閑話 悪魔の憂鬱
「「どういうことなのかしら?」」
真っ赤なドレスが印象的な女性が、口を動かすことなく言葉を発した。
頭に直接伝わる声。
彼女も、悪魔の一人だ。
「「おかしいですねぇ、あのシステムはまさにテッパン、盤石の集金システムだと聞いていたんですが。」」
白いタキシードにハット姿の”クソ悪魔”が答えたが、明らかに声に力がない。
「「この私を!あれだけ急かして作らせたくせに、ほとんど使われていないじゃないの!」」
ゴウッと全身から炎が吹き上がるような威圧と熱気を感じた白い悪魔は、ハットが飛ばされないように手で押さえると、さらに弱々しい声で答えた。
「「たぶん、何か手違いがあったのでしょう。
早急に確認して対処しますので、もう少し時間をください。」」
苦労して謝罪し、褒めたたえて、時間をかけて赤い悪魔を落ち着かせることに成功した。
「「ひどい目にあいたくないのなら、即行動に移すことね。」」
そう言って、赤い悪魔は姿を消した。
大きくため息をついてソファーに倒れこんだ白い悪魔。
広い部屋には、豪華な装飾のアンティークなデスクセットとソファーだけがあった。
「「ようやくここまでこぎつけたというのに、消し炭にされたらたまりませんものねぇ。」」
とはいえ、早急に手を打たねば近い将来この部屋ごと消し炭にされかねない。
白い悪魔にとって、この部屋は希望であり聖地だ。
途方もない時間をかけて、ようやくここまで作り上げた矢先にこれだ。
こと戦闘力に関しては、白い悪魔は赤い悪魔の足元にも及ばない。
赤い悪魔が少し本気を出せば、この部屋は一瞬で消し炭に変わってしまう。
「「しかし、おかしいですねぇ・・・最高レアの排出率が1%以下なんて当たり前みたいなんですが・・・。」」
確かに、少し上前をはねてやろうと思ったのは事実だが、あれだけゲーマーたちが熱狂するシステムになぜ食いつかないのか。
「「ふむ・・・なるほどなるほど、限定イベントで期待感を煽ればよいのですね。」」
パチンと一つ指を鳴らすと、早速両替機の掲示に細工をした。
<<驚異の激レア素材排出量2倍!>> <<10回連続で1回分サービス期間中>>
「「ふふふ・・・この程度でガチャ利用数が跳ね上がるとは。人間とはなんとも愚かな生き物ですね。」」
タイミングもバッチリ、ちょうど両替機の前に集まろうとしていた。
「こりゃだめだ、やめとこう。」
「「はい?」」
変更したばかりの掲示を見た瞬間、ある男から思いもかけない言葉が発せられた。
「「これはマズいですね。」」
白い悪魔は慌てたようすで部屋から消えた。




