に軽トラを使えれば、まだ距離的に時間を使うことも無いんだけれど、軽トラの燃料が判明したことでそうもいかなくなってしまった。

 どうやら軽トラは、ユーシンの魔力?的な何かを利用しているらしいのだ。

 本人も普通に走る分にはまったく負担が無いらしく気が付いていなかった。

 根の掘り起こし作業にも慣れてきて、スピードアップのために2組に分かれた時にそれは起こった。

 オヤカタ、アオンの肉体派とユーシンの軽トラで分かれて根を引き抜く作業を始めたのだが、ユーシンは速く抜くためにローでベタ踏み、フルパワーを使いまくった。

 夕方作業を終えようかという時、突然ユーシンが倒れてしまったのだ。

 30分ほどの休息で回復したものの、突然これまで感じたことの無いほどの疲労感を感じていたようだ。

無理はさせられないと1組に戻したけれど、細めの根などは「このくらい大丈夫っスよ。」なんて軽いノリで一人でやってしまうので、せめて村との往復はアオンの引く馬車で、ということになった。

 彼がいきなり倒れたのは、やはり魔力切れとか、そういったことなのだろうか。 

 ユーシンには、道のチェックがしたいから、往復は馬車でチェックしながらということにしている。

 難しいもので、本人は無理をしているつもりじゃないらしい。

 楽しくなると疲労を感じなくなるってタイプ、いるんだよね。

 限界近くなるまで自分が疲れていることに気が付かないんだよ。

 60で他界した俺の父親もそんなタイプで、仕事兼趣味の機械いじりで徹夜が続いて、ある日突然倒れてそのまま逝ってしまった。

 検死した医師から聞いたんだけど、人間って、好きなことに集中していると疲労を感じにくくなるみたいなんだよね。

 それで心臓に負担がかかって、ある時突然・・・。

 もちろん、誰もがそうなるわけじゃない。

 のちに、父の親、俺の祖父も、父の弟、俺の叔父も、みんな60前後でポックリ逝っていることを知った。

 心臓に疾患のある家系らしい。

 心臓って、難しいみたいだね。

 俺も、父親が他界してから心臓で死んでいる近親者がいるってことで詳しく調べてもらったけれど、その時は特に問題無しって結果だった。

 数年後に胸の違和感から再度受診し、親族のことを話したら精密検査を、と専門医を紹介された。

 近親者に心臓で他界した人が複数いるってことを話していなかったら、年齢的にそこでも異常なし、とされて専門医にはたどり着かなかっただろう。

 結局、入院検査の結果俺の心臓にも問題が見つかって、血管を広げるステントと言う金具を入れられた。

 心臓は怖いものだ。

 俺もこの世界に来る前は、漠然と60辺りで死ぬんだと思って生きていた。

 前触れもなくいきなり逝っちゃうんだもんね。

 ユーシンはまだ若いし心臓に疾患があるとは思えないけれど、無理してそんなことになってほしくないのでこっちが気を付けてやらなければ。

 そんなトラブルがありつつも、ゴブリンの先触れが到着したという知らせが入るまで作業は続いた。

 明日はゴブリンたちの受け入れのため作業は休みだ。 

 オリヒメの作った服は100着近く、着替えも十分だろう。

 数をそろえるために簡素なものばかりだけど、ハゾルのいでたちよりはずっとましだ。

 あ~、炊き出しも必要だな、とりあえず芋のスープでいいか。

 朝早くからユーキ、ゴン、オリヒメに手伝ってもらってジャガイモの皮をむく。

 オヤカタとスローク、ユーシンは水汲みに向かった。

 馬を探す工程でユーキが村の南(推定)5Kmほどの地点に川を発見していたので、軽トラに空の樽(貯蔵庫に詰め込まれていた旧拠点の名残)をいくつか積み込んで向かっている。

 ゴブリンたちを清潔にするために湯を作る水が大量に必要だからだ。

 ハゾルはちょっと・・・無視できないレベルで獣臭があった。

 最初に来た時は、ハゾルが帰った後窓を全開にして板で煽って臭いを追い出したものだよ。

 で、大量の水は水道からも井戸水からも出せるわけだけれど、つい先日あったユーシンの燃料問題から、ソンチョー宅の謎水道やガス、電気やシステムで作られた井戸水も、実はソンチョーの魔力的なものを使っているんじゃないか、という不安が出て来たんだ。

 今のところおかしく感じることは無いそうだけど、一気に住人が増えるのだから念には念を入れないと、問題が起きてからではマズイ、ということで、今回使うことになる大量の水は川から汲んでくることとなった。

 30人が使うのだから何往復かしてもらうことになるけど、元気に出発していった。

 いずれ水路が必要になるよな、やっぱり。

 って、またやらなきゃいけないこと増えてるし。

 やれやれだよ。


 ゴブリンを迎える場には、ソンチョーはじめ住人総出で、さらにゴンやクマ、アオンも呼んでいた。

 ゴンとトウリョー、オリヒメは一応ゴブリンの上位種なので、やって来たゴブリンたちを安心させる意味で前面に出てもらった。

 村の境界付近で一行を迎える。

 皆痩せていて弱々しい。

 それに、殆どが女性か子供だ。

 老人はあまりいないな・・・それまで生き残れないってことなのかもしれない。

 ゴブリンたちの過酷な環境は聞いている。

 まずハゾルが村の中に入ってきた。

 ソンチョーが許可しないと村に入れないので、ゴブリンたちの名前などを確認するためだ。

 ハゾルの部族、ハダ族には文字が無いそうなので、一人ずつ口頭で聞いていくしかない。

 当然だけど、最初は族長ンダバと護衛の戦士2名から。

 ンダバは思ったより若そうな印象のゴブリンだった。

 デモンエイプに襲撃されるまではンダバの親が治めていたそうだけれど、最初の襲撃で命を落とし、若いンダバが族長となった。

 ハダ族は世襲制ということで、ゴブリンシャーマンのハゾル、ゴブリンウォリアーの護衛2名、カダゾとガラドは族長のンダバより上位種だ。

 ゴブリンの上位種、ホブゴブリンやゴブリンシャーマン、ゴブリンウォリアーなどは突然変異で生まれてくるため、世襲制の部族ではこのようなことが起こるらしい。

 ちょっと意外。

 まぁ、世襲制はこの森のゴブリンたちの特徴みたいで、森の外では力の強いものが長に付くことが多いそうだ。

 ゴブリンはこの森の中では圧倒的な弱者なため、突然生まれてきた強い個体に従うという仕組みだと、イケイケな族長に従ってすぐ全滅してしまう、なんて事になりかねないからみたいだ。

 過酷な環境で部族を生き延びさせる知恵と知識を持つものに従うのだという。

 その結果、過去からの知識や教訓を代々受け継いでいける世襲と言う体制を選んできたわけだ。

 ンダバはソンチョーの前に来ると、片膝立ちになり両掌を上に向けて差し出す。

 ゴブリンたちにとっては服従に近い姿勢をとると、それに倣うように他のゴブリンたちも同じ姿勢をとった。

 「多くの家族の仇を打ち取っていただき、それだけに留まらず風前の灯火とも言える状態のわれらを受け入れていただき、深く感謝いたします。

 われら一族、皆様に忠誠を誓うことをお約束いたします。」

 そう言って深々と頭を下げ、ゴブリンたちもそれに続いた。

 族長もハゾル並みに流暢にしゃべれるんだな。

 「この村を取りまとめているソンチョーです。

 遠路はるばるよくお越しいただきました、われら5名がこの村の代表です。」

 と言って、それぞれの紹介を終えると、ハゾルから名前を聞きながらゴブリンたちに入村の許可を与える。

 どこか不安そうなゴブリンたち。

 仕方ない、彼らにとってヒトは天敵だったんだ。

 まず用意していた食事を配って落ち着いてもらおう。

 魔素抜きメシにゴブリンたちは驚愕し、人間はこんなにうまいものを食べているのかと感激していた・・・ので、この村だけだと説明した。

 よかった、味覚は俺たちと変わらないみたいだ。

 商人のカブロには、ハダ族を迎えるための方便で、エグみの無い食事はハダ族の秘術ということにしてあるので、ソンチョーがンダバとハゾルに口裏合わせの相談をしている。

 最初ヒトがやってきて住む、ということに脅えを見せたンダバたちだが、彼らはゴブリンに危害は加えないと約束していることを伝えると一応は安心したようだ。

 俺たちもヒトなんだけど・・・俺たちはOKでそれ以外はダメって、どうなんだろうね。

 まぁ、俺たちは仇をうった恩人だから特別、ということになるからなのかもしれないけどさ。

 食事を終えたゴブリンたちはさっそくテントを作り始めた。

 ソンチョーはンダバとハゾル、他に村のまとめ役のゴブリン数匹を連れて村の案内とルールの説明に。

 ゴンと違って、トウリョーとオリヒメはゲームのまま緑色の肌、同じゴブリンとはいえ最初は珍しがられていたが、すぐに溶け込むと一緒になってテントを張っている。

 オヤカタもゴブリンからしたら格上のオーク種、しばらくは怖がられていたが、ゴンやトウリョーたちとのやり取りから程なく馴染んだようだ。

 子供たちはもっと柔軟で、あっという間にアオンやクマに馴染んで遊び相手になっている。

 どちらもゴブリンにとっては遭遇しただけで死を覚悟する相手だけど、子供ってのはゴブリンでも無邪気なもんだね。

 ゴブリンたちの住居は簡易的なテントだったので、数時間ほどですべて完了してしまった。

 体をふくための湯と、配布する服の準備を進める。

 焼いた石を水が入った樽に放り込んで、煮立った湯を水で薄めてザックリ適温に。

 多くのゴブリンが人の言葉を話せないか、話せてもゴン並みにカタコトなのでオヤカタとトウリョーがお手本になって手桶で湯を取りながら体を洗ってもらう。

 すぐにみんなマネしだしたけど、あけっぴろげというか、おおらかというか、オスもメスも子供も、誰も気にせずすっぽんぽんで洗い始めた。

 ま、ゴブリンなんで何とも思わないけどね。

 オリヒメ作の服も好評で大喜び、うん、よかったよかった。

 当面はソンチョー主導でゴブリンたちの教育を進めることになる。

 トウリョーとオリヒメが補佐だ。

 子供たちはアオンやクマになついているのでユーキが担当。

 言葉なんかを教えられたらいいなあ、といったところだけど、まぁ彼も高卒の新社会人だったので無理は言うまい。

俺は用意しなければならない食事量が大幅に増えたので、道路整備に出ると間に合わなくなってしまう、ということで日中は貯蔵庫整理に使い、朝夕は大量の調理に忙殺されることになってしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。