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010話:荷物になる

 まるで荷物のように肩に担がれて運ばれている。

 ちょっと、あんまりじゃございませんこと?

 確かに足やられて歩けないけどさ、もうちょっとこう・・・ねぇ?

 ん?

 このおっさん、スゲェな。

 かなり雑に運ばれてるけど、思ったほどガックンガックン振られない。

 もちろん森の中の悪路だから多少はあるけど、結構な速度なのにスムーズだし、矢が刺さったままの足に負担が少ないように感じる。

 そういえば二人だけだし、結構な実力者?

 そう感じたからかもしれないけど、結構俺を気遣いながら進んでいるのが分かる。

 できる限りなだらかな場所を選んでいるようだし、迷いなく進んでいるあたり、この森にも精通しているようだ。

 これは、素直に運ばれた方がよさそうだ。

 運ばれながら魔法に関して“常識”さんチェックだ。

 なんせ、前情報とだいぶ違う。

 レベルが上がって知識が増えたことでの変化、ということだろうけど、この突然変化する知識はホントに厄介だ。

 キャンプ地に着くまでの間にできるだけ”思い出して”おこう。


    **


 この世界の魔法とは、複雑な公式のもとに組み上げられた幾何学的な紋様“魔導印”に魔力を流すことで超自然的な効果をもたらすことを言う。

魔術師と呼ばれる者たちは、紙に特殊なインクで描いた魔導印を綴って本にしたものを使い、使用する魔法の印に手を当てて魔力を流すことで魔法を使う。

 長ったらしい呪文をモニョモニョ唱えたり、カッコいい魔法陣が宙に浮かんだりはしないらしいし、杖とかも別にいらないらしい。

 魔法を使うために基礎を専門の魔術学校で学び、魔導印を研究していく学問的なものとされている。  

 一般的な人の魔力はそれほど多くないので、魔法を学んだとしても使える人はあまりいない。

 これけっこう重要。

 魔術師と呼ばれる中には、自分自身は魔法が使えない連中もいっぱいいるのだ。

 複雑で強力な魔法ほど魔導印も複雑化する。

 複雑になるほど大きな面積が必要になる。

 だって、描けないもんね。

 魔導印は常に研究されていて、新しい魔法を作り出したり、既存の魔法の効率化(小型化、消費魔力の軽減など)に一生を費やす者が多い、つまり、魔術師のほとんどが研究員と言ってもいい状態。

 結果、魔術師は一般的に見かけるような存在では無かったのだ。

それが“魔素”の研究によって変化し始めた。

 この世界には、“魔素”というものがある。

 一般的にはあまり認識されていないもので、魔法を研究する上で学ぶものだったり、ベテランのハンターに師事した時に教わったりするものらしい。

 空気なんかと同じで空気中に普通に存在している無色透明無味無臭の気体のような存在。

 これがなかなかに厄介で、空気よりも重く、気体のような存在なのに風などの要因で移動することがない。

 地域などで濃度に差が出やすく、高濃度の場所では生物に悪影響を与えたり、魔物発生の原因になったりする。

 魔物の心臓からとれる魔石は、魔素が結晶化した物と考えられている。

 厄介なだけの存在とも思える魔素だけど、20年ほど前に魔素を魔力に変換する技術が発見されて、ごく簡単な魔法なら道具を使うことで一般人でも使うことができるようになった。

 魔術師、と呼ばれてはいても魔法が使えなかった研究員たちも、魔石を使うことで魔法が使えるようになったわけだ。

 で、一般人でも使えるようにする道具とは、魔石を加工した長さ10cm、幅3~5cm、厚み3cmほどの板に、簡略化された魔導印を彫り込んだ“術式杖”というものだ。

 それを購入すれば、それを握って魔力を流すだけで彫り込まれた魔法が使える。

 魔力を流すのにコツがいるため練習が必要だが、魔石を加工して作られた術式杖の魔素を魔力に変換するので、極少ない魔力で発動できる。

 つまり、だれでも使うことができる。

 術式杖の元になる魔石の質によって内在する魔素量が変わり、魔法を使える量も変わる。

 当然質が良い程たくさん使える。

 使い切ったら、時間を置くことで自然回復する(自然回復ではとてつもない時間が必要なので、通常は補充屋などで補充する)。

 最も安価なものでも500,000セイルからと、かなり高価。

 

    **


 というところまでが現在の“常識”さん情報だ。

 どうやら俺は、頑張って頑張って、仲間と協力してようやく手に入れた術式杖を使って調子に乗った、と思われたみたいだ。

 実際リルベア瞬殺で調子に乗ってたけどね。

 

 キャンプに着くと、仲間が田辺君一人だとバレてさらに怒られた。

 うん、良いおっさん達だよね、自分たちには何の利益もないのに。

 「んじゃ、ぬくぞ~。」

 と言って、矢の刺さった少し上をロープでぎゅっと縛られた。

 「え?」

 「歯ぁ食いしばれ。」

 「あ、ちょまっ!」

 笑顔が怖いよおっさん!

心の準備を!する余裕もなく一気に引き抜かれた。

「★◎▼■×!!!」

言葉にならない叫びをあげてのたうち回る。

「情けないぞぉ、かえしもない、木を削っただけの矢じゃねぇか。」

無茶ゆーな!

「一応念のために焼いとくか?」

ニヤニヤしながら怖いこと言うなヒゲ!

「いえ、後は自分でできます!」

速攻お断りである。

ちなみに田辺君はオタオタしてるだけ。

 うん、わかるよ、このオッサンズには逆らわない方がいい。

さんざん説教された後、おっさんハンターは再び森へ向かった。

 やっと一息だ。

「飯田さん、大丈夫っスか?」

「うん、ちょっと調子に乗っちゃって。あの人達に会えなければ帰ってくるのに苦労したかも。」

 矢抜くのに1時間くらいかかったかもな。

 情けないけどさ。

 ライトヒールで回復。

 傷口はふさがったけど、まだ若干痛い。

 歩いたり走ったりには支障がなさそうなので、昼食をとってから再び挑むことにした。

 だって、収穫ゼロだもの。

 「俺、やっぱりついて行っていいっスか。」

 田辺君が真剣な顔でこちらを見ている。

 「もちろん足手まといにしかなんねぇかもしれんスけど、さっきみたいな時は手伝えると思うし、イザとなったら軽トラ出して立てこもる事もできるし、何かしら役には立てると思うんスよ。」

 失態をやらかしたばかりの俺に断ることなんてできはしなかった。

 というか、ありがたかった。

 なんせ、レベルは上がったけど収穫無しなんだから、魔石をとる間とか警戒してくれるだけでも大きな戦力だ。

 軽めの昼食をとると二人で森へ向かう。

田辺君には一応、簡易貯蔵庫からローブとスモールシールドを取り出して渡した。

 武器は、軽トラに積んであった大きなバールだ。

 ゲームでも装飾として書き込まれていたそうだけど、まさか単体で取り出せるとは思わなかった。

 「たぶん、壊れないんじゃないっスかね?車も壊れないし。」

 というのが選んだ理由だ。

 まぁ、鍬だの包丁だのよりはいいだろうし、弓は使える気がしないそうだから今のところベストチョイスっぽい。

 再び森へ。

 二人で警戒しながら探索。

 もちろんスキルの“警戒”も使いながら慎重に進む。

 途中、背中にヤマアラシのような無数のトゲを生やしたウサギ、ハリラビを見つけて弓で仕留めたり、ラサの実や、珍味で知られる灰色のキノコ、グレーマッシュを見つけたりしながら2時間ほどは問題なく進んだ。

 自分の中の“常識”さんが、一般村人から新人ハンター程度まで進化したのかもしれない。

 ハリラビの解体も何となくわかったし、失敗無く何とかこなすことができた。

しかしながら、疑問点も出てきた。向こうの世界でのうっすらとした知識では、血抜きしないと肉が傷みやすく臭いが付きやすいとかなんとか・・・でも、解体しながらいくら考えても血抜きの方法は思い出せない。

 この世界では血抜きしないんだろうか。

たしかに、向こうとは違う。

 魔物が多く生息するこの世界の森で、のんびり血抜きなんてしてられないよね。

 必要最低限の物だけ取って素早く離れるのが“常識”だ。

 ひょっとして、この世界の肉も血抜きをしてやればもうちょっと美味しくなるのかな?

 時間停止(?)機能のある第三貯蔵庫が解放されたら、丸ごと持ち帰って試してみよう。

 いつになるかわからないけど。

なかなか経験値になりそうな魔物とも出会えず、初挑戦の田辺君の消耗具合もあって、そろそろ戻ろうかと考えていた時、突然“警戒”スキルが反応した。

警戒態勢をとる間もなく、茂みから飛び出してきた何かが真っすぐ田辺君に体当たりをかました。

「うげぇ。」

若さゆえの反射神経か、とっさにスモールシールドで直撃を防いだ田辺君だったけど、完全に力負けしてそのまま弾き飛ばされた。

 砕けたスモールシールドが降り注ぐ。

挿絵(By みてみん)

 額に1本角が特徴の猪のような魔物、ホーンボアだ。

 真っすぐ突進して体当たりをかますだけの魔物だけど、とにかく突進速度が速くて不意を突かれたらまず逃げられない。

 顔面から背中にかけて分厚い皮膚と硬い毛でダメージも与えられにくい。

 盾で防いでなかったら田辺君は串刺しになっていただろう。

マジックミサイルでホーンボアの背中に集中攻撃。

 倍化させている余裕はない、注意をこちらに向けなければ。

3本が背中に、2本が尻付近に命中するも、背中は毛が少しはじけただけでダメージにはなっていない。尻は出血させたものの、ホーンボアの意識をこちらに変えることはできなかった。

「なろう!」

“強撃”を使ってショートソードを背中に叩きつける。

ゴスッ

レベルも上がったし強撃も使ったのに、分厚い皮膚を少し切っただけで刃が肉まで届かなかった。

 一瞬、マジックミサイルで出血させられた尻に剣を突き刺すことも考えたけど、位置的に距離が近くて力が入りにくそうだと背中に狙いを変えた。

 が、結局ダメージを与えることはできなかった。

 硬すぎる。

 こちらをうっとうしく思ったのか、振り向きざまに角で足をはらわれてよろけた。

 何か危険を感じて、体勢を立て直すよりも飛び上がることを優先させたのが良かった。

 ホーンボアが足元を突進していった。

 間一髪。

 注意が田辺君から離れただけでも良しとしよう。

 態勢を立て直して剣を構えなおす。

 理想は、突進を飛び上がってかわして、倍化させたマジックミサイルで後ろから攻撃だ。

 シールドかボディプロテクションを使いたいところだけど、1度で倒せない可能性も高いから魔力切れを起こすのは避けたい。

 マジックミサイルを用意して倍化の集中。

 ホーンボアが突進しようとする瞬間に飛び上がった。

 距離も十分あったのに、それでも左足がボアの背に引っかかってはじかれる。

 負けじと、空中で逆さまになりながらもマジックミサイル発射。

2発が外れてホーンボアの足元に着弾したが3発は命中、尻と背がはじけ、血が飛ぶ。

ブフーッ

鼻息荒くこちらに向きを変え、牙をむき全身に力を入れるホーンボア。

クールタイム5秒、倍化集中に5秒は間に合いそうにない。

ダメもとで“強撃”を準備して、腰を落とす。

 今度はさっきよりずっと早く反応しないと・・・と、神経を研ぎ澄ました時、思いもよらぬことがおこった。

「うらぁあ!」

ゴッシュァ~ン

いつの間にかホーンボアのすぐ後ろに来ていた田辺君が、バールでホーンボアをフルスイングしていた。

打ち上げられるホーンボア、あっけにとられる俺。

空中を飛んでくるホーンボアにハッと我に返ると、剣を真上に振りかぶり、腹に向けて真っすぐ“強撃”で切りつけた。

派手に飛んだ血飛沫をまともに浴びながらも、その一撃でホーンボアを仕留めることができた。

「飯田さん!俺、とんでもないことが起こりました!」 

  興奮冷めやらぬ様子で仁王立ちの田辺君。

 いや、俺もとんでもないことになっちゃってるんだけど・・・。

「なんか、頭の中にセカンドゲームがなんたらって声がして、したらぶっとばせました!」

うん、さっぱりわからん、落ち着け田辺君。

「「おめでとうございます」」

頭に直接響く声に、全身がザワつく。

こいつは知っている。

田辺君と俺の中間にいた。

真っ白なモーニングを着た人物が。

突然目の前に現れたのに、ずっとそこにいたような。

俺には背を向けているはずなのに、なぜか目も、鼻も、顔だちも見える、それなのに次の瞬間には思い出せないような、何一つ変わってはいないのに、刻々と顔が別人に代わっているような、何とも言えない不気味さと不快感だけを感じる。

「「単純にこちらのミスなのですが、うまく力をお使いいただけたようで何よりです。」」

 一音ごとに、波のような不快感が全身を襲う。

「どういう・・・ことっスか。」

田辺君の顔も青ざめている。

 生物的な不快感とでもいうべきか。

「「最初に、皆様方をお連れする時にされていたゲームを基準に力を設定させていただいたとご説明させていただきましたが、実のところはお連れする瞬間から6時間ほど前までの間にされていたゲームが対象となってしまっておりました。

 理由は調整に手間取ったせいです。

 なにせ、ゲームによって基準がバラバラすぎて、バランスをとるのに苦労してしまいまして。」」

 オーバーに嘆くようなリアクションをしてみせる。

「「そこでトラブルが起こったんです。

 途中、ゲームを変えられた方が、それほど多くはありませんでしたがいらっしゃったのですよ。」」

と、天を仰ぐ。

「・・・たしかに、あの日は爆裂学園もやってた・・・。」

 ぬぅ・・・俺、あの日仕事だったからエイルヴァーンしかやってない。

「「メインとしての力は直前にやられていたゲームですが、途中にされていたゲームもサブ的に力の一部として設定されてしまったのです。

 それが今回戦闘という、サブとして取り込まれてしまったゲームに沿った行動をとられたことで解放された、というわけなのです。」」

うわぁ、何そのチート設定。

 くそう、なんであの日、俺はスマホゲーの「ビストロ街道」をやってなかったんだ!

 あのゲームやってれば食問題解決していたに違いないのに。

「ちょっと待ってくれっス。クラッシュレーサーはレースでなきゃランク上がらないし、爆裂学園はタイマン格闘ゲーっスよ、レベルそのものが無いんスけど。」

 田辺君が食って掛かった。

 そうか、レベルが無いゲームなら成長もできない。

 彼にとっては今後死活問題になりえる。

「「その分最初から結構強いですよ。たとえばそちらの方、」」

肩越しに俺の方を指さす。

 なんかイラっとした。

「「今の何倍もレベルを上げないと、ただの鉄棒1本であの魔物を吹き飛ばすなんてできないですし、そもそも小さい盾で防げても、突進の直撃をうけたら全身骨バラバラで即死しててもおかしくないですから。

 今のあなた様がどれだけお強いかご理解いただけますでしょうか。」」

確かに、かすっただけの左足が痛い。

 かかとの骨にひびくらい入っているのかも。

 ってか、田辺君俺よりずっと強かったのか!?

「「と、いうことで、一応のアフターサポートで第2の力を解放した方にご説明に伺っております。

 では、再び自由を謳歌してください。」」

「ちょっと!」

聞きたいことはあったが、こちらの声は無視して消えてしまった。

田辺君が戦えることと、その理由が分かったのは非常にありがたいことだけど、監視されているのはやっぱり不快だな。

「あ、そうだ!」

呆然としていた田辺君が叫ぶと、ホーンボアの近くに軽トラックを出した。

「飯田さん、こいつ、これに積みましょう!ある程度離れたら荷台で解体すれば色々取れるんじゃないスか?」

なんか、田辺君が急に頼もしい。

二人がかりでホーンボアを荷台に乗せると、キャンプ方向へ移動。

 道は無いので何度かひっくり返りそうになりながらも、500mほど離れた場所で解体を始めた。

まず最初に内臓を取り出し、魔石以外はすべて捨てる。荷台がすごいことになってるけど、出しなおせば奇麗になるらしいので見なかったことにする。

素材としては背中の皮が売れるようだけど、戦闘でかなり痛めてしまったから売り物にならないかも。

 今後気を付けよう。

 堅くて苦労したけど何とか剥ぎ取ると、肉を切り分ける。

 骨などは頭以外は使い道がない。

 頭骨だけは、好事家なんかが欲しがるらしい。

 そんなもの飾りたがる趣味は理解できないけど、元の世界でもお金持ちの家には鹿の頭とか飾ってるイメージあるし、そんな感覚なのかもしれん。

 金になるなら取っておこう。

かさばる肉と頭の骨はゲームアイテムの牛皮の背負い袋へ。

 2倍速く痛んでしまう簡易貯蔵庫へは入れられない。

 不要物を荷台から落として森を出る。

 途中で小さな池を見つけたので、血を洗い流してから軽トラを仕舞って、徒歩でキャンプ地へ。

 中はまばらにテントが建てられている。

 小規模な商隊が立ち寄っているようだ。

「肉は処理しておいた方がいいだろうけど、小さい鍋しかないんだよなぁ。」

「焼いて食っちゃうっスか?」

「いやいや、エグくて食えないって、煮るとエグみが多少和らぐみたいだけどさ、だからなんでも最初はとにかく煮るんだって。」

「あぁ、だから焼肉とかステーキとかって無いんスね。

 いつも煮込みか干し肉ばっかりで不思議に思ってたんスよ、うまくねぇし。」

「早いとこ干し肉にしないとなんだけど、塩も全然足りないなぁ。」

 とりあえずテントを張る。

 ワンタッチテントがあったら楽なのに。

 皮をつないだシートも見た目以上に重い、結構重労働なんだよね。

石でかまどを作ると、枝を折って火をつける。

「これなんかどうスかねぇ。」

と言って田辺君が持ってきたのは、寸胴のような大きな鍋だ。

 よく中華屋とかで見かける寸胴と比べると深さは半分程度だが、小鍋よりははるかに大きい。

「どうしたの?これ。」

突然出てきた大鍋に驚いていると、

「あっちの商人さんから買って来たっス。」

と言って鍋を置く、中にはぎっしりと、半透明の石が詰まっている。

「これも何?」

鍋に石が入っているとは思わなかった。

「魔素を使い切った魔石っス。

 これの処理する代わりにタダ同然で買えました。」

質の良くない魔石は魔道具のバッテリーとして使われることが多い。

 照明だったり、魔物除けだったりが一般的で、使い切ると色が薄く、半透明に変色する。

使い切った魔石は、魔素の濃い場所に置いておくとゆっくり回復するが、非常に時間がかかるうえ放置しすぎると魔物の発生を速めてしまうため、低品質の魔石は神殿などで浄化して処分する。

 そこいらに放置することは法律で禁止されているため、まっとうな商人や旅人は大きな町などに持って行って処理、一般人は商人などに引き取ってもらって処理してもらう。

 結構面倒なのだ。

今回商人は処理のために遠回りして目的地へ向かわねばならず、田辺君の持ちかけた取引に喜んで食いついたそうだ。

 しか田辺君、コミュ力高いな。

 いきなり見ず知らずの、営業時間外の商隊に突入していけるなんて。

 って感心していたら、

 「不思議なんすよねぇ、オレ、結構人見知りするタイプなんスけど、この世界に来てからは結構普通に初対面の人とも話せるんスよ。

 なんか、速人っぽいなぁとか感じたりするんスけどね。」

 速人っていうのは、田辺君がクラッシュレーサーで使っていたキャラで、人懐っこくてヤンチャ(いわゆる不良)な青年のことだ。

 どうやら、自分自身に違和感を感じるのは俺だけじゃないようだ。

 田辺君の場合はキャラっぽくなっていると感じているみたいだけど、エイルヴァーンにはキャラデザが自由にできる分、キャラの設定というものはほとんど無かった。

 確か、旅人ってだけだったと思う。

 この違和感が面倒につながらないといいんだけどなぁ。

 頼むぞ、クソ悪魔、やっかいなことしてないよな?

 思考の沼に落ちそうなので作業に戻ろう。

俺の作ったかまどでは大鍋には小さすぎるので、大きめのかまど作りを田辺君に任せて俺はまず小鍋でちぎった干し肉を煮る。

 堅い干し肉を柔らかくしたかったのと、とにかくしょっぱいので塩抜き、で、その茹で汁は干し肉づくりに足りない塩の代わりに利用する。

 思い付きだけど出来るのか?

田辺君のかまどが出来上がったら大鍋に水をはり、薄くスライスして一口大に切り分けたホーンボアの肉を入れて煮立たせる。

一応、切ったばかりの肉をそのまま焼いて一口。

二度としません、ゴメンナサイ。

 口に入れた瞬間に全身が震えた。

 速攻で吐き出しても口の中が痺れている。

生ラサが美味に感じる味わいだった。

あたりがすっかり暗くなる頃肉を取り出し、大鍋の水を捨ててしっかり水気をとった肉を戻す。

干し肉を塩抜きしたお湯を煮詰めたものに手持ちの塩を全部入れて混ぜ、大鍋の肉に揉みこむようにして漬け込む。

漬けてる間に塩抜きした干し肉と保存食を煮た雑炊もどきで夕食を済ませて、2時間ほど付け込んだ肉を取り出す。

これを干すわけだけど、今回は簡易貯蔵庫を使う。

2倍痛みが早くなるわけだけど、なら2倍速く干し終わるのでは?的なイメージで。

テントの中で簡易貯蔵庫のドアを出すと、中に枝と紐で簡単な網を作る。

 1mほど放して固定した2本の枝に、紐を数センチ間を開けるようにぐるぐると巻き付けていき、その上に肉を重ならないようにして置いていく。

これでたぶん、明日の夜にはできてるんじゃないだろうか。

この世界での“常識”さん情報をアレンジしちゃったけど、大丈夫だろうか。

塩は足りないだろうなぁ、醤油とかもあったらよかったんだけど。

網に置ききれなかった分は焼いて夜食に。

 うん、素焼きよりはいいけどね、やっぱしエグい。

 塩が足りないせいかもな。

香辛料とかあったらもっとまぎれるんかな、無いけど。

火を落として、とりあえず大鍋に空の魔石を放り込んで、まとめて簡易貯蔵庫に押し込む。

 大鍋もしばらく使うまい。

途中、おっさんハンターに遭遇して足はもういいのかと驚かれたけど、「自分もハンターですから」と強がってる風を装ったら、生暖かい目で「ま、無理すんなよ」とはげまされた。

 何か勘違いされてるかもだけど、思惑通りよ。

 今日はさすがにもうクタクタだったので、すぐに就寝した。

挿絵(By みてみん)

リアル版ホーンボア

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