第72話
更新が遅くなってしまいました…。
ごきげんよう。
クロエ・カサブランカでございます。
本日は雪の月16日。
勉強合宿4日目を迎えましたわ。
昨日は思いがけない論争が勃発したため、わたくしは調理台の周りに結界を展開し、存在を消して皆んなの論争を見守りながら夕食の準備をしておりました。
(何故か結界を展開する直前にウィリアムに気づかれまして、とんでもない高速移動により結界の中に滑り込んできました…。
魔法を使ったようには見えませんでしたが、あの素早い移動が身体能力だけで行われたのであれば、ウィリアムは確実に超人と言えるのではないでしょうか……。)
せっかくですからウィリアムにも手伝っていただき、ちょっと豪華な夕食にしてみましたの。
メインは、レッドボアを塩釜焼きにしてみましたわ。
お肉が直接塩に触れると塩味が入りすぎて、味がしょっぱくなると料理系のアニメで見た記憶がありましたので、お肉と臭み消しのローズマリーを茹でて水気をしっかり取ったレタスで一緒に包み、卵白とお塩を混ぜた物の上に置き、さらに上からも覆い尽くしました。
ちなみに、大量の卵白とお塩を混ぜるのはウィリアムにお願いしました。
身体強化魔法を使っている様子が無かったのに、難なくあの量を混ぜ合わせてくださって、本当に助かりましたわ。
使用したレタスは、レッドボアの旨みとローズマリーの爽やかな香り、塩味が含まれていますので、少量のバターでサッと炒めて付け合わせに。
(少し塩味が強かったので、生のレタスを多めに加えて調整いたしましたわ。)
前菜は、ジョンから頂いたオレンジが余っていましたので、皮を剥いて実だけ切り出し、タイ(野菜や果物同様、魚介類も日本と同じ名前の物も存在しますのよ。ご都合主義って本当に素晴らしいですわね?)の切り身と一緒にカルパッチョにいたしました。
柑橘系の果物だからでしょうか。
お魚との相性も良く、とても美味しかったですわ。
スープはカブがあったため、ポタージュにいたしました。
軽食としてお作りしたハクサイとレッドボアのスープと同じクリーム系ですが、こちらはシンプルな材料で、優しいお味を狙いましたわ。
夕食が出来上がった後、結界を解くと論争がぴたりと止み、まるで何事もなかったかのように皆んな仲良く夕食を召し上がっていました….。
何はともあれ、仲直りしていただけたようで、ようございましたわ。
閑話休題。
今わたくしは何をしているかと申しますと、ピーターと新しいお店について話し合いをしておりますの。
実は先日のケーキを販売するお店を新しく出したいとピーターから打診されまして……。
会頭は販路を広げるため、今年のこの時期も近隣諸国を旅する予定とのことで来月まで不在ですの。
ですからピーターが事業計画などをまとめ、戻られた会頭にプレゼンなさるとのことですわ。
わたくしとしましては、卵白どうしよう問題の解決のためにご提案しましたので、喜んで協力させていただきます。
このケーキ達も人気が出れば、大量の卵白を廃棄するなどと、もったいない所業を食い止められると期待しておりますから。
「ちなみにですが、バラの形をしたクッキー…ラングドシャと、ご一緒にお出ししたフィナンシェ、それとホワイトプリンも、卵白のみで作った甘味ですのよ。」
「えっ!?そうなのかい!?」
わたくしのご説明に、ピーターは驚いて目を丸くされています。
「えぇ。ケーキだけではなく色々とバリエーションがあった方がよろしいかと思いまして、何種類か試作してみましたの。
例えばですが、バラの形に仕上げたラングドシャを、このように…外はお洒落な、中は洗浄魔法を施し衛生面も確保した箱に敷き詰めると……。」
「これは……!!」
「まぁ!素敵!」
わたくしは、ネットショッピングで購入したお菓子用のおしゃれな箱の内側に洗浄と結界を施した後、同じくネットショッピングで購入したお菓子用のインペリアルレースペーパーを敷き、そこへかろうじて確保しておいたバラの形をしたラングドシャを詰めながらご提案しました。
すると、ピーター以外に感嘆してくださるお声が。
そちらに視線を向けると、エヴァが立っていました。
「エヴァ、ありがとう。
センスの良い貴女にお褒めいただいて嬉しいですわ。」
わたくしは笑顔を向けながらエヴァに御礼を申しました。
すると、エヴァは少し恥ずかしそうな表情を浮かべながら続けられました。
「あ……お邪魔してしまってごめんあそばせ。
通りがかったら素敵なお箱が目に入りまして、つい……。」
「そのように仰ってもらえて嬉しいですわ。
…そうですわ……!
よろしければエヴァもご一緒しませんこと?
ピーター、エヴァはミア同様センスも良いですし、意見を求めるのに適任ではないかしら。
わたくしはエヴァに同席していただけると心強いですが、お2人はいかが?」
「クロエにそのように仰っていただけてわたくしは嬉しいですが、本当によろしいのかしら…。」
「僕は構わないよ。
確かにエヴァはセンスが良いし、貴重な意見が聞けるんじゃないかな。」
「ピーター、ありがとう。
というわけでエヴァ、こちらにお掛けになって?」
「2人とも…ありがとう。
お力になれるよう、頑張りますわ。」
「あまり力まないで。
思ったことはどんどん言って欲しいかな。」
そうして3人で話し合いを重ね、様々なことが決定していきました。
エヴァは貴族の流行にも詳しく、貴族のご令嬢やご婦人がお好きな物や傾向も交え意見を仰ってくれたので、わたくしもピーターも聞き入っていましたわ。
「ふぅ……。
今日のところはここまでにして……そうだ…。
クロエ、店内でしか食べることができない特別なメニューは無いかな?
このままでも良いけど、お客様がわざわざお店に来てまで食べたくなるような、何か特別なメニューがあれば、店内の滞在時間も増えて、飲食スペースの活気も維持できるんじゃないかと思うんだ。」
「店内でしか召し上がれない特別なメニューですか……。
そうですわね……。
2つほど候補がございますが、今からお作りいたしましょうか?」
「「「「「「「お願いします!!!」」」」」」」
わたくしはピーターに向かってお応えしたはずですのに……何故皆んな揃って同じ答えが返って来ますの……?
死んだ魚のような目になりそうなのを必死に堪え、皆んなの方に視線を向けると、キラキラを通り越してギラギラとした光を湛えた目で皆んながこちらを見ていましたわ……。
もうそろそろ目からビームを発射できるのではなくて?
「勉強なんかよりおやつだよねー!」
クレアが笑顔で仰った言葉に、皆んなが激しく頷きやがりました。
勉強合宿とは。




