011話:気が付いた
翌朝、目覚めてすぐに、昨日忘れていたステータスチェックにとりかかった。
どれだけ上がったんだろう?と、ちょっとだけ期待しながら。
種 族:ヒューマン
職業 :超越者
レベル:8
経験値:6180 次のレベルアップまで1820
生命力:40/40 肉体的ダメージを受けると減る。0になると死ぬ
魔 力:43/43 魔法を使うと減る。0になると意識を失う
気 力:40 スキルを使うと減る。0になると意識を失う
筋 力:44 力の強さ。攻撃力などに関係
体 力:43 スタミナ。持久力などに関係
敏捷性:40 動きの素早さ
器用さ:42 手先の器用さやバランス感覚など
知 識:43 記憶力と知識量。魔法の発動や威力に関係
知 恵:41 頭の良さ。計算速度などに関係
魅 力:40 高いと人を引き付けたり、友好に思われやすくなる
レベルが3も上がってる?
喜ぶべきだけどそうじゃない。
あの猪、どれだけ強かったんだ?
確かにリルベア並に硬かったけど。
っていうか、一人だったら高確率で即死案件だったけど。
今回もたぶん、腹が弱点だったんかな。
それをバッサリいけたのが良かった。
今日から田辺君を拝むことにしよう。
しかし、あの巨体が見事に飛んだよね、ボールだったら場外ホームラン間違いなしだ。
昨日帰りがけに聞いた話だと、あれは爆裂学園、狂弥の必殺技の一つ、”激殺布留諏殷愚”というらしい。
バッチリ決まると、吹っ飛ばされた対戦相手はピンボールのように画面を弾けるのだとか。
オソロシヤ。
俺も、少しでも早く追いつかなければ。
さてさて、今回新しく解放された魔法とスキルは、
魔法 :バインド・ファイヤ・コールド・ヒール・キュア・エンチャントオーラ
スキル:修繕(木工・石工・鍛冶・金細工)・頑強・斬撃・遠見・弓術
だ。
まだ基礎的なものが多いけど、だいぶ増えてきた。
今頃、最上級職だったらレベル10、見習いだったらもう36になってるはずだからなぁ、超越者マジ辛い。
田辺君と今日の行動を話し合いながら朝食をとる。
周囲は出発準備にせわしないおっさんたちが・・・あれ?そういえば・・・。
うん、考えてみたけど、間違いないよな・・・いまだに一人も見ていない。
ここに来て、じゃないぞ。
この世界に来てだ。
今までいっぱいいっぱいで、そこまで気が回らなかったけど。
そう、この世界に来てからというもの、今の今まで一人も女性を見ていない!
異世界転生で、こんなに長い期間美少女と出会わないなんてことある?
いや、出会っていたとしてもこれと言って何かあるとは期待できないわけだけどさ、いくら具がおっさんとはいえ、流石にちょっとは期待的なものを持ってもいいじゃない。
目の保養的な感じでさ。
「いや、まさか、そんなことは・・・。」
突然ブツブツつぶやきだした俺に、心配そうに田辺君が
「どうしました?なんか、問題でもあったっスか?」
あ、ごめんね。
でも重要なことだから。
「田辺くん、ひょっとして、ひょっとしたらだけどね。」
「ハイ。」
神妙に聞く田辺君。
「この世界に来て、女性って見たことある?」
「は?」
この反応で何となくわかった。
いるんだね、って、当たり前か。
「いや、ゴメン、変なこと言いだして。
今のところ一人も見てなくてさ、さすがにそんなことあるのかなってね。」
「そうなんスか?村とかには普通にいましたけど。」
「だよねぇ・・・ハハハ、ごめんごめん。」
そう言えば、砦の商人も言ってたな、酒場とか夜の店ででモテるためにアクセサリー類は人気だって。
“常識”さんも呆れてる気がする。
「あ~、でも、村から出ることはまずないって言ってたっスね。
野盗なんかから真っ先に狙われるみたいっスよ、兵士とかハンターになる人もいないみたいスから。」
「そうだよねぇ、漫画やアニメに毒されすぎてるなぁ。」
ミニスカートや水着同然の格好した冒険者とか、男勝りな女性騎士なんて存在しないんだよ、うん。
あ、違った、女騎士は儀礼、式典専門の戦わない女性だけの騎士団があるらしいんですね、ありがとうございます“常識”さん。
「んで、どうしまスか?」
「そろそろゼノ村に向かおうかと思うんだ。」
「なるほど、でも、あそこはおばちゃんばっかであんまり若い娘は、」
「違う違う!そうじゃなくてね。」
何かとんでもない勘違いをさせてしまったようだ。
「保存食がもう無くてさ、干し肉もうまくいくかはまだわかんないし、炭水化物が無いのは良くないかなって。
それに田辺君も戦えるなら、ちゃんとした装備を整えて戻ってきた方がいいかなって。」
「あぁ!そうっスよね、アハハハ。了解っス。」
顔を真っ赤にして肯定する田辺君。
ごめんよ、まぎらわしくて。
話し合いの結果、この日は別行動、田辺君は夜の移動に向けて休息、俺は知識上昇で新たに得た“常識”を元に、森の外縁付近で素材採集をして過ごすことになった。
今まで通り過ぎてきた野草やキノコ類の中に、それなりの値が付くものがいくつかあったことを“常識”さんが思い出してくれたのだ。
遅いよ。
この日は穏やかに、大収穫とは言えないながらもそれなりに収穫があり、ホクホクとキャンプに戻った。
そして夜、いよいよ干し肉の出来栄えを確認する時が来た。
っても、まぁ購入したものほどにはなるまい。
塩も香辛料も足りてないし。
食べられればいい。
うまくいっていれば、干し肉を買う分の資金を保存食に充てられる。
そうなれば、長期滞在してのレベルアップに励むこともできるようになると思う。
どれどれ?
乾燥具合は問題なし、見た感じちゃんとできている。
いきなり傷んでなくてよかった。
やっぱり、こっちの世界で簡易貯蔵庫は2倍速く時間が流れる?みたいな感覚でよさそうだ。
恐る恐る一口。
「ん?」
思わず声が出た。
おかしい・・・確かに塩味が薄い、それは塩が足りなかったんだから仕方がない。
味気ない、そりゃ塩だけだし、水で長時間煮込んだから旨味も抜けているだろう。
なんか臭い、血抜きとか臭い消し的なこともしてない、そもそも買った干し肉もクセあったし。
でもそんなことはどうでもいいのだ。
この干し肉、エグくない。
薄味だけどエグくない!
クセ強めだけどエグくない!
旨味も無いけどエグくない!
う~ま~い~~!のか?は微妙だけどエグくない。
エグくないのだ。
なんでだろう?
連発するけどエグくない!
これは・・・世紀の大発見をしたんじゃなかろうか?
でもなんでかわからん。
とにかく完成。
しかもこの世界に来て初めてのエグみの無い食べ物。
なんか泣きそう。
急いで干し肉を回収して、テントの中からこっそりと田辺君を呼ぶ。
「なんスか?肉ダメでした?」
そんな不安げな田辺君にスッと差し出す一枚の干し肉。
恐る恐る口に運んだ田辺君の顔が驚愕の表情に。
「マジスかマジスかこれマジスか!!」
ガっとつかまれた肩が痛い。けどこれはある意味心地よい、勝利の痛みだ。
「飯田さんマジ天才っスよ!俺、この世界来て美味いもん食ったの初めてっス。」
ワハハハ、初めてなんちゃって料理を御馳走した時も同じようなこと聞いた気がするけど気にするまい。
自分でもびっくりな素晴らしい出来だ。
まぁ、そこそこ臭いのは御愛嬌、野生の、しかも魔物なわけだし、クセもあろうよ。
それにその場で解体はしたけど、血抜きもしてないし残った血が傷んだせいかもしれない。
それでも全くエグみを感じない。
「これは、完全勝利と言っていいだろう。」
思わずそう宣言してしまったよ。
「いや、スゲェっす、世界の食事上に革命を起こせますよ。」
なんて持ち上げてくれるから調子に乗ってしまいそうになる。
しかしだ。
ハッキリとさせておかなきゃならないことが一つ。
「問題は、なんでこうなったのかわかんないことなんだよなぁ。」
「へ?」
一気に盛り上がったテンションを下げてしまった。
しかし、分からないものは分からないのだ。
何が良かったのか、どういう理屈でエグみが消えたのか、ジックリ検証しないといかんのだ。
一度諦めかけたけど、飯テロ無双も夢じゃなくなってきたぞ。
煮込みもせずに焼いただけの肉は食い物じゃなかった。
干しきれずに焼いた肉は普通にエグかった。
ってことは、干す段階で何かあったんだろうな。
簡易貯蔵庫の影響かな?ゲームでは時間経過で劣化するアイテムが2倍速く劣化する、というデメリットがあったけど、この世界ではどうやら2倍速く時間が経過する、という風に解釈されているようだ。
それと同じく解釈の変化で何か特別なことが起こったのだろうか。
それとも中に入っていたもので何かあったのか、もしくは干し方?
検証するには一度中身を出してやってみないと。
干し方かもしれないから別の網も用意しないとな。
う~ん、こうなると、大きめのテントが欲しいな。
二人で干し肉を堪能した後、予定通りゼノへ向かうべくテントをたたんでこっそりキャンプを出る。
おっさんハンターに見つかったらまた怒られそうだ。
いや、こんな時間に出ようなんて普通なら自殺行為だからね。
キャンプを出ると足早に街道を進み、30分ほど歩いてから田辺君が軽トラを出した。
さぁ、再び車中の旅へ。
「飯田さん、ここからは結構道良いんで、寝ちゃっていいッスよ、俺はガッツリ寝たんで。」
そう言う田辺君の気遣いは、一日中歩き回った俺にはありがたかった。
「ありがとう、お言葉に甘えて、少し休ませてもらうよ。」
とは言ったものの、寝れるかなぁ。
だいぶ道が良いとはいえ、舗装された道じゃないからねぇ。
不意打ちのガックンは首に来るんだよね。
なんて心配してた瞬間もありました。
「飯田さん、そろそろ止めます。」
という声で目が覚めるまで完全に落ちていたようだ。
思っていた以上に俺、疲れてた?
周囲はかなり明るい。
「1時間くらい歩けばゼノっス。」
あちこち伸ばしながら朝食代わりの自家製干し肉をかじる。
「血抜きとかできないかなぁ、やり方知らないけど。」
「あぁ、このなんか、独特のにおいっスか?」
田辺君はかじっていた干し肉をクンクン嗅ぎ出した。
「あの場ですぐ解体したから血の臭いはそんなに影響ないんじゃないかな。
昔テレビで見たんだけど、血そのものがクサいわけじゃないらしいんだよね。
でも血はすごく痛みやすいらしいから、早めに血を抜いたほうが鮮度を保ちやすいってことらしいよ。
もしエグみ取りが確実にできるようになったらさ、ひょっとすると、ステーキとかBBQに焼肉なんて可能性も出てくるでしょ、だったらやっぱり、鮮度は命じゃない?
臭いは確か、肉そのもののクセが大きいって言ってたかな。
調理法でも感じやすくなるとか何とか、うん、昔すぎてはっきり思い出せん。」
ゲームしながら見てたんだろうなぁ、肝心な情報が抜けてる気がする。
「でもスゲェス。
年の功なんて言ったら失礼かもしれないっスけど、いろんなこと知ってるスよね。」
しみじみと言う田辺君の視線が痛い。
俺の知識、ほとんどテレビとかで聞きかじった程度だから。
あぁ、最近の子はテレビ見ないっていうか、テレビ自体持ってない子も多いらしいから情報も偏りがちになっちゃうのかな?
エイルヴァーンにドハマリした影響で、ネットとかでもいろいろとファンタジー系や中世時代の技術とか様式とかを調べまくったりした時期もあったから、俺の知識は非常に広く薄い。
薄っぺらだけど広いから、田辺君との会話でも、彼の疑問に即答できるような内容も多くて、その結果、彼にとって俺は何でも知ってる人になっちゃってるっぽい。
実はただの、いろいろ適当に知っているっぽい人なんだけど。
最初の頃は「そんなことないよ、薄っぺらで表面だけ知ってるだけだからと」否定していたんだけど、「またそんな謙遜を~」ってなかんじで、どういうわけか信じてくれない。
いささか困ったことになってしまっている。
「魔物じゃない肉ならもっとクセ無いんスかね。」
「ああ、そうかもね、でも無茶苦茶高いし、まず手に入らないよね。」
“常識”さん情報では、動物は極端に魔素の低い地域でしか生息できず、魔素の濃い地域に移動すると数日で魔物になってしまうのでとにかく高いらしい。
「漫画かなんかで見たっスけど、血抜きって木に吊るすんスよね。」
「確か、首と後ろ足の動脈を切るんだっけ?でもさすがに森の中じゃやってられないなぁ。
血の匂いで魔物がうじゃうじゃと寄ってきそうだよ。」
あ、こんな風にすぐ答えちゃうのがいかんのか?難しいなぁ。
なんて話しながら歩いていると、村が見えてくる。
村?
ランザ砦を彷彿とさせる立派な石造りの外壁が。
「村、だよね?」
思わず聞いてしまった。
「ああ、森の近くはどこもこんな感じらしいっスよ。」
魔物の氾濫対策で、森の周辺にある町や村はかなりがっちりした防壁で守られているうえ、衛兵が常駐しているのが当たり前なんだそうだ。
と、“常識”さんも遅ればせながら思い出す。
村の、というには不釣り合いなほど大きく頑丈な門が出迎えてくれた。
入村審査のようなものは無く、空きっぱなしの門をすんなり通過。
木造の小さな家が密集している。
外壁を大きくできない以上は詰め込むしかないわけだ。
そう言えば、カルケール伯爵領に入ったんだな、領堺の検閲とかも無いんだね。
”常識”さん情報では、一般的には検問所があって検閲を受けるものらしいけど。
コリント伯爵家とカルケール伯爵家は家族ぐるみで友好関係にあるらしいから、行き来も自由なのかな?
境界付近にある村なので商隊でにぎわっている。
森の脅威がなければもっと発展していたはずだろうに。
通りには早朝なのに所狭しと露店が並び、商談の花が咲いている。
ざっと見、99%がXY染色体で占められている。
つまり男ね。
女性は・・・うん、ガッチリ体系のおばちゃんが売り子にちらほら。
それでもちょっと感動してしまった。
いや、飢えてるわけじゃないからね、ホントだよ。
商隊に所属するような商人は、大半を危険な旅に費やすだけにほぼ男、女性は商隊100に2~3人いるかどうか、ってレベルらしい。
後は護衛の傭兵、当然この世界では男中心になる。
過酷な旅を続けるわけで、荒くれ者も少なくない。
そんな客を相手にするんだから、売り子側もいかついおっさんが多くなる。
むさい。
あと、できれば見たくはなかったけど奴隷。
目に入ってしまうと“常識”さんが思い出してしまう。
奴隷、残念ながら異世界物ではお馴染みというか、当たり前のようになってきている存在だよね。
借金奴隷に犯罪奴隷、人権守られホワイト労働。
魔法で契約して絶対裏切られない、みたいな。
おっさんには違和感ありまくりだったんだけど、この世界の奴隷は悪い意味で正統派。
元世界の奴隷という存在にかなり近い。
敗戦国や植民地から強制的に連れて来た人々を奴隷として無理やり労働させている。
魔法で契約なんて無いんで、持ち主の印になる焼き印を体に入れて、鎖でつながれて逃げられないようにされている。
そこに人権や生活環境などは全く配慮されておらず、それが当たり前になっている。
正直言って反吐が出る。
とはいえそれが当たり前の世界、ある程度は割り切らなきゃいけない。
いけないけど当分は無理。
早々にここは立ち去りたいところだ。
俺がいつか、世界に影響を持てるくらいの人物になれたら・・・なれるわきゃ無いんだが、もし何か間違いが起こってそうなれたら、努力するとしよう。
それにはとてつもない時間が必要になるだろうけど。
その時まで、この不快感を忘れないようにとどめておくことにしよう。
さて、俺の手持ちの現金は2,500セイルしかないし、手に入れた素材を売らねば。
何度か村を利用している田辺君の案内で、露店通りから1本奥に入った路地へ。
ドア脇に小さな看板が無ければ店なのかもわからないような建物が並ぶ一角の、突き当りにある建物に入る。
店内は狭く、入るとすぐにカウンターがあり高齢の店員がいた。
「ここは買取専門なんスよ。」
田辺君情報では、商隊相手の取引が中心のこの村では、素材ごとの専門店での買取は結構な数がないと相手にされないらしい。
少数多種の素材を持ち込むハンターにとっては、買取額が多少低めでもこういった店が便利なんだという。
ゲドリザーの皮3枚
ビルラッツの毛皮1枚
ホーンボアの毛皮1枚・魔石1個・頭蓋骨1個
ハリラビの魔石1個・トゲ1頭分
キノコ類少々、薬草類少々。
をカウンターに並べて査定の依頼をする。
「トカゲとネズミの皮は、ダメだなこりゃ、独学か?」
自分ではそこそこ良い出来だと思ったものを出したつもりだけど、売り物としては失格。という判断がされた。所々薄かったり、肉が残ってしまっていたり、切り方が悪かったり色々とご指摘を受けた。
「皮だの毛皮だのは加工して使うもんだ。処理が悪いと使える部分が減る。
肉が残るのはまだ修正が効くが薄かったら丸ごと使えん、これからも続けるならちゃんとしたハンターなりに師事するんだな。
買い取るんなら1枚500セイルだ、ちゃんと処理できてればトカゲは5,000、ネズミは7,000だ。」
1割以下でも買い取ってくれるだけ良心的、なんだろうな。
う~ん、ほんとにどこかで勉強できないもんかね。
「ホーンボアは、まぁいいな。表面の傷がデカいが、処理はそつなくできてる。お前さんがやったのか?」
と聞かれるくらいホーンボアの処理は合格点だったらしい。
この差はドロップ率アップの強運を覚える前と後、といえないこともない。
レベルアップで器用が上がっていることの影響か?どちらにせよレベルアップが影響していそうだ。
「傷がデカいが、これならそれなりにデカいパーツも取れそうだし、100,000でどうだ。」
さすがに硬かっただけに、ホーンベアは高額だ。ちなみに、傷の無い完品なら150,000になるそうだ。
「頭蓋は珍しいねぇ、変色して無いが、まさか現地でバラしたのか?」
店員の話だと、ホーンボアの骨は死んだあと処理せずに時間がたつと黒く変色するんだそうだ。
現地バラシは危険、黒く変色すると価値も激減、ということでほとんどのハンターが捨ててしまうらしい。
「こいつは250,000だ。
とはいえ危険なことはするなよ、安全が確保できないときはスッパリあきらめろよ。」
ホーンボアは若いハンターが命を落とす原因の中でも1、2を争うそうで、欲に駆られて頭蓋を現地で解体しようとして血の匂いによってきた魔物に、という悲劇も少なくないんだそうだ。
そうだよな、2つで術式杖が買えちゃうんだから。
その後の査定は
魔石、ホーンボア25,000、ハリラビ1,000
ハリラビのトゲ1頭分5,000
キノコ類5個1,500、薬草類10束2,000、ラサの実(生)5個500
で、しめて387,000セイルとなった。
かなりの利益だ。
大半がホーンボアの素材だから、田辺君のおかげだね。
ってことで半分の193,500セイルを渡そうとしたら、関わったのはホーンボアだけだし、それ以前に美味い飯のための実験が控えてるんだからそれに使ってくれと受け取ってくれない。
暫しの問答の後、結局資金はメシのため、ということで俺が預かることになった。
現実ではカップ麺とコンビニ弁当ばかりだった完全なド素人なんだけどなぁ。
プレッシャーがすごいよ。
「いろいろ試すのに大きめのテントが欲しいんだけど、どこで買える?。」
ここは経験者の田辺君に頼る。
案内されたのは露店通りを奥に進んだ先の大きな店舗。
テントや野営道具を扱っている店の中では種類も多く、中古品も扱っているため価格的にも控えめだという。
中古品を吟味しながら、4人用のテントを購入。
かなりかさばるので人目につかない場所で簡易貯蔵庫に入れたいところだ。
他にも肉を干すための網や大きな鍋、折畳み式の作業台、バケツ、鉄製の折畳み式かまどなど、使えそうなものを片っ端から購入、しめて298,730セイルなり。
次は食材だ。とはいえ、売られているものはほとんどが加工済みのもの、未加工品を探すのに苦労してしまった。
何とか見つけたものが、勝手に麦と呼んでいたけどセパ豆。
エンドウのような植物で、鞘を割ると100粒程度の麦のような種が詰まっている。
食堂に卸すための未加工品一袋30Kgを無理言って売ってもらった。
他に塩と、高くてあまり買えなかったけど香辛料、肉専門店でハンターが下したばかりのブロック肉を5Kg。
後一応保存食と干し肉も、しめて52,800セイル。
で、残金35,470セイルと、こんなもんでしょう。
生の肉が手に入ったので、できるだけ早く実験を始めたい。
ということで、村の外にあるキャンプ地へ向かった。
多くの村や町には、駆け出しのハンターや傭兵、旅商人とか資金に余裕のない人用のキャンプ地が隣接されていることが多い。この村は商隊が利用することが多いのでキャンプ地の利用者はあまりいないが、それでもそこそこの広さだ。
閑散としたキャンプ地の中でも、特に人気のない場所で購入したばかりのテントを組み立てる。
4人用というと、一般的なテントサイズを思い浮かべるけど、この世界では倍以上もある。
旅は過酷になるため荷物も多くなるからだ。
生地も分厚く丈夫な素材でかなり重い。
二人がかりで組立てなければからなかった。
「飯田さん、コンロはこんなもんでいいっスか?」
組立式かまど、キャンプ用品の炭式コンロみたいだよねぇって話してたら、いつの間にか田辺君はコンロ呼びが確定していた。
テント脇には、かまどと作業台が組み立てられ、樽を再利用したようなバケツには水が汲まれていた。
準備万端だ。
さて、肉を切ろうかと手を洗っていた時だ。
こちらをじっと見ている人に気が付いたのは。




