第75話
さて、未だ昇天中のミアと興奮冷めやらぬエヴァをピーターに押しつ…げふんげふん……お願いし、わたくしは調理台へと移動してまいりました。
もちろん、昨日申した2つ目の特別メニュー候補を作るためですわ。
決して逃げたわけではございませんことよ?
ほほほ。
今から作るのは、【パブロバ】です。
オーストラリアやニュージーランドが発祥の伝統的なお菓子だそうで、バターや小麦粉、卵黄も使わないため、それらを使うお菓子と比べますとカロリーが低いそうですの。
こちらは、昨日のイル・フロッタントの対となるメニューになればと考えております。
では準備が整いましたので、調理に取り掛かりましょう。
まずは、ソースを作ります。
鍋に、ブルーベリー、イチゴ、ラズベリー、水、お砂糖を入れ、弱火にかけ、ヘラでベリーを軽く潰しながら、とろみがつくまでじっくり煮詰めます。
(スプーンでも問題ないかと思いますが、わたくしの場合は30人分作りますので、ヘラを使用いたしますわ。ご参考までに。)
割合としましては、ブルーベリーが5、イチゴが3、ラズベリーが2といったところでしょうか。
ちなみに、イチゴはこの国でもポピュラーで人気が高く、好んで召し上がる方が多いそうです。
しかし、ブルーベリーはその色から、ラズベリーは酸味があるために、この国では好んで召し上がる方はほとんどいらっしゃらないそうですの。
どちらも美味しいのに……もったいない。
いつかブルーベリーやラズベリーの美味しさが広まり、注目が集まってくれることを願いますわ。
とろみがついたら火を止め、仕上げに……あ、ありましたわ。このシロップを加えて、色の安定と爽やかな酸味を引き立てます。
今わたくしが亜空間収納から取り出したのは、ブルーモーメントという花から作ったシロップです。
前世でブルーモーメントといえば、日の出の直前や日没の直後に、空全体が深い群青色に包まれる神秘的な現象のことを指していましたが、この世界には同名の花が存在しますの。
植物図鑑で初めて目にした時は驚きましたが、まさにブルーモーメントの深い群青色を閉じ込めたような花びらが何層にも折り重なった美しいお花ですのよ。
さらには食用可との記載がありましたので、試しにシロップにしてみましたら、味はほんのりと甘く、柑橘のような爽やかな風味がいたしましたわ。
お菓子作りでは意外と重宝しますので、わたくしは定期的にシロップにして、亜空間収納にストックしておりますの。
最後に一度、目の細かい網で綺麗に漉したら、ソースの完成ですわ。
美しい、深紫色のベリーソースが出来ました。
こちらは簡易冷蔵庫で冷やしておきましょう。
次に、メレンゲを作ります。
卓上ミキサーのボウルに油分や水分が無いことを確認して、(残っていた場合はきちんと拭き取らなければ卵白が上手く立たないため、メレンゲにはなりませんの。)卵白とレモン汁を入れ、お砂糖を3〜4回に分けて加えながら泡立てます。
最初にレモン汁を加えるのは、卵白のコシを程よく切り、泡を安定させて保水性を高めるためですわ。
パブロバでは安定したキメの細かいメレンゲを作ることが大切とのことでしたので。
ツヤのあるカチッとしたメレンゲになったらミキサーを止めてボウルを外し、コーンスターチを加え、シリコーンのヘラでさっくりと混ぜ合わせます。
え?
コーンスターチはどこから出てきたのかって?
ふふふ……実はインターネットで読んだ知識を元に、ダンデライオン商会と共同で作っちゃいましたー!!
わー!パチパチパチー!!
……こほん。失礼、取り乱しましたわ。
コーンスターチはこの世界では存在しておりませんでしたが、お菓子作りには欠かせない材料ですわよね?
そこで、ダンデライオン商会にお邪魔した際、会頭にコーンスターチの有用性を訴え、共同制作していただきました!
ついでに言いますと、グラニュー糖も未発見のため、お菓子作りの際は、余分な水分を飛ばしてサラサラにし、粉末状になるまで細かくすりつぶした特製のお砂糖を使用しておりますの。
グラニュー糖が発見されれば問題は解決しますが、今の所はこれでなんとか作れていますので、問題ありませんわ。
天板に、こちらも商会と共同制作したオーブンシートを敷き、星型の口金をセットした絞り袋に先程のメレンゲを入れ、直径7センチ程のドーナツ型になるように絞り出します。
……ふぅ。30個、出来ましたわ。
これを100℃に予熱しておいたオーブンに入れ、じっくりと乾燥焼きにします。
ただ、焼く時間と冷ます時間を取らなければなりませんので、どちらも合わせると相当時間がかかってしまいますのよね……。
あまり皆んなをお待たせしたくありませんし……今回は短縮させていただきましょう。
([オーブンの中の時間をメレンゲが焼き上がるまで…早送り])
【オーブンに入れたメレンゲが焼き上がりました】
よし。焼く時間は短縮できましたので、あとはこのままオーブンの中で冷めるのを待つだけですわ。
その間に、ホイップクリームと、トッピングの準備をしませんと。
ホイップクリームは、卓上ミキサーにて生クリームを泡立て、星型の口金をセットした絞り袋に入れましたわ。
ソースに使用した3種類のベリー達はまだたくさん残っていますので、凍結乾燥にて素材本来の味を閉じ込めた後、5ミリ角に刻んでおきました。
ナタリーからいただいたものも準備いたしましたし……あ、そうですわ。
イル・フロッタントではハート型で抜いたキャラメルチップスを使用いたしましたので、対となるこのパブロバでは、雪の結晶型で抜いたステンドグラス飴を乗せてみましょう。
作り方もほぼ同じですし。
そうと決まれば。
鍋に、お砂糖、水、レモン汁を入れ、お砂糖が溶けるまでスプーンで混ぜます。
そうしたら鍋をコンロに乗せ、弱火にかけます。
こちらも昨日のキャラメル同様、火にかけた後は混ぜてはいけませんの。
もし混ぜてしまうとお砂糖が結晶化し、失敗してしまいますので、ここはじっと我慢ですわ。
泡が大きくなり、とろみがついてパチパチと音が変わってきました。
スプーンでほんの少しだけ掬い、冷水を注いだコップの中に1滴落としてみましょう。
ポチャッ………
ふむ。落とした瞬間、カチッと固まりました。
良さそうですわね。
こちらは2色の方がよりかわいくなると思いますので、まず半分の量を、キャラメルの時と同様にシリコーンマットの上に薄く広げて冷まします。
もう半分は薄水色にしたいので、再びブルーモーメントシロップの出番ですわ。
それをスプーンでほんの少しだけ掬い、中に1滴だけ垂らし、鍋を優しく揺らして混ぜます。
さすがは天然の着色料。レモンの酸味にも負けず、美しい薄水色になりましたわ。
こちらも、シリコーンマットの上に薄く広げます。
そうこうしているうちに、透明の方の飴がちょうど良い、グミのような固さになってまいりましたわ。
昨日のハートは2種類の大きさでしたが、今日は3センチ、2センチ、1センチと、3種類の大きさのクッキー型を用意しました。
もちろん、既に全ての型に薄く油を塗っておりますわ。
これを、広げた飴に押し付けていきます。
その後、瞬間冷却で飴を冷やし固め、型から外しました。
薄水色の飴も同様に型抜きを終えて1つ手に取ってみますと、まるで本物の雪の結晶のように美しく輝いています。
これは皆んなの反応が楽しみですわね。
「クロエ、首尾はどうだい?」
「今日はどのような甘味が頂けるのかしら?」
「楽しみー!」
「えぇ、今から盛り付けますので、もう少しお待ちくださいな。」
仕上げに取り掛かろうとしましたら、ピーター、エヴァ、ミアがカウンター席へと移動してきました。
どうやらエヴァとミアは無事に正気を……んんっ!……復活を遂げたようですわ。
3人の視線を受けながら、盛り付け用のお皿を調理台の上に並べます。
「今日は昨日と同じお皿に見えるけど、深さが違うのかな?」
「えぇ、そうですわ。
今作っていますのが、昨日のイル・フロッタントの対となるおやつですので、お皿も昨日と同じ大きさで、フチが広いタイプにしてみましたの。
昨日はソースの海にメレンゲの島を浮かべるためにスープ皿を使いましたが、今日のおやつは浅いお皿の方がよろしいかと思いまして。」
「へえ。どんな盛り付けになるのか、楽しみだね。」
一見、人好きのする笑顔でピーターは仰いましたが、その目は完全に商売人のそれでした。
圧が……今日は圧を感じる日ですの?
パブロバはまだ完成していませんが、わたくし、若干疲れてきましたわ……。
こんばんは。めいです。
本日もお読みいただき、ありがとうございます。
度々出てきて申し訳ございません……。
ですが、御礼を言わせてください。
評価、リアクション、ブクマ登録をしてくださった方が増えていることに昨日気が付きました!
(もう少し前にしてくださっていたのかもしれませんが、気付くのが遅くて申し訳ございません…)
気付いた時は嬉しくて嬉しくて、目を限界までかっぴらいて嬉し涙を流していました……本当にありがとうございます!!
とっても励みになります!!
最初は自分の妄想を載せるためにぽちぽちしていましたが、読んでくださる方がいて、さらには評価やリアクション、ブクマ登録までしてくださる神様もいらっしゃって……!
おそらく皆様がいらっしゃらなければとっくに投げ出していたと思います。
挫けそうになった時、皆様が読んでくださっていることを思い出し、なんとか踏ん張って投稿にこぎつけられたことは一度や二度ではありません。
皆様には、感謝してもしきれません。
本当に、ありがとうございます。
これからもぽちぽち頑張りますので、どうか温かく見守っていただけますと嬉しいです。




